不足の魔女

宇野 肇

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2幕: 黒金のカドゥケウス

ゴミ拾いフィランソロピー(4)

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 奥の部屋で何をしたか。――取り敢えず食事だ。鬣の子のお腹が凄まじい音でなったのだ。危うく吹き出しそうになるところをなんとかこらえた。
 二人を椅子に座らせ、食事にする旨を告げる。時間をかけて料理するのは今後の楽しみにするとして、皿ごと料理をだして物質として固定ロックすると、烏の子は目を瞬かせた。うん、年相応に見える。愛らしいという意味で。
「食べていいわよ」
 声を掛けると、素早く動いたのは鬣の子の方だった。意外にも探るような動作もなしに、スープの入った器を両手で掴み、浴びるようにして飲む。それから息つく間もなくスプーンを握ると、掻き込むようにして他の料理も貪った。いい食べっぷりだ。
「あなた、目が見えないんじゃないの?」
「これは見える」
 むぐむぐとステーキを頬張りながら鬣の子が答えた。……ふむ。聞きたいことが増えたわね。
 鬣の子の勢いに気圧されていた烏の子にも促して、二人が食べる様子を眺める。鬣の子は非常にワイルドだけれど、烏の子の方は大人しい。パンの柔らかさにまた驚いて、まず千切ってみたり、それをそのまま口に入れてよく噛んでみたり。私の方を気にしながらも可能な限りお行儀良く、そして興味津々に静かに平らげた。デザートに甘めのクッキーと紅茶をだすと、こちらもぺろりと二人の胃に消えた。

 腹ごしらえが済めば次はお風呂が望ましい。そこまで酷くないとは言え、服だって布切れみたいでみすぼらしさに拍車がかかっている。
 鬣の子は湯浴みだと言って用意したお湯や石鹸を飲み食いしようとしたので慌てて止めた。仕方が無いから私が拭いてやろうとしたら今度は私が烏の子に全力で止められてしまった。何を恥ずかしがっているのかと思ったけれど、私がお婆さんレベルで長生きしているのを知っているのは私だけだし、この子たちは男だ。年齢は多分リュディガーよりは上だろう。15歳前後ってところかしら。
 ともあれ、引き下がった私は衝立ついたてを出して彼らが私の視界に入らないようにした。部屋を出てもいいんだけど、そう長くかかるものでもない。

「あの、終わりました。……その、申し訳ありません。服の着方が、分かりません」
 烏の子が衝立の向こうから控えめに声をあげた。
 ふむ。じゃあ、折角だからさっきの適当に選んだ服をいろいろ組み替えてみましょうか。
 ぱちん、と指を鳴らしてから衝立を引っ込めると、そこには見違えるほど綺麗になった二人が立っていた。男性給仕ギャルソンの格好ってそれだけでしゃんとして見えるわよね。
 うん、痩せこけてるのは今後改善されていくにしても、やっぱり服装から受ける印象っていうのは強いわ。
「怪我を治してご飯も食べて、小奇麗になったところで……じゃあ、これから面接を始めましょうか」
 何回も驚いてるところ悪いんだけど、こんなの序の口以下だからね?
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