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43.執行
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こいつの言葉を聞きながら、ずっとどこか不安なのに、落ち着いて話を聞いている自分がいた。
「ここからがやっと本題。
考えたんだ。僕は君に対して情を持っていて、だから君が僕に見せた感情を引き受けたくなっている。けど、君の感情には君の行動に対しての責任感も含まれている。
だから、僕が君の感情を引き受けたい場合、君のした行いも引き受ける必要が出てくる」
よくよく話しているこいつの理論は、俺には難しい。難しいが、何について話しているのかは感覚的に、そして俺に対して、俺との関係に対してどういったことを考えているのかは、十分に解った。
繰り出される話も、黙って聞く。
「僕は君の行いについては、これからの行動の中で責任を取っていけば良いと思っているけれど……それじゃ君が納得できない。
――だから、最もシンプルに、“チャラにする”ことにした」
述べられる考えの中に、突然“確定事項”が出てきたことに気付いた。
「……あ?」
手が伸びてきて、指先で肩に触れられる。
緩慢なそれを見ていたら、あまりにも唐突に――視界が揺れて、背中に衝撃を受け止めた。
「――お前っ」
突然倒されたことに、文句を言う前に腹の上に跨られ、つい喉が止まった。
不意の動きとは言え、俺がこのひ弱な女に押し倒されることなんて“普通”あり得ない。
――こいつ、全体重をかけて、マジで倒してきやがった。
“普通”じゃない、“本気”の状況。混乱の中、やたら静かな目と急な無言に、圧倒される。
考える。こいつが話していたこと。感情と行動。責任。俺の行い。引き受ける。“チャラにする”。“最もシンプルに”。
まさかと考えが過るが、しかし流石に“そんなこと”はないはずと、思い直す。
「おい、レイ、何を――」「今からすることは」
言おうとした文句を前のめりに遮られ、前立――閉じているファスナーの、スライダーを抓まれる。
「僕がしたいから、することだ。
君は逃げることも出来るし、断ることも出来る」
息を呑む。目を逸らすことが、出来なかった。
……拒絶することも。
ひどく長く感じるわずかの間から、首元に顔を寄せられる。髪の毛がくすぐってくる感覚に顔を逸らすが、より広く面積を明け渡しただけだった。吐息が皮膚に当たる。
「おい、待……――」
ファスナーが下ろされる音が聞こえて、思わずその手を掴んだ。顔を沈められたまま、耳元で、問われる。
「……止める?」
――ああ、クソ。
今、自分は、これ以上ないほど苦い顔をしているに違いない。耐えられず目を閉じて、掴んでいた手の力を恐る恐る緩めた。こいつの手がまた動いて、俺の手の内から離れていく。胸と腹、インナー越しに感じる空気の冷たさと、こいつの体温。
インナーまでたくし上げられて――。
「腕」
震える溜息を吐いて、言われるがままに腕を上げて、脱がされるのを手伝った。
何のつもりだ。本気でやってんのか。何やってるのか解ってんのか。
口にしたくなる言葉は全てが愚問だと、解っているから口をつぐむ。
人の腰に跨って座ったまま、次に平然と服を脱ごうとするレイを見て、思わず視界を手で覆った。
信じられない、どういう状況なんだ、これは。
“身から出た錆”とかいう言葉を思い浮かべながら、レイが服を脱いでいくのが音に、動きに――感触に、解った。
再び跨った体勢に居直られて、しかし今度は腰の上ではなく、大腿の上に。
ズボンに触れられて、ずっとうるさくしている心臓が一際跳ね上がる。このまま死ぬんじゃないかと思いながら、留め具が外されていくのを感じていた。
いい加減、心臓のうるささに、自分自身の反応に、急激に苛立ってくる。
こうなりゃ儘だ、どうにでもすればいいと、天井を仰いで両手で額を、目を覆った。
ズボンと、下着がずらされて、空気に触れる。愚直に張り詰めていた其れが露出され、布の制限から放たれて勢いよく起き上がったのを感じた。
――そこから、レイの動きが止まる。
「……、……?」
不可解に置かれた間を感じ取って、薄目を開けて手のひら越しに覗くと、何故か、こいつまで俺と同じように顔を覆って天井を仰いでいる。
……こいつ、まさか。
「……おい」
「何――いや、何も、ない、うるさい。黙って」
掛けた声も小出しに遮断される。小さな手の下から覗く、こちらを向いた顔はひどく赤く、顰められていた。確信を得る。
――こいつ、怖じ気づきやがった。こんな状況にしておいて。
「ここからがやっと本題。
考えたんだ。僕は君に対して情を持っていて、だから君が僕に見せた感情を引き受けたくなっている。けど、君の感情には君の行動に対しての責任感も含まれている。
だから、僕が君の感情を引き受けたい場合、君のした行いも引き受ける必要が出てくる」
よくよく話しているこいつの理論は、俺には難しい。難しいが、何について話しているのかは感覚的に、そして俺に対して、俺との関係に対してどういったことを考えているのかは、十分に解った。
繰り出される話も、黙って聞く。
「僕は君の行いについては、これからの行動の中で責任を取っていけば良いと思っているけれど……それじゃ君が納得できない。
――だから、最もシンプルに、“チャラにする”ことにした」
述べられる考えの中に、突然“確定事項”が出てきたことに気付いた。
「……あ?」
手が伸びてきて、指先で肩に触れられる。
緩慢なそれを見ていたら、あまりにも唐突に――視界が揺れて、背中に衝撃を受け止めた。
「――お前っ」
突然倒されたことに、文句を言う前に腹の上に跨られ、つい喉が止まった。
不意の動きとは言え、俺がこのひ弱な女に押し倒されることなんて“普通”あり得ない。
――こいつ、全体重をかけて、マジで倒してきやがった。
“普通”じゃない、“本気”の状況。混乱の中、やたら静かな目と急な無言に、圧倒される。
考える。こいつが話していたこと。感情と行動。責任。俺の行い。引き受ける。“チャラにする”。“最もシンプルに”。
まさかと考えが過るが、しかし流石に“そんなこと”はないはずと、思い直す。
「おい、レイ、何を――」「今からすることは」
言おうとした文句を前のめりに遮られ、前立――閉じているファスナーの、スライダーを抓まれる。
「僕がしたいから、することだ。
君は逃げることも出来るし、断ることも出来る」
息を呑む。目を逸らすことが、出来なかった。
……拒絶することも。
ひどく長く感じるわずかの間から、首元に顔を寄せられる。髪の毛がくすぐってくる感覚に顔を逸らすが、より広く面積を明け渡しただけだった。吐息が皮膚に当たる。
「おい、待……――」
ファスナーが下ろされる音が聞こえて、思わずその手を掴んだ。顔を沈められたまま、耳元で、問われる。
「……止める?」
――ああ、クソ。
今、自分は、これ以上ないほど苦い顔をしているに違いない。耐えられず目を閉じて、掴んでいた手の力を恐る恐る緩めた。こいつの手がまた動いて、俺の手の内から離れていく。胸と腹、インナー越しに感じる空気の冷たさと、こいつの体温。
インナーまでたくし上げられて――。
「腕」
震える溜息を吐いて、言われるがままに腕を上げて、脱がされるのを手伝った。
何のつもりだ。本気でやってんのか。何やってるのか解ってんのか。
口にしたくなる言葉は全てが愚問だと、解っているから口をつぐむ。
人の腰に跨って座ったまま、次に平然と服を脱ごうとするレイを見て、思わず視界を手で覆った。
信じられない、どういう状況なんだ、これは。
“身から出た錆”とかいう言葉を思い浮かべながら、レイが服を脱いでいくのが音に、動きに――感触に、解った。
再び跨った体勢に居直られて、しかし今度は腰の上ではなく、大腿の上に。
ズボンに触れられて、ずっとうるさくしている心臓が一際跳ね上がる。このまま死ぬんじゃないかと思いながら、留め具が外されていくのを感じていた。
いい加減、心臓のうるささに、自分自身の反応に、急激に苛立ってくる。
こうなりゃ儘だ、どうにでもすればいいと、天井を仰いで両手で額を、目を覆った。
ズボンと、下着がずらされて、空気に触れる。愚直に張り詰めていた其れが露出され、布の制限から放たれて勢いよく起き上がったのを感じた。
――そこから、レイの動きが止まる。
「……、……?」
不可解に置かれた間を感じ取って、薄目を開けて手のひら越しに覗くと、何故か、こいつまで俺と同じように顔を覆って天井を仰いでいる。
……こいつ、まさか。
「……おい」
「何――いや、何も、ない、うるさい。黙って」
掛けた声も小出しに遮断される。小さな手の下から覗く、こちらを向いた顔はひどく赤く、顰められていた。確信を得る。
――こいつ、怖じ気づきやがった。こんな状況にしておいて。
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