ゴブリン転生【完結】

ちゃむにい

文字の大きさ
15 / 52

ゴブリンの国

しおりを挟む


王と側室、そしてその子供たちの部屋を見て回った。
一癖も二癖もありそうな人間ではあったが、その悪趣味には辟易する。勢を尽くした内装。飢えて死んだと思われる遺体も通りには転がっていたというのに、いったいどれだけの国庫を無駄にしたのだろうか。
レースがふんだんに使われている天蓋付きのベットには噴飯ものであった。
素晴らしい金細工の大きなベットだ。買った時は高くとも、こんな趣味の悪いものでは売っても二束三文であることは、想像に易しくなかった。

城壁はしっかりとした作りになっていたが、城壁内のレンガは崩れ落ちている部分もある。古ぼけた街並みから察するに、立派なのは外見だけで、補修費が捻出できないほど財政に余裕がなかったのだろう。

「なんて粗末な豚小屋だ。俺の手刀1つで吹き飛ぶだけの事はある。Cシー、このキングゴブリンに相応しい城に作り直すぞ」
「はい、父上」

俺は古着屋にあった鏡で自身の姿を見た。
上半身は裸で、クマの毛皮で下半身を覆っただけの、その姿。

この毛皮の主はゴールデンベアという魔物だ。
森の覇王という称号を持つ、中々手ごわい相手だった。
本来なら暗闇の洞窟より、もっと奥地に住んでいるらしいが、空腹で冬眠が出来ないゴールデンベアが、餌を漁りに、村の近くを彷徨っていたものを倒したものだ。
その時に、俺はレジェンドゴブリンへと進化を遂げた。

まだまだ自分の可能性は未知数だと思っている。
キングゴブリンで進化は打ち止めのようだが、キングゴブリンの中でも、ピンからキリまで居るだろう。力を分け与えてくれたFエフRアールのためにも、王の中の王になってやろう、と心の中で誓う。

俺なら出来る。研鑽を積めば、誰にも倒されない不滅の存在へと到達できるはずだ。

「ん? あれは……」

ふと、窓から見える建物に興味が惹かれた。
風で旗がはためいているが、冒険者が持っていたカードと同じマークだ。

「ギルドですね。興味がおありですか?」
「そうだな、時間に余裕があれば、見て回りたい。……ゴブリンのギルドを作る参考になるかもしれんしな」

アルファベット持ちの息子は総じて人間並みに知能も高い。そうなれば、いずれ独り立ちする日もくるかもしれない。
この世界は広い。
我々ゴブリンが欲するもの、不要であるが価値があるものを売買する場所がいる。幸い既に貨幣経済が、この国にはある。それを利用しない手はない。

「素晴らしいお考えですね。私にお任せ下さい」
「そうだな、Cシーが適任だろう」

興味を示してきたCシーに直轄させることにした。Cシーは恭しく腰を折って、感謝の意を述べた。
通りを出て、露店を見る。
背に腹は代えられないのか危険を顧みずに、人間が商売を再開したらしい。王都はゴブリンの手に落ちたとしても、俺を中心に一定の秩序はある。人間を養うのには食べ物が必要だ。そこに商機はある。無為に殺さないだろうと、見抜いているのだろう。
なんとも、商魂たくましいことだ。そして俺はそんな人間は嫌いじゃない。

無造作に山積みにされる食べ物を見て、俺は言った。

Cシー、俺はもっと強くなるぞ。そして領土を増やしてやる。人間どもを恐怖のどん底に落とすのだ。見よ、この一握りの雑穀を得るために家族を売る人間もいるのだ。食うものがなく、水で腹が膨れてるありさまよ。この王都では肥え太った人間が多いというのにな。富は一握りの人間によって掌握されているのだ。俺がそれを是正してやろう。人間を活かさず殺さず、あまねく等しく統治するのだ」

「貴方様になら、それは可能でしょう。お力添えいたします。あの、恐れ入りますが、それは……?」
「ああ、これか。通りで死んでいた人間の屍にホーンラビットの魂を付与してみた。どうやら成功のようだな」

キングゴブリンに進化する事が、スキルを使う条件であったようだ。

ピョンピョンと跳ね回る人間に、Cシーは恐怖と憧憬の眼差しで私を見て「流石は父上、感服いたします」と感嘆の声を上げた。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

処理中です...