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44.引受
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急に拍子が抜けて、大きく吸い込んだ息がでかいため息になって出た。自分の顔を覆っていた手を解いて、視界が一気に開けて眩しい。こちらを見ている不満げな目が指の隙間から覗いていた。また、溜息を吐く。
「……何さ」
「……止めてもいいぞ」
「や、止めない。君が止めるのでなければ、僕は止めない」
眩暈がする気分だった。こいつの頑固がこんなところでも発揮されている。
「……なら、下りろ。俺がやる」
「駄目だ。これは、僕が上じゃないといけない」
提案して、語気強く断られる。今になってようやく、こいつが言っていること、やろうとしていることを、今度こそ本当に理解できてきて、腹に落ちてくる。
同時に、どうしてこうも極端なんだという呆れから、また溜息が出た。
苦手と言うだけあって、本当に状況に慣れていないのだろう。そんな様子でよくこんな状態に持ち込んだものだと、いっそ感心する。
「……解った。じゃあ、腰上げろ」
「……?」
理解できていないまま、しかし言われたとおりにレイは跨った状態から素直に腰を浮かせた。その手を取ってみて、抵抗の色が無いのを見てから――もともとこいつは拒絶しないだろうが――、ゆるく上体を引き寄せる。ちょうど四つ這いの形にさせて、解らないままでいる顔と、さらけ出されている身体を、下から眺めた。
悪くない光景だと思う。
「触るぞ」
断りを入れてから、その下半身へ手を伸ばす。触れた途端に、小さく腰が跳ねて逃げた。
静かに狼狽えた顔と目が合い、かと思えば顔ごと逸らされる。それ以上逃げたり退いたりしない様子を見て、改めてそこに触れた。
指先に、既に濡れてきているのを確かめる。その割れ目を指先で撫でながら、様子を見る。
刺激を受ける度に小さく跳ねて逃げようとする腰。短い吐息。
突起をはじくように指を滑らせる。
「っ……!」
声を出さないように閉じられた喉と、耐えるような目つき。
そういえばあの時も、やけに声を出すことを嫌がっていたのを思い出す。それと、こいつが話していたこと――こいつにとっての性行為について。
……なんとなく、こいつの特性が解ってきた気がする。
このまま普通に進めても何ら問題は無いだろうが、そうするには引っ掛かりを感じていた。こいつの言葉を借りるならば、多分俺も、こいつの感情とやらを引き受けたくなったんだろう。
――なら、どう進めようか。
「……そうだな……」
「……? ジム……?」
独り言に反応して、レイがこちらを見た瞬間。
「――っふ、うぅっ……!?」
濡れた肉の中へ、指を滑り込ませる。そのまま指を大きく曲げて、腹の内側を深く押した。崩れ落ちてきた上体を、空いている手で支える。中の指は動かさず、ただ曲げたまま。
「ふっ、んぅっ……!」
体を震わせて、声を抑えようと耐えるのを見る。目の前で伏せて逸らされた顔は窺えないが、どうせ苦しい表情をしているんだろう。
「お前、今、何されてると思う?」
「うぅっ……なに……っ……わ、わからな、い……っ」
「俺はただ、お前の腹ん中で指を曲げてるだけだ」
上げられた顔と目が合う。少し苦しそうな、混乱した目。
「おなか……っ、ゆ、ゆび……?」
「腹ん中に入れて、ただずっと、お前の好いところに当ててるだけだ」
指を納めた瞬間からずっと締め付けていた肉壁が、滑らかにうねる。腰が跳ねる度に指にきつく絡み、収縮する。
「動いてるのはお前の体の方だ。腹ん中の肉が動いて、締め付けて、刺激を拾っちまってんのが解るか?」
「ふ、うぅっ……」
「なあ、それはどういう反応なんだ?」
「っは、ど、どうって……っん……ぅっ」
「教えてくれよ」
困惑した顔に問い続けると、一層呼吸が荒くなり、収縮が激しくなり。
大きく、短く、唸るような嬌声を上げて、こいつは達した。
溢れ出る体液が、手を伝って滴る。中で曲げていた指を解いて抜いてから、支えていた手の力を徐々に抜いて、倒れてくる体をそのまま受け止めた。
俺の体の上で、荒く上下に呼吸しているレイの姿を見る。
「……それで?」
「…………」
聞けば、耳まで赤らんだ顔で、不満げに睨まれた。まあ、いい。概ね、確証を得たと思う。
こいつは「快楽を感じにくい」とかいうようなことを言っていたが、多分、逆だ。身体的には、むしろかなり感度が高い。“何が起きているか解らない、コントロールできない、思考が乱れる、自分じゃない”。語った内容からして、こいつ自身――特有の思考――が、身体が快楽を感じることを端から認めていない。
であれば、こいつ自身に「体に何が起きているのか」を解らせればいい。
今のこの状況下で、俺の行為を“引き受け”ようとしているレイに対して俺がしてやれることは、多分それだけだ。
「続けるか?」
問うと、少し表情が和らいで、小さい返事と共に頷かれる。それを受け取って、とりあえず、体勢を立て直すことにした。
「……何さ」
「……止めてもいいぞ」
「や、止めない。君が止めるのでなければ、僕は止めない」
眩暈がする気分だった。こいつの頑固がこんなところでも発揮されている。
「……なら、下りろ。俺がやる」
「駄目だ。これは、僕が上じゃないといけない」
提案して、語気強く断られる。今になってようやく、こいつが言っていること、やろうとしていることを、今度こそ本当に理解できてきて、腹に落ちてくる。
同時に、どうしてこうも極端なんだという呆れから、また溜息が出た。
苦手と言うだけあって、本当に状況に慣れていないのだろう。そんな様子でよくこんな状態に持ち込んだものだと、いっそ感心する。
「……解った。じゃあ、腰上げろ」
「……?」
理解できていないまま、しかし言われたとおりにレイは跨った状態から素直に腰を浮かせた。その手を取ってみて、抵抗の色が無いのを見てから――もともとこいつは拒絶しないだろうが――、ゆるく上体を引き寄せる。ちょうど四つ這いの形にさせて、解らないままでいる顔と、さらけ出されている身体を、下から眺めた。
悪くない光景だと思う。
「触るぞ」
断りを入れてから、その下半身へ手を伸ばす。触れた途端に、小さく腰が跳ねて逃げた。
静かに狼狽えた顔と目が合い、かと思えば顔ごと逸らされる。それ以上逃げたり退いたりしない様子を見て、改めてそこに触れた。
指先に、既に濡れてきているのを確かめる。その割れ目を指先で撫でながら、様子を見る。
刺激を受ける度に小さく跳ねて逃げようとする腰。短い吐息。
突起をはじくように指を滑らせる。
「っ……!」
声を出さないように閉じられた喉と、耐えるような目つき。
そういえばあの時も、やけに声を出すことを嫌がっていたのを思い出す。それと、こいつが話していたこと――こいつにとっての性行為について。
……なんとなく、こいつの特性が解ってきた気がする。
このまま普通に進めても何ら問題は無いだろうが、そうするには引っ掛かりを感じていた。こいつの言葉を借りるならば、多分俺も、こいつの感情とやらを引き受けたくなったんだろう。
――なら、どう進めようか。
「……そうだな……」
「……? ジム……?」
独り言に反応して、レイがこちらを見た瞬間。
「――っふ、うぅっ……!?」
濡れた肉の中へ、指を滑り込ませる。そのまま指を大きく曲げて、腹の内側を深く押した。崩れ落ちてきた上体を、空いている手で支える。中の指は動かさず、ただ曲げたまま。
「ふっ、んぅっ……!」
体を震わせて、声を抑えようと耐えるのを見る。目の前で伏せて逸らされた顔は窺えないが、どうせ苦しい表情をしているんだろう。
「お前、今、何されてると思う?」
「うぅっ……なに……っ……わ、わからな、い……っ」
「俺はただ、お前の腹ん中で指を曲げてるだけだ」
上げられた顔と目が合う。少し苦しそうな、混乱した目。
「おなか……っ、ゆ、ゆび……?」
「腹ん中に入れて、ただずっと、お前の好いところに当ててるだけだ」
指を納めた瞬間からずっと締め付けていた肉壁が、滑らかにうねる。腰が跳ねる度に指にきつく絡み、収縮する。
「動いてるのはお前の体の方だ。腹ん中の肉が動いて、締め付けて、刺激を拾っちまってんのが解るか?」
「ふ、うぅっ……」
「なあ、それはどういう反応なんだ?」
「っは、ど、どうって……っん……ぅっ」
「教えてくれよ」
困惑した顔に問い続けると、一層呼吸が荒くなり、収縮が激しくなり。
大きく、短く、唸るような嬌声を上げて、こいつは達した。
溢れ出る体液が、手を伝って滴る。中で曲げていた指を解いて抜いてから、支えていた手の力を徐々に抜いて、倒れてくる体をそのまま受け止めた。
俺の体の上で、荒く上下に呼吸しているレイの姿を見る。
「……それで?」
「…………」
聞けば、耳まで赤らんだ顔で、不満げに睨まれた。まあ、いい。概ね、確証を得たと思う。
こいつは「快楽を感じにくい」とかいうようなことを言っていたが、多分、逆だ。身体的には、むしろかなり感度が高い。“何が起きているか解らない、コントロールできない、思考が乱れる、自分じゃない”。語った内容からして、こいつ自身――特有の思考――が、身体が快楽を感じることを端から認めていない。
であれば、こいつ自身に「体に何が起きているのか」を解らせればいい。
今のこの状況下で、俺の行為を“引き受け”ようとしているレイに対して俺がしてやれることは、多分それだけだ。
「続けるか?」
問うと、少し表情が和らいで、小さい返事と共に頷かれる。それを受け取って、とりあえず、体勢を立て直すことにした。
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