ゴブリン転生【完結】

ちゃむにい

文字の大きさ
2 / 52

窮地に陥る

しおりを挟む
「ギャー(鑑定)」

度々使うこのスキルは、腹の出たハートリアを見て「あとどのくらいで生れるのかな」と楽しみにしていたら、自然と身についたものだ。
この便利なスキルで色々なことを知ることが出来るようになったが、好奇心に駆られるまま多用していたら、女が妊娠したかどうかまで把握できるようになってしまった。

「……ギャ?」

ハートリアが出産して感動していると、なんとなく活力が沸いてくることに気が付いた。ふと、自分のステータスを見ると、ほんの少しだが能力が強化されていることに気が付いた。
どうやら俺は、息子が増えれば増えるほど、強くなるスキルを持っているようだった。おそらくは、ゴブリンの英雄という称号の影響だと思う。
他にも同様のスキルはないかと思ってステータスを見ると、魂廻たまめぐりという見慣れないスキルを見つけた。

人間であった頃から、俺は人の魂が見えていた。だから死後の世界に興味は強かった。
普段はぼんやりと見える魂は、生活している中で精神的ストレスや肉体的疲労がたまるとよりはっきりと見えるようになった。
おそらくは死の世界へと近づくからだろう。
なぜ自分には見えるのか、なぜ他の人には見えないのか。
幼い心ながらに不思議であった。

ゴブリンに転生しても、なお魂は見えている。
それも人間であった頃は死者のみであったが、ゴブリンになってからは生者の魂も見えることが出来た。
そして得た「鑑定」というスキル。

俺は辺りに漂う魂を「鑑定」してみた。
かつて自分が何者であったなど忘れてしまったような、時が経ては消失するほど弱体化したものでは鑑定出来ないようだ。
もしやと思い、先日死んだ女の魂を鑑定してみた。
この世に強い未練を残した自我のある魂であれば鑑定可能のようだ。

魂廻は特殊なスキルだ。
色々と試してはみたが、このスキルに関しては未だ分からない事も多い。というか分からない事だらけだ。鑑定で調べても大雑把な説明だけで詳細が不明だからである。魂を食べたら何かが起きるというのは分かるが、情報不足すぎて二の足を踏んでいた。
説明不足も甚だしい。

「ギャー…、ギャギャ??(これを食うのか…、食えるのか??)」

思わず呟くほど、滑稽な話だった。

そもそも魂を掴むことは出来るのだろうか? 素通りにならないか?
丸飲みになるのだろうか? 
けっこう大きいのだが、咀嚼できるのか? 喉に詰まらないだろうか。
水で魂を押し流すってのも変な話だな、と思いながら、女の魂を掴んでみた。

女の魂は逃げることなく、触れることが出来た。

「ギャギャ…(あたたかい…)」

まるで乳房のような柔らかさだった。
ふと、この女を犯した時のことを思い出す。
尻のでかい、いい女だった。

なんだか魂が美味そうに見えてきて、ごくり、と喉を鳴らす。

「……ギャーア(いただきまーす)」

魂は文句なしに美味かった。
腹も膨れる。
人間の肉の次ぐらいには。
とにかくのど越しがいい。つるりとした感じが最高だ。
そのまま踊り食いも良いが、噛み砕くことも出来て、コリコリとした歯ごたえがある。
味付けはなくともデザート感覚で、さっぱり美味しく食すことが出来た。

「ギィ、ギィ、ギャアー(これは癖になりそうだなー)」

そうなると生者の魂のほうも気になり始めた。
味の違いはあるのか?
美味しいのか?
丁度人間の男を捕らえたので、色々と試してみたのだが、食えなかったし、魂に触れることも出来なかったので時間の無駄かと思い、優先順位を下げた。

何かしら方法はありそうな気がするのだが、今やる事ではないだろう。なにしろ、ゴブリンのボスとして、他にやるべきことは山ほどあるのだから。

「ギャア、ギャア、ギャ…(ふんふん、なるほどね)」

男が持っていた紙に、学んだことを書き記していく。

死者の魂を食えば、生前持っていたスキルがランダムで1つだけ奪うことが出来る。
そして、子を孕ませた時、奪ったスキルを子に与えることが出来るようだ。

人間を2人喰らって、得たスキルは2つ。
その後の性交でハートリアから生まれた子は5匹。2匹は奪ったスキルを得ていたが、他3匹はただのゴブリンだった。
2匹はスキルを持っていた魂の、性格や記憶も一部引き継いでいるようだった。ただ、ゴブリンに食われたというマイナスな情報は抜け落ちてるようだ。
試行錯誤を繰り返した結果、命中率低下や盲目という弱体化スキルを持ったゴブリンも産まれたが、使い勝手の良いレアスキルを重複して得るゴブリンもいた。
スキルがあるなしは、そのゴブリンにとって生死すら分ける。
知性が低いからこそ、スキルに依存するところが大きいのだ。

この魂廻というスキルさえあれば、本来ゴブリンは得ることが出来ないとされる、人間やエルフのスキルでも、得ることが可能になる。
治癒、魔術を持った息子たちがいることは確認済だ。
治癒や魔術は、もっと特殊な進化をしたゴブリンが何年もかけて得ることが出来るものであり、生まれてすぐのゴブリンが扱うことが出来るというのは、人間にとっては驚異でしかないだろう。

つまり、このスキルの恩恵で、いくらでも強いゴブリンが産み出せることになるのだ。

少し調子に乗った俺は、新たなる雌を求めて遠征してみる事にした。

そこで思い知ったのだが、どうやら井の中の蛙であったらしい。

「ギャー、ギャギャ……!(くっそ、ミスった……!)」

うぬぼれもあっただろう。

腕力だけでは飛ぶ相手には何も出来ないし、魔物でもない大きな猪に体当たりされたら、打ちどころが悪ければ死ぬ。
強力なスキルがあるとはいえ、ゴブリンはゴブリンだ。
しかも最もレベルが高い自分でさえ、レベル15ほどしかない。
得るところもあったが、遠征により5匹ほど精鋭のゴブリンを失ってしまった。
これは群れとしても痛手だった。

「ギャアギャ!(おい、しっかりしろ!)」

俺は、怪我らしい怪我はない。
だが、息子は虫の息だ。返事がない息子を背負って、崖をよじ登った。

幸いなことに気象に恵まれた。
この辺りは頻繁に濃霧が発生して、1メートル先も見えぬほどになる。
それで敵の目を何とか撒いて巣穴へ帰還出来た。
この程度の傷なら、時間が経てば癒えるだろう。息子はそんなに弱い男じゃない。
だが、ズタズタにされたプライドは、俺に火をつけた。

この世は弱肉強食。
もっと頭を使って、強くないと生き延びれないと思い知らされた。
俺にはゴブリンの仲間という、守るべきものがある。
慎重すぎるぐらいのほうが良いのだ。

――もう誰からも奪われたくない。

ゴブリンの群れは、自分にとって大事な居場所だった。

仲間と息子達に頼られるのが心地よかった。

そのためには強くなくてはならない。
俺から奪おうとさえ思えなくさせるほど、圧倒的に。

だが、1人では限界がある。
地道に鍛えていけば強くなれるのかと思って、スライムなど比較的危険性の低い魔物や人間を殺してみたが、次第に経験値も低くなり、最終的にはゼロとなった。
弱いものをたくさん狩ったところで、強くはなれないのだ。

そこで目を付けたのは「ゴブリンの英雄」スキルだった。
それは息子が多ければ多いほど強くなるものだった。

魂廻を使ってゴブリンをたくさん産ませたら、自分のように特異種が生まれるかもしれない。そして、俺はそれを見極める目を持っている。
他のゴブリンの群れやってることを参考に、手っ取り早く仲間を増やそうと思った。

強くなるのには女がいる。
それもたくさんの女が。
この辺りには自分以外にも、複数のゴブリンの集団がいた。
それらすべてを倒して支配下に置き、捕らえられてる女を管理した。
既に妊娠してる女も複数いたが、まだまだ使える女も多かった。

群れに有益な魂のストックがある場合、女は、まずボスである俺が孕ませる。
孕んだ女には手出しはせず、世話役のゴブリンを付けて母体の生存率を上げ、出産を待つ。
それがルールとなった。
他のゴブリンは払い下げを待つ。
反発する者はいなかった。
実力差を体で理解させたのだ。
ここでは俺が王だった。
嫌なら出て行けばいいのだ。

そうやって、少しずつ仲間を増やして、縄張りを広げていった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

処理中です...