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27.焦燥
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拠点に戻ってから、一週間以上。数日の休暇を経て、いつも通りの仕事に戻っている。
そう、仕事はいつも通りに戻れている。
取引先との連絡も、展示会で新規に通じた企業との連絡も、メディア対応も、新スタッフのためのマニュアル作成も、すべて、問題なく行えている。
オフィスで一人、髪を掻き上げて、何度目かわからない溜息を吐く。
「くっそ……」
そして何度目か解らない悪態。新スタッフ用マニュアル作成に取り掛かってからというもの、こうして作業を中断することが増えた。原因は、つまるところ雑念だ。
新スタッフが、アトリエに来るのではないと知ってから、ずっとこの調子だ。
元々――レイに手を出してしまってから――自分の頭の中が落ち着かなくはなっていた。当然のことだ。だが、打ち上げのあの場で、新スタッフが来ないことを知って、自覚してしまった。自分の感情を。
苛々する。
新しいスタッフが来ることがあんなにも嫌だったのは、自分の立ち位置が奪われるかもしれないと感じたからだ。あいつと同じ言葉を話せる、歳の近い、優秀な男。自分がレイの隣に立てなくなる可能性を感じ取ったからだと、今になって自覚してしまった。
デスクに肘を付き、頭を抱えて項垂れる。この体勢だって今日何度取ったか解らない。
苛々する。自覚していなかったその焦燥感が、欲望が、あの行動に駆り立てた。しかも結局、新しいスタッフがこのアトリエに来ることはない――自分は引き続きあいつの隣でいることが出来ていたのだ。何も無ければ――何もしなければ。
腹が立つ。苛々する。何かを殴り蹴り上げたい衝動に駆られ、椅子の背もたれに深く体を預けて深呼吸する。落ち着かず、片膝が小刻みに揺れる。
こうした苛立ちを持つようになってから決まって次に脳裏に過るのは、抱いた時のあいつの姿。顔を顰める。
あの時に付けた痕は、今はもう完全に消えた。あいつとの関係は続いている。多分、この関係はこのまま続く。あいつが続けることを選び続ければ。自分が何もしなければ。
――本当に? いつまで続けられる?
「クソ!」
湧き上がる雑念を悪態でかき消す。中断してしまっていた作業に再び取り掛かった。
そう、仕事はいつも通りに戻れている。
取引先との連絡も、展示会で新規に通じた企業との連絡も、メディア対応も、新スタッフのためのマニュアル作成も、すべて、問題なく行えている。
オフィスで一人、髪を掻き上げて、何度目かわからない溜息を吐く。
「くっそ……」
そして何度目か解らない悪態。新スタッフ用マニュアル作成に取り掛かってからというもの、こうして作業を中断することが増えた。原因は、つまるところ雑念だ。
新スタッフが、アトリエに来るのではないと知ってから、ずっとこの調子だ。
元々――レイに手を出してしまってから――自分の頭の中が落ち着かなくはなっていた。当然のことだ。だが、打ち上げのあの場で、新スタッフが来ないことを知って、自覚してしまった。自分の感情を。
苛々する。
新しいスタッフが来ることがあんなにも嫌だったのは、自分の立ち位置が奪われるかもしれないと感じたからだ。あいつと同じ言葉を話せる、歳の近い、優秀な男。自分がレイの隣に立てなくなる可能性を感じ取ったからだと、今になって自覚してしまった。
デスクに肘を付き、頭を抱えて項垂れる。この体勢だって今日何度取ったか解らない。
苛々する。自覚していなかったその焦燥感が、欲望が、あの行動に駆り立てた。しかも結局、新しいスタッフがこのアトリエに来ることはない――自分は引き続きあいつの隣でいることが出来ていたのだ。何も無ければ――何もしなければ。
腹が立つ。苛々する。何かを殴り蹴り上げたい衝動に駆られ、椅子の背もたれに深く体を預けて深呼吸する。落ち着かず、片膝が小刻みに揺れる。
こうした苛立ちを持つようになってから決まって次に脳裏に過るのは、抱いた時のあいつの姿。顔を顰める。
あの時に付けた痕は、今はもう完全に消えた。あいつとの関係は続いている。多分、この関係はこのまま続く。あいつが続けることを選び続ければ。自分が何もしなければ。
――本当に? いつまで続けられる?
「クソ!」
湧き上がる雑念を悪態でかき消す。中断してしまっていた作業に再び取り掛かった。
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