僕の白い蝶【完結】

ちゃむにい

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好奇心

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蝶人間は魔物と人間の混雑種だとされている。

十数年ほど前まで、蝶人間にピンを指して標本を作るのが流行っていた。兄に連れて行ってもらった貴族の屋敷で実物を目にしたこともあった。
綺麗だと思ったけど同時に恐ろしくもあって、当時のマリオンはそれを見た時、泣いてしまった。その時はそれが蝶人間だと知らなかったけど、蝶人間を実際に育て始めて、ニーナが羽化した瞬間、その標本になってしまった蝶人間の事を思い出した。

マリオンが購入して丸ごと移設した温室は、元々は美しい標本を作るために、とある貴族が作らせたものだとされている。蝶人間の見た目が羽根と触覚以外は人間とほぼ変わらないため、残酷ではないかと議論が起き、標本の作製は今では禁止されている。
その代わりに、愛玩用としての使われ方を秘かにされていることを、蝶人間の卵を買う前に奴隷商から教えてもらった。

マリオンは、ニーナを家族の一員のように、愛情を持って接していた。それなのに、その家族が凌辱されてしまった。
ニーナの反応からして、同意を得ての行為には見えなかった。

「ああ、可哀想なニーナ……。くそっ、汚いものを掻き出してあげないと……。こら、逃げるなって。綺麗にしてあげるだけなんだから」

あんな赤ら顔で、肥え太った男との間に出来た子なんて産まないで欲しいが、それでも、ニーナが有精卵を産んだら育てるんだろうなあと思いながら、マリオンは悔しさの余り、ぼろぼろと大粒の涙を零しながら、逃げ惑うニーナを水浴び場に連れて行った。
マリオンは、メイリンがやっていたのと同じように、見様見真似でニーナの体を隅々まで洗った。

その間、ずっと考えていたのは、侍従の事だった。

(蝶人間は魔物であり、物扱いだ。いくら貴族である僕の持ち物であっても、姦淫罪にはならないし、侍従がニーナを凌辱している現場を押さえたわけでもない。ニーナが侍従の子を産まないと証拠がない……。だからといって、ニーナにまた怖い目に逢わせるのは……)

侍従以外にも屋敷内に人間の男は居る。
好き嫌いの多いマリオンに「今までで一番おいしい」と唸らせるほど料理上手な凄腕コックもいるし、温室を維持管理するために雇った庭師は殆どが男だ。けれども、今までの言動などを考えると、犯人は侍従以外に考えられなかった。

マリオンは、ニーナが眠りに落ちるのを見届けると、温室に設置した木のベンチに座って爪を噛んだ。侍従を殺してしまいたいと思ったけど、それではまだ温い気がした。

侍従は見目の良さを求められることが多い。酒好きで、太って醜い顔をした侍従など、どこの屋敷でも雇用されるわけがない。だが、その父親が「どうかお願いします」と泣いて懇願するので、マリオンが可哀想に思い、拾い上げただけなのだ。

仕事の態度は真面目で優秀だった。だからこそ、多少の飲酒ぐらいならと、目を瞑っていたのだ。恩を仇で返された気分だった。

ニーナの処女を奪い、怖い思いをさせた罪を贖って欲しかった。死より重い罪を与えないと、マリオンの気が済まなかった。

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