ゴブリン転生【完結】

ちゃむにい

文字の大きさ
31 / 52

異世界召喚――転換期

しおりを挟む

そこは今まで居た世界ではなかった。

窓からはグラウンドが見え、運動している生徒の姿があった。その向こう側には見覚えのある、なだらかな山が広がっていた。
机の中には教科書が入っている。
ああ、懐かしくも、ここは俺が通っていた高校だった。

やられたな、とは思ったが、やはり元の世界に戻ることは可能であったのか、と思う。
「元の世界には戻れない」と言って、あの世界の人間は異世界の人間をタダ働きに近い形でこき使っていたが、これで戻れることは実証された。

「……フィリップ、知っていたな?」
「ほっほ、何のことですかの? ……まさか、奴らが、いくら劣勢に追い込まれたとしても、このような悪手を打つほど間抜けだとは思っていなかっただけですわい。おそらくは、知らなかったこととはいえ、まさかわしまで送還されるとは。生きていると色々ありますな……」とすっとぼける爺さん。俺と視線を合わせようとしない。

「元の世界に戻るために、協力してもらうぞ」
「この老体で出来ることがあるなら、何とぞ」
「お前に年を感じたことはないぞ、この化け物め」
「化け物に化け物と言われるとは……、至極光栄で御座いますな」

召喚の儀に立ち会った時に、概要は召喚士に教えてもらったが、それを行うには生贄がいる。
おそらくは元の世界に戻すにも、生贄が複数、もしくはそれ以上に必要だ。
問題はそれを、どのようにしてこの世界で確保するのか、ということだった。

容易には行えない術である。あちらの世界でも準備にかなり時間がかかった。

送還される際に視界の端で見えたもの――
召喚士が血を吐きながら、倒れ伏すところだった。
おそらくは術者本人も命を削らないと出来ない事なのだ。

行きはよいよい帰りは怖い、ってやつなのだろう。

ゴブリンの王になって50年余り。
少しずつ、俺に悟られないように、周到に準備されていたのだろう。
そうでなければ、針目ぐされた情報網から抜け落ちるわけがない。
今回は人間の勝ちだ。

だが、この50年、何もしてこなかったわけではない
自分が不在でもいけるように、指揮系統は確立してある。
AエイCシーは、こちらから言わなくても送還に巻き込まれた下級のゴブリンに指示を出してくれる。
何とも頼もしいことだ。
それに、あちらにはBビーDディーがいる。
Bビーはちょっと微妙だが……、Dディーがいれば、問題はないだろう。

今回のことは、ただの不意打ちであり、戦力的な優位には変わりない。

「さて、と」

ステータスウィンドウは問題なく機能する。
そして鑑定などのスキルも使えるようだ。
グラウンドでボール投げをしている生徒を、1人ずつ鑑定でステータスをチェックした。
固有のスキルを持つものが大半だった。

「これなら問題はないな」

ただ、欲しいスキルを持っている者がいなかった。
欲しいのは召喚士のスキルだ。これはあの世界でも、30人召喚して1人いれば良いほうと言われる
レアスキルなので仕方がない。

俺はあの世界に戻りたい。
人間が出来るなら、自分たちにも出来ないはずがないだろう。

まずは、召喚士を精神支配して保有していかねばならない。
魂を食って、息子にスキルを渡す事も考えたが、あれは運任せなだ。
まだレベル1の生徒たちの中にも所有スキルが1個だけという者は少ない。
最低でも3個は持っている。
その中で1個だけがランダムで抽出され遺伝されるのだから、確率は3分の1でしかない。
もし召喚士のスキルではなく、ハズレのスキルが継承されてしまったら、目も当てられない。

はやくあの世界に帰るためには、頭数を揃えたほうが早いだろう。

自分だけ戻るほうが楽だとは思うが、そんなことをするつもりは毛頭もない。特にAエイCシーは大事な息子だし、フィリップは良き話し相手だ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

処理中です...