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連合軍
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近くにある村や街、もしくは石畳の街道を通る馬車などを襲い、何時ものように女を抱き、人間の肉を食って、足が付かないように洞窟に帰る。
その繰り返される日常が瓦解したのは、耳の良いRが音を拾ってからだ。
「何か、集団が来るギャ! この足音は人間だけではないギャア!!」
普段穏やかなRの、初めて聞く張り詰めた声に異常を察して、俺は目を向けた。今までも冒険者が来たことはあった。
だが未だかつて、こんなRの声は聞いたことはない。
群れにとって、余程の危機を察したのだろうと、俺は判断した。
「侵入者か。俺が追い払って来よう」
Rの口数は多くない。だからこそ、信用できる。
しかし、洞窟の入り口で見たものには驚きを隠せなかった。
「これは……!」
内心、まずい、と焦りの色を隠せなかった。
ざっと見えるだけでも、人間、ドワーフ、エルフ、ドラゴン。ドラゴンは古代種で幼いがレベル50を優に超えている。ステータスも俺のそれとは比べ物にならない。
ついに王都ラストヘルムが動いたのだ。弱いとはいっても光の勇者を倒したのだから、脅威と判断されても仕方がない。ゴブリン討伐のために連合が組まれたことは知っていたが、想定以上に動きが迅速であった。
光の勇者、池崎翔を生け捕りにした後も、それを奪還しようと、仲間意識の強い冒険者たちが徒党を組んで襲ってきた。もはや後の祭りでしかないが、その時点で足が付かないように、住処を移動するべきだったのだ。
ルシーとCが、その事について何か言ってた気もするが、目の前の快楽を貪るのに夢中になりすぎてしまった。ドラゴンと人間は敵対関係にあったはずだが、敵の敵は敵となり、手を組んだのだろう。
強くなければ奪われる。
分かっていたはずだったのに。
「C。俺が時間稼ぎをする。遺跡の隠し部屋に、皆を連れて逃れろ」
これは俺が蒔いた種だ。尻ぬぐいは俺がしなくてはならない。
洞窟は分岐点が5本あり、その内の3本が外に通じる事が判明していたが、いずれも無傷で抜けられるほど生易しいものではない。その点、遺跡の隠し部屋であれば、襲撃をやり過ごせば何とかなるかもしれない。あそこは広く、強固な結界で守られている。いちど中に入って結界を発動させれば、外からは入れない仕組みだ。
あの広さなら、息子たちが全員入ることも出来るだろう。
ただし、隠し部屋の位置がばれる前に、避難を完了させる必要がある。そうでなければ、兵糧攻めか、結界もろとも破壊されるかもしれない。
「そんな! 私は強くなりました、お力になれるはずです!」
「確かにお前は強いが、戦況が悪すぎる。Cが居たところで、無駄死にするだけだろう。大切なものを失う悲しさ、理解しているはずだ。俺にとってはお前たちが命より大切なんだ」
俺は説き伏せるように、手短にCを叱咤する。時間は限られている。こんなところで無駄遣いするわけにはいかないが、Cの協力を得なければ、群れは烏合の衆になってしまう。過去の俺のように、己の力を過信し、人間たちに歯向かおうとするものが出てくるに違いない。
「父上を失ったら、私は……」
「目的と手段を掛け違えるな、C。お前が、強くなりたかった理由はなんだ?」
「……わかりました……。ですが、私は父上を信頼しております。ぜったい人間どもに勝って戻ってきてください……!」
Cの足音が小さくなっていく。
これで、今生の別れかな、と思いつつ、連合軍に立ち向かう。いちばん強いのは手前の小さなドラゴンでなく、その後方にいる魔法剣士だろう。驚きのレベル100越えだ。
こんな戦力が居るなら、わざわざ異世界の住人を召喚せずとも、魔王を討伐出来るだろうに、と思う。戦い方も知らない少年少女より、幼い頃から魔物相手に鍛え上げられ、ハングリー精神の高い、この地に住まう人間のほうが、レアスキルなどなくとも、よっぽど強いだろう。
きっと、捨て駒なのだ、異世界の人間は。死んでも惜しくない、リスクのない捨て駒なのだ。その無責任な召喚に、俺は巻き込まれたのだろう。おそらくは出来れば、ひた隠しにしたい戦力のはずだ。それを投じられるというのは、ただのゴブリンだった俺が、よほど高く買われたものだな、と笑ってしまう。
「どれだけの時間を稼いでやれるかは分からないが……、やれるだけのことはやってやろう」
俺は、決意の雄たけびを上げた。
その繰り返される日常が瓦解したのは、耳の良いRが音を拾ってからだ。
「何か、集団が来るギャ! この足音は人間だけではないギャア!!」
普段穏やかなRの、初めて聞く張り詰めた声に異常を察して、俺は目を向けた。今までも冒険者が来たことはあった。
だが未だかつて、こんなRの声は聞いたことはない。
群れにとって、余程の危機を察したのだろうと、俺は判断した。
「侵入者か。俺が追い払って来よう」
Rの口数は多くない。だからこそ、信用できる。
しかし、洞窟の入り口で見たものには驚きを隠せなかった。
「これは……!」
内心、まずい、と焦りの色を隠せなかった。
ざっと見えるだけでも、人間、ドワーフ、エルフ、ドラゴン。ドラゴンは古代種で幼いがレベル50を優に超えている。ステータスも俺のそれとは比べ物にならない。
ついに王都ラストヘルムが動いたのだ。弱いとはいっても光の勇者を倒したのだから、脅威と判断されても仕方がない。ゴブリン討伐のために連合が組まれたことは知っていたが、想定以上に動きが迅速であった。
光の勇者、池崎翔を生け捕りにした後も、それを奪還しようと、仲間意識の強い冒険者たちが徒党を組んで襲ってきた。もはや後の祭りでしかないが、その時点で足が付かないように、住処を移動するべきだったのだ。
ルシーとCが、その事について何か言ってた気もするが、目の前の快楽を貪るのに夢中になりすぎてしまった。ドラゴンと人間は敵対関係にあったはずだが、敵の敵は敵となり、手を組んだのだろう。
強くなければ奪われる。
分かっていたはずだったのに。
「C。俺が時間稼ぎをする。遺跡の隠し部屋に、皆を連れて逃れろ」
これは俺が蒔いた種だ。尻ぬぐいは俺がしなくてはならない。
洞窟は分岐点が5本あり、その内の3本が外に通じる事が判明していたが、いずれも無傷で抜けられるほど生易しいものではない。その点、遺跡の隠し部屋であれば、襲撃をやり過ごせば何とかなるかもしれない。あそこは広く、強固な結界で守られている。いちど中に入って結界を発動させれば、外からは入れない仕組みだ。
あの広さなら、息子たちが全員入ることも出来るだろう。
ただし、隠し部屋の位置がばれる前に、避難を完了させる必要がある。そうでなければ、兵糧攻めか、結界もろとも破壊されるかもしれない。
「そんな! 私は強くなりました、お力になれるはずです!」
「確かにお前は強いが、戦況が悪すぎる。Cが居たところで、無駄死にするだけだろう。大切なものを失う悲しさ、理解しているはずだ。俺にとってはお前たちが命より大切なんだ」
俺は説き伏せるように、手短にCを叱咤する。時間は限られている。こんなところで無駄遣いするわけにはいかないが、Cの協力を得なければ、群れは烏合の衆になってしまう。過去の俺のように、己の力を過信し、人間たちに歯向かおうとするものが出てくるに違いない。
「父上を失ったら、私は……」
「目的と手段を掛け違えるな、C。お前が、強くなりたかった理由はなんだ?」
「……わかりました……。ですが、私は父上を信頼しております。ぜったい人間どもに勝って戻ってきてください……!」
Cの足音が小さくなっていく。
これで、今生の別れかな、と思いつつ、連合軍に立ち向かう。いちばん強いのは手前の小さなドラゴンでなく、その後方にいる魔法剣士だろう。驚きのレベル100越えだ。
こんな戦力が居るなら、わざわざ異世界の住人を召喚せずとも、魔王を討伐出来るだろうに、と思う。戦い方も知らない少年少女より、幼い頃から魔物相手に鍛え上げられ、ハングリー精神の高い、この地に住まう人間のほうが、レアスキルなどなくとも、よっぽど強いだろう。
きっと、捨て駒なのだ、異世界の人間は。死んでも惜しくない、リスクのない捨て駒なのだ。その無責任な召喚に、俺は巻き込まれたのだろう。おそらくは出来れば、ひた隠しにしたい戦力のはずだ。それを投じられるというのは、ただのゴブリンだった俺が、よほど高く買われたものだな、と笑ってしまう。
「どれだけの時間を稼いでやれるかは分からないが……、やれるだけのことはやってやろう」
俺は、決意の雄たけびを上げた。
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