運命を知らないアルファ

riiko

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本編

1、トラウマ

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 この世界はバース性というものがあり、人はそれに左右される。とりわけ俺の性別は優遇されていると思う。だがそのバース性がとてつもなく嫌だった。自分のバースが、ではない。それによって左右される本能に嫌気がさしている。

 生まれた時から恵まれていたとは思う。

 親は会社経営者で、俺その父の血を強く引き継いだアルファ性。アルファの中でも、生まれながらにすでに舞台もそろった成功者と言われる部類だった。

 俺を俺として見ない、親というバックとアルファというサラブレットの血。それに目をつける人種が嫌でたまらなかった。性的な目で見てくるオメガはもちろん嫌だったが、アルファに群がる人種はなにもオメガだけではなかった。ベータと言われるいわゆる一般的な性別でも俺に媚を売る。アルファだって同じだ、アルファの中でも階級があり、どうしても家柄は俺という価値に反映されるものであった。

 親が偉大だから仕方ないが、それは俺の力ではない。あくまでも俺の父と祖父、それを支える母たちがすごいのだ。子供ながらに自分を通してそのバックを見られているのは知っていた。

 その中で、ダントツで厄介なのはオメガだ。

 女だけでなく男も性的な接触を持とうとする。それにあらがえない香りというフェロモンに、アルファは実に弱かった。初めて男を抱いてしまった時はその後、吐いた。フェロモンという香りに誘われてしまい、まだ幼く自衛もできない子供だった俺は、我を失いオメガに誘われるままに強制的にラットを起こされ、男根を後ろのあなれた。

 その相手は家に出入りしていた家庭教師ひとりだった。

 親がバースにとらわれずに色んな人種から教わるといいと、あえて雇ったオメガの中でも優秀な人材だった。だからこそ俺を落とせるとでも思ったのだろうか。俺を落としてつがいになれば一生安泰、そう考えて発情期に俺に襲いかかってきた。

 事後ではあるがそれに気がついた執事が止めに入り、その後そのオメガがどうなったのかは知らない。俺の精を受けたが綺麗に流したと聞いただけだった。

 それから親も危険を察知し、まだアルファとしての目覚めも乏しい十歳の頃から対オメガ用に抑制剤を処方された。

 俺が人生で唯一、男を抱いたのは勝手に筆下ろしをされたその男オメガだけだった。童貞を捨てたあの記憶はトラウマとなり、それからはオメガには一切手を出してない。俺が相手にするのは女だけ、女でもオメガはダメだ、いつまた俺の家柄を狙ってつがいの座を狙う奴が現れるかわからない。それに、あのあらがえないフェロモンの香りは誰の匂いを嗅いでも臭くてたまらなくなった。

 アルファとしてオメガに欲情できないのは、欠点となるからと、それは家族だけの秘密になった。俺の主治医はトラウマなのだろうと言った。それでも甘いフェロモンを出さない人種のベータかアルファの女には男根はきちんと機能する。

 男はだめだ、あれ以来男を相手にするなど吐き気がしてたまらない。
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