恋愛ファンタジー短編集【宵闇】

両翼を失った天使スピカ【魔族視点】【R18】

そこは、城の最上階にある薄暗い部屋だった。

六対の白い羽が壁に飾られ、男はうっとりとした表情で、それを撫でた。それはスピカが堕天使となる前に根元から切り落とした翼だった。
男が愛した女は神の次に尊い天使で、手に入れるためには様々な壁があり、その背に生える翼も、障壁の１つだった。

スピカを弱体化させるために、男は両翼を切り落とした上で陵辱し、堕天させた。
激しく陵辱され、力無く弛緩した花弁からこぼれ落ちる愛の証に、男は興奮し、歓喜した。
胎内に射精する度に、スピカの聖なる力は弱まっていった。

「素晴らしい！　これでは、ただの女ではないか」

魔族の一個師団を単身壊滅させた強大な力は影を潜め、男を悦ばせた。

しかし、やはり一筋縄ではいかず、間抜けなことに逃げられてしまった。抱く度に淫紋が赤く輝いていたため、足の爪先から頭の脳に至るまで快楽に浸され、もう逃げることはないだろうと油断した、その隙を狙われた。

「まさか、人間界に潜んでいたとは」

その行方は長い間分からず、ずっと探し続けていた。
だが、ようやくスピカの居場所を見つけ出した。

男は情報が手に入ると、すぐに人間界に向かったが、想定外の事ばかりが起きた。

人間に向けられたスピカの笑顔に激しく嫉妬しながらも、戦場では見たことがない穏やかな表情に惹かれて、男の心は激しく燃え上がった。

「スピカ……！　何があろうとも、絶対にお前だけは手に入れる……！！」

スピカを手に入れるために魔王となった美しい紫眼の男は、神がスピカを守るために密かにはった結界を憎々しげに睨み付けた。