300文字文学

三日月李衣

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あなたが大好きです。

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「私、あなたが好きよ」
「どうしてなんだ? 僕は貧乏だし、不細工だし、好きになる所なんか一個もないよ」

ふわふわとした砂糖菓子の様に可愛らしい女の子は背が低くて歯抜けの男の低い鼻をツンと指で撫でて、花の様にふんわりとした声で、

「あなたの低い鼻が誠実な感じがして好き」
と歯抜けの男を褒めた。

「本当かい? なぜか涙が出るんだけど、この低い鼻が好きって何か良いよね」

歯抜けの男は純な瞳から涙がこぼれた。温かな愛の言葉に冷たく凍った心を溶かしてくれるような感じで嬉しいと女に言った。

ハナミズキの木の下で二人はお互いの頭をなでなでし合いながら、絆を確認し合った。

低い鼻でも好きだと言っていい、新しい幕が開いた。嬉しい。
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