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my treasure
my treasure 第28話
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「つまり、理性が効かないって落ち込んでたってことか?」
「! お前、よく今ので分かるな……。流石親友、だな」
「いやぁ、それほどでもないけどな!」
なるほど。と先程の難しい表情の理由が理解できたと頷く海音は雲英の賛辞に調子に乗った様子を見せながら、親友の葛藤に内心苦笑を漏らしてしまう。
(本当、ずっと葵だけだったもんなぁ……。そりゃ『今まで通り』は無理ってもんだ)
理性があるから人は人なんだ。それなのに欲望のまま行動するなんて、そんなの人の形をした動物と言われても当然だと思わないか?
以前、虎の最愛の恋人が当時家に住み込みで働いていた男から性被害に遭った。
幸い男の異変に家族が早々に気づいて直接的な被害は免れたが、周囲に大切に守られて育った少年の心を深く傷つけたことには変わりない。
海音がその話を聞いたのは、虎が今にも人を殺しそうな程凶悪な顔をして大学の講義に顔を見せた時だった。
普段も愛想があるとはお世辞にも言えない虎だったが、周囲が遠巻きにする程の不機嫌を露わにすることは長い付き合いだが一度も無かったはずだ。
明らかな異変に能天気な声をかけることもできず、親友を本気で心配した海音は拒絶を露わにする虎を引き摺り講義をサボって洗いざらい話を聞いた。
話を聞いた海音は、正直、虎が相手の男に報復を企てるつもりだと思った。命までは奪われなくとも、五体満足では居られないだろう。と。
海音は止めても無駄だと思いながらも、虎の為に、そして親友の大切な人の為に、必死にそれを制止しようとした。
そんな海音に虎は「俺は動物じゃない」と低い声を返してきた。
言葉の意味が分からず困惑を見せれば、先の台詞が自嘲交じりに零された。
自分は『人』だから、理性のない『獣』とは違う。
そう言いながら拳を作った虎。
その姿は自分を心配する友人に『大丈夫だ』と伝える為、というよりも衝動に負けそうになる己に言い聞かせている様に思えた。
葵が大切だから、本当に誰よりも大切だから、許せない。だがこの怒りのまま相手を断罪すれば、自分は憎い相手と同じ場所まで堕ちてしまう。
相手の男への報復を断念することは、虎にとって苦渋の決断だったに違いない。
だが、それほどまでに衝動のまま行動することを当時から虎は嫌っていたのだ。
(それなのに、抑えられないんだろうな……)
親友が無事に童貞を卒業したと無責任に喜んでしまったと反省を覚える海音は、虎の苦悩はこれからも続くのかとある種の憐れみを覚えた。
もっと気楽に考えればいいのに。と思わなくもないが、気楽に考えられないからこそ葵への片想いを長年拗らせ続けてきたのだ。
つまり、これが虎の性格ということだ。
(しかも一番の苦難は、当の葵がそれを望んでるっぽい所だな)
初めて知ったセックスの快感への衝撃は海音自身も良く覚えている。
当時付き合っていた彼女のことはもちろん好きだったが後に別れを切り出されてもあっさり承諾した程度の感情だった。
にもかかわらず、セックスは最高だった。その後できた友人の延長のような彼女とのセックスも、また同じだ。
男は快楽に弱いというのは事実なんだなと、自分自身の身体を持って体感できたと思っている。
相手への『想い』がそれほど強くない海音ですら、セックスへの欲を覚えたのだ。
相手を『自分のすべてだ』と公言するほど強い想いを持つ虎が相手とのセックスに溺れないわけがないということだ。
そして、それは彼の唯一の人―――葵も同じだろう。
(いや、むしろ葵の方がやばいか? だって男子高生、だしな)
男子高生なんて頭の中10割エロいことしか考えてない猿なんだから。
そんな偏見まみれの考えを巡らせながら、親友が果たして恋人からの誘惑に勝てるのだろうか? と疑問を覚えてしまう。
どれほど意志が強くとも、どれほど理性的であろうとも、自身の愛しい人からの可愛いアピールを拒み続けることなどできるわけがない。
少なくとも、健全な男なら思うだろう。据え膳喰わぬは男の恥。と。
(うーん……、絶対無理だよなぁ……。しなくていい我慢をわざわざするなんて、それこそバカのすることだし……)
いや、待て。親友はその我慢をおよそ半年していなかったか?
葵が虎とセックスしたいと言い出したのは確か4月かその辺だったはず。それなのに二人が初めてセックスしたのは昨日のことだ。
(しかもその間『準備』で葵に手は出してたんだよな? え、こいつの精神力どうなってんの?)
セックスしたいと強請る可愛い恋人に触れることはしても今の今まで挿入しないで我慢し続けるなんて、絶対無理だ。
触れたその日に我慢できずに最後までしてしまうに決まってる。少なくとも、自分はそうだ。
「虎って実は悟りでも開いてる?」
「はぁ?」
「いや、エロいことしたくて堪らないからあの顔だったんだろ? 全然悟れてないだろ」
これまで頭で考えていた海音は、最後の最後に浮かんだ疑問を口に出してしまう。
海音的には全く突然ではない質問だったが、彼の頭の中のやり取りを知らない虎と雲英にとっては唐突過ぎる上、的外れな質問に思えた。まぁ当然だろう。
何を言っているんだと言いたげな雲英の視線と、驚きから一転、嫌悪にも似た怒りを見せる虎。どうやら彼は海音が沈思黙考していたことに気づいたようだ。
「! お前、よく今ので分かるな……。流石親友、だな」
「いやぁ、それほどでもないけどな!」
なるほど。と先程の難しい表情の理由が理解できたと頷く海音は雲英の賛辞に調子に乗った様子を見せながら、親友の葛藤に内心苦笑を漏らしてしまう。
(本当、ずっと葵だけだったもんなぁ……。そりゃ『今まで通り』は無理ってもんだ)
理性があるから人は人なんだ。それなのに欲望のまま行動するなんて、そんなの人の形をした動物と言われても当然だと思わないか?
以前、虎の最愛の恋人が当時家に住み込みで働いていた男から性被害に遭った。
幸い男の異変に家族が早々に気づいて直接的な被害は免れたが、周囲に大切に守られて育った少年の心を深く傷つけたことには変わりない。
海音がその話を聞いたのは、虎が今にも人を殺しそうな程凶悪な顔をして大学の講義に顔を見せた時だった。
普段も愛想があるとはお世辞にも言えない虎だったが、周囲が遠巻きにする程の不機嫌を露わにすることは長い付き合いだが一度も無かったはずだ。
明らかな異変に能天気な声をかけることもできず、親友を本気で心配した海音は拒絶を露わにする虎を引き摺り講義をサボって洗いざらい話を聞いた。
話を聞いた海音は、正直、虎が相手の男に報復を企てるつもりだと思った。命までは奪われなくとも、五体満足では居られないだろう。と。
海音は止めても無駄だと思いながらも、虎の為に、そして親友の大切な人の為に、必死にそれを制止しようとした。
そんな海音に虎は「俺は動物じゃない」と低い声を返してきた。
言葉の意味が分からず困惑を見せれば、先の台詞が自嘲交じりに零された。
自分は『人』だから、理性のない『獣』とは違う。
そう言いながら拳を作った虎。
その姿は自分を心配する友人に『大丈夫だ』と伝える為、というよりも衝動に負けそうになる己に言い聞かせている様に思えた。
葵が大切だから、本当に誰よりも大切だから、許せない。だがこの怒りのまま相手を断罪すれば、自分は憎い相手と同じ場所まで堕ちてしまう。
相手の男への報復を断念することは、虎にとって苦渋の決断だったに違いない。
だが、それほどまでに衝動のまま行動することを当時から虎は嫌っていたのだ。
(それなのに、抑えられないんだろうな……)
親友が無事に童貞を卒業したと無責任に喜んでしまったと反省を覚える海音は、虎の苦悩はこれからも続くのかとある種の憐れみを覚えた。
もっと気楽に考えればいいのに。と思わなくもないが、気楽に考えられないからこそ葵への片想いを長年拗らせ続けてきたのだ。
つまり、これが虎の性格ということだ。
(しかも一番の苦難は、当の葵がそれを望んでるっぽい所だな)
初めて知ったセックスの快感への衝撃は海音自身も良く覚えている。
当時付き合っていた彼女のことはもちろん好きだったが後に別れを切り出されてもあっさり承諾した程度の感情だった。
にもかかわらず、セックスは最高だった。その後できた友人の延長のような彼女とのセックスも、また同じだ。
男は快楽に弱いというのは事実なんだなと、自分自身の身体を持って体感できたと思っている。
相手への『想い』がそれほど強くない海音ですら、セックスへの欲を覚えたのだ。
相手を『自分のすべてだ』と公言するほど強い想いを持つ虎が相手とのセックスに溺れないわけがないということだ。
そして、それは彼の唯一の人―――葵も同じだろう。
(いや、むしろ葵の方がやばいか? だって男子高生、だしな)
男子高生なんて頭の中10割エロいことしか考えてない猿なんだから。
そんな偏見まみれの考えを巡らせながら、親友が果たして恋人からの誘惑に勝てるのだろうか? と疑問を覚えてしまう。
どれほど意志が強くとも、どれほど理性的であろうとも、自身の愛しい人からの可愛いアピールを拒み続けることなどできるわけがない。
少なくとも、健全な男なら思うだろう。据え膳喰わぬは男の恥。と。
(うーん……、絶対無理だよなぁ……。しなくていい我慢をわざわざするなんて、それこそバカのすることだし……)
いや、待て。親友はその我慢をおよそ半年していなかったか?
葵が虎とセックスしたいと言い出したのは確か4月かその辺だったはず。それなのに二人が初めてセックスしたのは昨日のことだ。
(しかもその間『準備』で葵に手は出してたんだよな? え、こいつの精神力どうなってんの?)
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触れたその日に我慢できずに最後までしてしまうに決まってる。少なくとも、自分はそうだ。
「虎って実は悟りでも開いてる?」
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「いや、エロいことしたくて堪らないからあの顔だったんだろ? 全然悟れてないだろ」
これまで頭で考えていた海音は、最後の最後に浮かんだ疑問を口に出してしまう。
海音的には全く突然ではない質問だったが、彼の頭の中のやり取りを知らない虎と雲英にとっては唐突過ぎる上、的外れな質問に思えた。まぁ当然だろう。
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