1番の彼と2番の私

篠宮れい

文字の大きさ
5 / 5

1番になれた日

しおりを挟む
そんなこんなで迎えたテスト当日の朝
「橘、ちょっといい?」
東雲が姫奈を廊下に呼び出した。
「何?」
「橘、お前本気で来いよ!そしたら、お前に伝えたい事があるから…」
「えっ?も…もちろん本気でいくよ!悠音くんに教えて貰ったし…」
「良し!その言葉が聞きたかった!じゃ、後でな!」
東雲が姫奈の頭をポンポンし、去って行った。
「あんなんされたら、めちゃ緊張するじゃん」
姫奈は呟いたのだった。

時間ときは、過ぎ…
順位発表の日
「神様、お願い!」
祈るように順位表を見上げる姫奈。

1位 東雲悠音
2位 橘姫奈
         :
         :

「あーもー」
落胆している姫奈の横に
「残念だったな。橘」
東雲がいた。
「もー悠音くん」
「橘、オレが言ったこと覚えてる?」
「う…うん」
「じゃあ、一緒に来て」
そういうと、姫奈の腕を掴んで歩いて行く。
「悠音くん、何?」
「良いから、着いてきて」
そう言われ、姫奈は大人しく着いていくことにした。

人気のない図書室に来ると掴んでいた腕を離した。
「橘、オレ…」
「うん」
「オレ、お前が好きだ」
「えっ?」
突然の事に姫奈が驚いて聞き返した。
すると、東雲が話し出した。
「ずっと前から好きだった。橘は知らないと思うけど、オレ、橘と同じ塾だったんだ。」
姫奈が、落ち着きを取り戻し
「…そうだったんだ」
東雲の話を聞いていた。
「いつも、実力テストの結果が10人張り出されてただろ?それで橘の事を知って、橘に追い付きたいと思って、それからすっごい勉強して、橘と同じ高校を受けた」
「うん…」
「合格した時は、すごく嬉しかったよ。憧れだった橘に並んだような気がした。それで、1番最初の順位表でオレが1番になった時、あぁ…やっと橘に追い付いたって思ったんだ。でも…」
「ん?」
「でも、そうじゃなかった。オレがなりたかったのは、1番じゃなくて橘の隣に立つ存在だった。いつからか橘は憧れじゃなくて、好きな女性になっていた」
「うん…」
そこまで聞いていた姫奈は半泣きだった。
「だから、橘に付き合ってって言われた時は夢かと思った。聞き間違いかと。でも、実際は勉強の方だったけど…」
「うん…ごめん」
「今は、紙の上ではオレが1番かもしれないけど…オレの中では、姫奈がずっと1番なんだ」
「悠音くん…」
「だから、オレと付き合って下さい」
東雲は、ここまで早口気味に話すと頭を下げた。
「悠音くん…顔を上げて」
姫奈が泣きながら、東雲の名前を呟く。
東雲が頭を上げると、姫奈が抱きついた。
「悠音くん…ずるい。そんなこといわれたら…」
「うん」
東雲が姫奈の背中を擦りながら言う。
「私も好き。ずっと…悠音くんの1番でいさせて…」
「うん…当たり前だよ」
そういうと、力強く姫奈を抱きしめた。
「姫奈…」
姫奈が少し背の高い東雲の顔を見上げる。
「愛してる」
東雲はそう言って姫奈に口付けたのだった。


-この日、いつも2番目だった私があなたの1番になれました-
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

女避けの為の婚約なので卒業したら穏やかに婚約破棄される予定です

くじら
恋愛
「俺の…婚約者のフリをしてくれないか」 身分や肩書きだけで何人もの男性に声を掛ける留学生から逃れる為、彼は私に恋人のふりをしてほしいと言う。 期間は卒業まで。 彼のことが気になっていたので快諾したものの、別れの時は近づいて…。

悪役令嬢(濡れ衣)は怒ったお兄ちゃんが一番怖い

下菊みこと
恋愛
お兄ちゃん大暴走。 小説家になろう様でも投稿しています。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

偽りの愛の終焉〜サレ妻アイナの冷徹な断罪〜

紅葉山参
恋愛
貧しいけれど、愛と笑顔に満ちた生活。それが、私(アイナ)が夫と築き上げた全てだと思っていた。築40年のボロアパートの一室。安いスーパーの食材。それでも、あの人の「愛してる」の言葉一つで、アイナは満たされていた。 しかし、些細な変化が、穏やかな日々にヒビを入れる。 私の配偶者の帰宅時間が遅くなった。仕事のメールだと誤魔化す、頻繁に確認されるスマートフォン。その違和感の正体が、アイナのすぐそばにいた。 近所に住むシンママのユリエ。彼女の愛らしい笑顔の裏に、私の全てを奪う魔女の顔が隠されていた。夫とユリエの、不貞の証拠を握ったアイナの心は、凍てつく怒りに支配される。 泣き崩れるだけの弱々しい妻は、もういない。 私は、彼と彼女が築いた「偽りの愛」を、社会的な地獄へと突き落とす、冷徹な復讐を誓う。一歩ずつ、緻密に、二人からすべてを奪い尽くす、断罪の物語。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

カラフル

凛子
恋愛
いつも笑顔の同期のあいつ。

お母様!その方はわたくしの婚約者です

バオバブの実
恋愛
マーガレット・フリーマン侯爵夫人は齢42歳にして初めて恋をした。それはなんと一人娘ダリアの婚約者ロベルト・グリーンウッド侯爵令息 その事で平和だったフリーマン侯爵家はたいへんな騒ぎとなるが…

処理中です...