PTが全滅して敗退しました。

ちゃむにい

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「おっそ~い!! 待ちくたびれちゃったじゃない!! いったい何をしていたの!?」

そこにあったのは、死んだはずの仲間達の姿だった。

「嘘だろ……!? 俺の目がおかしくなったわけじゃないよな……!?」

目をこすって見ても、仲間達の姿はそこにあった。

「いったい、何がなんだか……。でも、生きていて本当に良かった」

ホルンは魂が抜けたように、仲間達の話を聞いた。

「もうダメだ! と思ったのよね! そうしたら目の前がピカッと光って、天使が降臨したのよ! 魔物は跡形もなく蒸発したわ! そればかりか、みんなを蘇生して助けてくれたの……」
「……て、天使?」

仲間の話を聞くところによると、長い間天界は盗まれた神具、アリスを探し回っていたらしい。
ようやくその所在が判明し、天罰として猿型の魔物は消滅させたらしい。

だが、肝心の神具はホルンが持ち出した後だった。猿型の魔物を一撃で滅ぼすために力の大半を使い果たしてしまった天使は、ダンジョンから出ることも出来ず、その場に居合わせたホルンの仲間を蘇生し、今まで助け合いながらダンジョンの中で生活していたらしい。

「私たちは、蘇生したけど武器もなければ防具もなくて、ホルンが戻って来るまで、ここにいるしかなかったのよ!  あんただったら、すぐ戻ってくるだろうと思ってたのに全然来てくれないし、見捨てられたのかと心配していたんだからね! 食べ物はあったけど誰も料理出来なくて、毎日大変だったんだから!」

ぷりぷりと怒りながらも、ホルンの仲間、ミーアは「でも、ありがとう! 助けに来てくれて!」と言った。

「そういうわけだ。その神具、返してもらうぞ。返してもらわねば、私は天界に戻れぬのだ」

「分かりました、返しますね。仲間を助けてくれて、本当にありがとうございます」

ホルンはアリスを手渡そうとしたが、アリスは「嫌だ」と言った。

「我の主はホルンだ。離れるつもりは毛頭ない」
「俺なんかと一緒にいるより、神様と一緒にいたほうが良いんじゃないのか?」
「……宝物庫に仕舞われるだけだ。それなら、ホルンと旅をするほうが楽しい」

説得はしたが、何を言っても「嫌だ」と言うアリスに、困り果てていると、「では、その人間が死ぬまで待とう。人間の寿命は短いから、神具が行方不明となった年数を考えれば、神様も御許しになって下さるだろう。その間に私も天界に戻れるぐらいの力が戻るだろうし」と天使ヴォルカは提案した。

その後、ホルンは天使ヴォルカを連れた商人として、有名になった。

「ひぇ~!? あれ、何!? 俺、ただの商人なんだけど!?」
「ただの商人は天使なんか連れてないからねぇ」

天使を一目見ようとして人が殺到したこともあり、ホルンは仕方なく商人を辞めざる得なかった。親は残念そうだったが、「あんた、まだ冒険に未練があるんだろ? 冒険者だった時の頃のほうが生き生きとしてたしね。……まだ私たちも元気だから、お前は冒険者に戻りな。私達に気兼ねすることはないよ。体が動く内は頑張るからさ」と言ってホルンを送り出した。

そして、人目から逃れるようにホルンは冒険者として復帰したが、以前の仲間達は引退済みだったため、勇者パーティーに加入した。

「迷惑かけたら、ごめんな。こいつ、いくら言っても羽根を隠そうとしなくってさ……」
「だって羽根を隠すと、魔力も使うし息苦しいんですよ……!」
「いえいえ、これから魔王に挑むところなんで、ホルンさんとヴォルカがメンバーになってくれて、とても心強いです!」

勇者は満面の笑みで、ホルンと天使ヴォルカを仲間として歓迎した。

 


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