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ゴブリンの国
しおりを挟む王と側室、そしてその子供たちの部屋を見て回った。
一癖も二癖もありそうな人間ではあったが、その悪趣味には辟易する。勢を尽くした内装。飢えて死んだと思われる遺体も通りには転がっていたというのに、いったいどれだけの国庫を無駄にしたのだろうか。
レースがふんだんに使われている天蓋付きのベットには噴飯ものであった。
素晴らしい金細工の大きなベットだ。買った時は高くとも、こんな趣味の悪いものでは売っても二束三文であることは、想像に易しくなかった。
城壁はしっかりとした作りになっていたが、城壁内のレンガは崩れ落ちている部分もある。古ぼけた街並みから察するに、立派なのは外見だけで、補修費が捻出できないほど財政に余裕がなかったのだろう。
「なんて粗末な豚小屋だ。俺の手刀1つで吹き飛ぶだけの事はある。C、このキングゴブリンに相応しい城に作り直すぞ」
「はい、父上」
俺は古着屋にあった鏡で自身の姿を見た。
上半身は裸で、クマの毛皮で下半身を覆っただけの、その姿。
この毛皮の主はゴールデンベアという魔物だ。
森の覇王という称号を持つ、中々手ごわい相手だった。
本来なら暗闇の洞窟より、もっと奥地に住んでいるらしいが、空腹で冬眠が出来ないゴールデンベアが、餌を漁りに、村の近くを彷徨っていたものを倒したものだ。
その時に、俺はレジェンドゴブリンへと進化を遂げた。
まだまだ自分の可能性は未知数だと思っている。
キングゴブリンで進化は打ち止めのようだが、キングゴブリンの中でも、ピンからキリまで居るだろう。力を分け与えてくれたFやRのためにも、王の中の王になってやろう、と心の中で誓う。
俺なら出来る。研鑽を積めば、誰にも倒されない不滅の存在へと到達できるはずだ。
「ん? あれは……」
ふと、窓から見える建物に興味が惹かれた。
風で旗がはためいているが、冒険者が持っていたカードと同じマークだ。
「ギルドですね。興味がおありですか?」
「そうだな、時間に余裕があれば、見て回りたい。……ゴブリンのギルドを作る参考になるかもしれんしな」
アルファベット持ちの息子は総じて人間並みに知能も高い。そうなれば、いずれ独り立ちする日もくるかもしれない。
この世界は広い。
我々ゴブリンが欲するもの、不要であるが価値があるものを売買する場所がいる。幸い既に貨幣経済が、この国にはある。それを利用しない手はない。
「素晴らしいお考えですね。私にお任せ下さい」
「そうだな、Cが適任だろう」
興味を示してきたCに直轄させることにした。Cは恭しく腰を折って、感謝の意を述べた。
通りを出て、露店を見る。
背に腹は代えられないのか危険を顧みずに、人間が商売を再開したらしい。王都はゴブリンの手に落ちたとしても、俺を中心に一定の秩序はある。人間を養うのには食べ物が必要だ。そこに商機はある。無為に殺さないだろうと、見抜いているのだろう。
なんとも、商魂たくましいことだ。そして俺はそんな人間は嫌いじゃない。
無造作に山積みにされる食べ物を見て、俺は言った。
「C、俺はもっと強くなるぞ。そして領土を増やしてやる。人間どもを恐怖のどん底に落とすのだ。見よ、この一握りの雑穀を得るために家族を売る人間もいるのだ。食うものがなく、水で腹が膨れてるありさまよ。この王都では肥え太った人間が多いというのにな。富は一握りの人間によって掌握されているのだ。俺がそれを是正してやろう。人間を活かさず殺さず、あまねく等しく統治するのだ」
「貴方様になら、それは可能でしょう。お力添えいたします。あの、恐れ入りますが、それは……?」
「ああ、これか。通りで死んでいた人間の屍にホーンラビットの魂を付与してみた。どうやら成功のようだな」
キングゴブリンに進化する事が、スキルを使う条件であったようだ。
ピョンピョンと跳ね回る人間に、Cは恐怖と憧憬の眼差しで私を見て「流石は父上、感服いたします」と感嘆の声を上げた。
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