8 / 11
8※スヴェン視点
しおりを挟む
それは思ったよりも、すぐに見つかった。
笑顔の可愛い、ミレイアという名前の雌だった。それは魔狼ではなく人間だったが、スヴェンにとって関係なかった。スヴェンの母親も人間だったから、人間の雌に惹かれても不思議ではない。
すぐに愛し合いたいと思い、邪魔者は殺してミレイアと番った。
ミレイアの腹に新たな命が芽生えて、毎日が幸せだった。顔をミレイアの腹部にくっつけると、複数の胎動を感じた。
スヴェンは、父親のように、ミレイアと群れを作りたかった。
だが、ミレイアと初めて出来た我が子は、人間に奪われてしまった。ミレイアの仲間から得られた情報により、巣穴の場所が特定されてしまったのだ。
送り込まれた冒険者は、手強かった。負け知らずのスヴェンでも、危うく殺される寸前のところまで追い詰められた。
崖から自ら落ちて難を逃れたが、深手を負った。スヴェンは痛む足を引きずりながら、匂いを辿ってミレイアの行方を捜したが、お腹の子供は堕胎された後だった。ミレイアの匂いは途切れており、行方は分からなかった。
五匹の子供の死骸をゴミ捨て場で見つけた時、スヴェンは己の未熟さを呪った。胎児はまだ小さくとも体毛が生えていたし、立派な耳も尻尾もあった。
あと少しだけ守れていれば、元気な産声が聞けるはずだった。
「もっと俺が強かったら……!」
スヴェンは愛する子供達を守れなかったことを慟哭して詫びた。スヴェンが強ければ、ミレイアを奪われることも、子が死ぬこともなかった。
スヴェンは父親から言われていたことを思い出した。――この世界は弱肉強食だ。欲しいものがあるなら、強くなるか、頭を使って賢く生きるしかない。スヴェンは子供の遺骸を傍らに、どうしたら再びミレイアを手に入れるか考えた。
やはり魔狼1匹だけでは見張りも手薄になる。実際、やつらが攻撃を仕掛けてきたのは、スヴェンが寝ている時だった。
群れが出来るまでは、安全な人間の世界で、ミレイアと共に、人間として生きるのも良いかもしれないと考えた。なにより、ミレイアと交尾していた時、ミレイアからは負の感情しか向けられなかった。当然、巣穴の中で笑顔を見ることはなかった。
魔狼とは違い、強引に体を重ねるだけでは、ミレイアとの間には信頼関係を築くことが出来なかった。魔狼の雌は強い雄であれば無理やり交尾されても心を許すが、人間はそうでないらしい。
人間の雌に同じことをしたら、逃げられても仕方がないかもしれない、と母親に相談した時に指摘された。
スヴェンは同じ失敗を繰り返さないように、母親である魔女に頼み、人間に化けることにした。
「これが俺か……」
自慢の牙も爪もなく、人間の姿は、心もとなかった。
笑顔の可愛い、ミレイアという名前の雌だった。それは魔狼ではなく人間だったが、スヴェンにとって関係なかった。スヴェンの母親も人間だったから、人間の雌に惹かれても不思議ではない。
すぐに愛し合いたいと思い、邪魔者は殺してミレイアと番った。
ミレイアの腹に新たな命が芽生えて、毎日が幸せだった。顔をミレイアの腹部にくっつけると、複数の胎動を感じた。
スヴェンは、父親のように、ミレイアと群れを作りたかった。
だが、ミレイアと初めて出来た我が子は、人間に奪われてしまった。ミレイアの仲間から得られた情報により、巣穴の場所が特定されてしまったのだ。
送り込まれた冒険者は、手強かった。負け知らずのスヴェンでも、危うく殺される寸前のところまで追い詰められた。
崖から自ら落ちて難を逃れたが、深手を負った。スヴェンは痛む足を引きずりながら、匂いを辿ってミレイアの行方を捜したが、お腹の子供は堕胎された後だった。ミレイアの匂いは途切れており、行方は分からなかった。
五匹の子供の死骸をゴミ捨て場で見つけた時、スヴェンは己の未熟さを呪った。胎児はまだ小さくとも体毛が生えていたし、立派な耳も尻尾もあった。
あと少しだけ守れていれば、元気な産声が聞けるはずだった。
「もっと俺が強かったら……!」
スヴェンは愛する子供達を守れなかったことを慟哭して詫びた。スヴェンが強ければ、ミレイアを奪われることも、子が死ぬこともなかった。
スヴェンは父親から言われていたことを思い出した。――この世界は弱肉強食だ。欲しいものがあるなら、強くなるか、頭を使って賢く生きるしかない。スヴェンは子供の遺骸を傍らに、どうしたら再びミレイアを手に入れるか考えた。
やはり魔狼1匹だけでは見張りも手薄になる。実際、やつらが攻撃を仕掛けてきたのは、スヴェンが寝ている時だった。
群れが出来るまでは、安全な人間の世界で、ミレイアと共に、人間として生きるのも良いかもしれないと考えた。なにより、ミレイアと交尾していた時、ミレイアからは負の感情しか向けられなかった。当然、巣穴の中で笑顔を見ることはなかった。
魔狼とは違い、強引に体を重ねるだけでは、ミレイアとの間には信頼関係を築くことが出来なかった。魔狼の雌は強い雄であれば無理やり交尾されても心を許すが、人間はそうでないらしい。
人間の雌に同じことをしたら、逃げられても仕方がないかもしれない、と母親に相談した時に指摘された。
スヴェンは同じ失敗を繰り返さないように、母親である魔女に頼み、人間に化けることにした。
「これが俺か……」
自慢の牙も爪もなく、人間の姿は、心もとなかった。
10
あなたにおすすめの小説
放課後の保健室
一条凛子
恋愛
はじめまして。
数ある中から、この保健室を見つけてくださって、本当にありがとうございます。
わたくし、ここの主(あるじ)であり、夜間専門のカウンセラー、**一条 凛子(いちじょう りんこ)**と申します。
ここは、昼間の喧騒から逃れてきた、頑張り屋の大人たちのためだけの秘密の聖域(サンクチュアリ)。
あなたが、ようやく重たい鎧を脱いで、ありのままの姿で羽を休めることができる——夜だけ開く、特別な保健室です。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
淫紋付きランジェリーパーティーへようこそ~麗人辺境伯、婿殿の逆襲の罠にハメられる
柿崎まつる
恋愛
ローテ辺境伯領から最重要機密を盗んだ男が潜んだ先は、ある紳士社交倶楽部の夜会会場。女辺境伯とその夫は夜会に潜入するが、なんとそこはランジェリーパーティーだった!
※辺境伯は女です ムーンライトノベルズに掲載済みです。
イケメンエリートは愛妻の下僕になりたがる(イケメンエリートシリーズ第四弾)
便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある
IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC”
謎多き噂の飛び交う外資系一流企業
日本内外のイケメンエリートが
集まる男のみの会社
そのイケメンエリート軍団のキャップ的存在
唯一の既婚者、中山トオルの意外なお話
中山加恋(20歳)
二十歳でトオルの妻になる
何不自由ない新婚生活だが若さゆえ好奇心旺盛
中山トオル(32歳)
17歳の加恋に一目ぼれ
加恋の二十歳の誕生日に強引に結婚する
加恋を愛し過ぎるあまりたまに壊れる
会社では群を抜くほどの超エリートが、
愛してやまない加恋ちゃんに
振り回されたり落ち込まされたり…
そんなイケメンエリートの
ちょっと切なくて笑えるお話
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる