1番の彼と2番の私

篠宮れい

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勉強会

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後日、東雲悠音先生による勉強会が始まった。
と言っても、東雲が姫奈に教えるだけなのだが…
しかも、教えると言っても学年で1位、2位を争っている2人なのだから、教える内容もそんなにないのでは…?な状況だった。

「っていうか、なんで私はここに居るの?」
姫奈は、今東雲の家にいた。
時間《とき》は数日前に遡る…

☆数日前の放課後☆
「橘いるかー?」
姫奈の教室のドアの所で東雲が叫ぶ。
「橘、彼氏がお迎えだぞ!」
クラスメイトがニヤニヤしながら、姫奈に言った。
「ちょっと、そんなんじゃないから!舞、ごめん」
「ううん。大丈夫だよ。ごゆっくり~」
姫奈は、一緒に帰る約束をしていた舞に断りを入れると、舞はニヤニヤしながら姫奈を見送った。
姫奈がちょっとムカついたように廊下に出ると
「あっ!橘、日曜日ってヒマ?」
東雲が笑顔で問いかけた。
「えっ?あっ…うん。」
ちょっとムカついていた姫奈だったが、東雲の笑顔に怒りも収まったようだった。
(東雲の笑顔って、カッコいい…)
しかし、次の東雲の一言でフリーズしてしまう。
「その日、オレんち来いよ。誰もいないんだ。」
「…(今、なんて言った?)」
「橘?じゃ、そういう事だから、時間は後で連絡する!」
フリーズしている姫奈をよそに、東雲は帰って行った。
クラスメイトが「東雲が橘を自宅に呼んだって…」という声すら姫奈の耳には入っていなかった。

そして、現在に至る。
東雲の部屋はシンプルでコタツとベッドと本棚くらいしか無かった。
「橘、そんなに緊張しなくても…今日、誰もいないから」
「(それが1番緊張するんだよ)う…うん」
2人はコタツに入っていた。
「東雲くんの部屋、す…素敵な部屋だね」
姫奈が少し声が上ずりながら言った。
「あぁ、オレ昔からコタツで勉強していたからさ。勉強以外は、本を読んでいることが多いかも。橘も本読む?」
東雲が橘を見つめる。
「うんうん。読むよ」
「橘、大丈夫か?」
未だ緊張気味の姫奈に東雲が笑った。

「さてと…」
東雲が何かを取り出した。
「東雲くん、何それ?」
「何って勉強するんだろ?そのために来たんだよな?橘…もしかして違う想像してた?」
姫奈は思い切り首を左右に振る。
「はっ?ま…まさか…ははっ…」
「っていうか、東雲くんじゃなくて、名前で良いから!」
「悠音くん?」
姫奈が緊張気味に言った。
「うん!じゃあ、始めよう。橘は、どこが分からない?」
と東雲が姫奈に顔を近づけ、教科書を覗き込んだ。
(ちょっと、近い!ヤバい!)
「橘、ホントに大丈夫?」
東雲がまだ心配しているようだった。
「来月のテスト、頑張ろうな!」
笑顔の東雲に
「う…うん」
(私、テストどころじゃないかも…)


と、こんな具合で2人の勉強会がテストが始まる前日の日曜日まで行われる事になった。
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