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本編
2、運命への嫌悪
しおりを挟む中学に上がると、俺のアルファ性はすぐに露見された。
周りが早く西条家との繋がりを持ちたいと、オメガの子を持つ親たちは行動に移してきた。鉄の守りを決めているので、それが叶うことはまずなかったが、護衛がついていない学校にいる間はたびたびオメガたちが仕掛けてきた。
何度フェロモンを強制的に嗅がされ、吐いたことか。その後、俺を逆レイプしようとしたオメガたちはひとり残らず潰した。そうして粛清をしていくと、自然と俺の周りにはオメガが近寄らなくなった。たまに自分なら行けるだろうと、自信家のオメガは近づいてくるが、その頃には専属の警備を学校に配置し軽く蹴落とし家ごと潰した。
そんな騒がしい中学時代だった。
「運命?」
ある日、友人の池谷光輝が運命について話をしてきた。
「そう、司は知ってる? 俺たちアルファには絶対的相性のいいオメガが、この世界に一人いるんだって」
「はっ、何を寝ぼけたこと言っているんだ?」
中学に入ると周りはバースを意識し色めき出した。そして三年に上がるとその頃ちょうど、運命の番という内容の爆発的ヒットを生み出したドラマが放送されていた。クラスでは運命について語る者が多くなった。実際その目で見たことなどないから、おとぎ話なのだろう。
「俺も運命のオメガちゃんに会ってみたいな! あっちの相性も抜群らしいぞ! ただでさえオメガの子はいやらしくて気持ちがいいのに、最上級ってねえっ」
「あっ、そう」
全く興味がない話題だったので、そっけなく返事をした。
「司は会いたくない? そういえば司って絶対オメガと付き合わないな」
「ああ、最近ではアルファだけにしている」
「ってか、司のオメガ嫌いはちょっと有名だもんね、とくに男の子だめだし。まさか女の子でもベータまでダメになった?」
「ああ、アルファってだけで俺をATMか何かだと女たちは思っているだろ、それかステータス? だから付き合うのはそれなりに金もステータスも満足している家柄のアルファの女に絞ってる。ある程度煩わしさが省けるから」
別に金なんてケチるつもりもないが、俺をステータスとして自慢する女達には呆れていた。
「なんか、もう冷めているなぁ。でもそんな司も運命に出会ったらガラリと変わったりして!」
「ああ、ガラリともっと非道になるかもな。運命を見つけたらこの手でへし折ってやる」
光輝は引いていた。
「そんな強がっても、俺らアルファはフェロモンには逆らえない。もし出会ったら、司も運命を番にすると思う」
「俺はあのオメガの甘ったるい匂いが大嫌いなんだ。番にする前に吐く、絶対吐く、というかフェロモンレイプ仕掛けられた時は何度も吐いたしな」
「ああ、御曹司も辛いな。好きでもないオメガからそんなに強制的に仕掛けられるのも。でも運命のフェロモンは別格らしいぞ」
「そうか? だが俺は相当強力な薬を飲んでいるからフェロモンは効かない。だから一生運命なんて化け物に会うことはない」
そうだ、俺にとってオメガは憎む相手。
光輝の言葉は当てはまる。ある意味最上級……最上級に出会たくないのが運命の番だ。勝手にフェロモンを撒き散らすなど、もはや俺にとっては犯罪者に近い。
「まっ、ゆっても都市伝説並みの話だから、司がいくら望もうと運命に出会えない確率の方が高いからな。でも可哀想、アルファなのにオメガが抱けないとか。あのフェロモンに酔ってオメガを抱くのが最高なのに」
「そんなことしなくても、俺の相手はそれなりに良い体をしているから、フェロモンしか能のないオメガなんかどうでもいい。それより俺のオメガ嫌いは良いけど、フェロモンがダメなことは誰にも言うなよ」
これが世間にバレたら、世界的企業の跡取りとしては、これを理由に将来陥れられかねない。
「はいはい。それを狙って失脚させられかねないもんな。俺らアルファも生きづらい世の中だ。だけどそんなこと言い放って、いつか運命に会っても後悔するなよ」
「ああ、むしろ、運命を笑ってやるよ」
その時は本気でそう思っていた。
まさか、この言葉に後悔する日が本当に来るとは思わなかった。今の俺には全く想像ができない未来が、この先待っていることを。
本当の愛に出会える日が来ることを、俺はまだ知らない。
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