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「あっ……! ごめん……! あんまりに可愛くて、つい……! 責任はとるからさ……!! まずは故郷に戻って、母さんにリオルを俺の嫁だって紹介しなきゃ。いやー、こんな可愛い子を連れていったら、母さん喜んじゃうな!! ずっと娘が欲しかったって言ってたし」
「話が飛躍し過ぎなんだけど……!?」

ファーストキスを勇者に奪われたことより、結婚前の挨拶という、勇者の嫁になるためのイベントが勇者の口から飛び出し、否が応でも勇者ニコラスとの結婚が現実味を増したことに、魔王リオルは衝撃を受けた。

「それとも、今すぐ俺のものになる? 俺は全然それでも構わないんだけど」
「ひゃっ……!?」

尻を撫でられ、魔王リオルはビクりと体を震わせた。勇者ニコラスはリオルの反応に、興奮した声で、囁いた。

「顔も可愛いけど声も可愛いね……。今まではカプリスってやつがリオルの声を代弁してたんだよね? だから、今日はずっと黙ってたの? こんな声だなんて、知らなかったよ。隠すだなんて、ずるいなあ。もっと色んな声が聞きたいよ。……あ、そうだ! ここの奥にリオルの部屋があるんでしょう? なんか大きくて豪華なベットもあるんだよね? そこでしようか」
「なんで知っているの!?」
「あの小悪魔が自慢気に言ってたよ。なんでも歴代の魔王が使っていたベットなんだって?」

(カ、カプリス――!!)

目を白黒させているうちに、勇者ニコラスはリオルの部屋に辿り着いてしまった。どさりとリオルをベットに下ろすと、勇者ニコラスはリオルを半ば強引に組み敷いた。

「さぁ、愛し合おうか」
「待って! ま、まだ――!!」

再び唇を奪われ、魔王リオルは絶体絶命に陥った。抵抗も虚しく、魔王リオルは勇者ニコラスに欲望のまま貪られ、骨の髄まで愛されたた。

「よく似合ってるよ、リオル」
「そ、そう……?」

後日、勇者ニコラスの子を孕み、お腹を大きくした魔王リオルは結婚式当日、放心状態で純白のウェディングドレスを着ていた。

こんな人間でない女を嫁にするだなんて、迫害されるのではと思っていた魔王リオルは、予想に反して村中から歓迎を受けていた。

村の平均年齢は60歳を超えており、お腹に赤子を宿したリオルは、村にとって久しぶりの明るい話題だった。
勇者の祖父母も、顔を皺くちゃにして「こんなめんこい嫁を貰うだなんて、ニコラスもやるだなあ」と喜んだ。村中が、もうすぐ産まれるであろう赤ん坊に期待しており、結婚の撤回など出来るはずもなかった。

そして、結婚式では久しぶりに勇者パーティの面々と再会することになった。

「ご、ごめんなさい……! まさか、こんなことになってるだなんて……!!」
「あ、あの……! そんなこと、されないでください……!!」

勇者に「魔王は悪いやつじゃなかった」「すっごい可愛い子と結婚する」としか聞かされていなかった勇者パーティのメンバーに土下座されるのだった。




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