運命を知らないアルファ

riiko

文字の大きさ
3 / 67
本編

3、煩わしいオメガ

しおりを挟む

 高校に入学してすぐ、二年のオメガの女が俺に話しかけてきた。わざわざ人気のいないところを選んできたところを見ると、いつものパターンだ。

「西条君!」
「……何?」

 オメガは嫌いだが、それはオメガという性を見せる奴が嫌いなだけで、別に俺も誰彼構わず煙たがるわけではない、一応な。人としての最低限のマナーは待ち合わせている。

 普通にクラスメイトがバース関係なく話しかけてくる分には問題ない……はずだけど。そんな日は来たことなく、オメガが俺に話しかけるのはいつだって、俺がアルファだからだった。

 それでもどんな意図で話しかけてくるのか、最初はわからないから微笑みはしないが、睨みもしない。普通に人付き合いが苦手なキャラとして、答えるだけ。

「私、西条君が好きです! こんなに強いオーラ持つアルファは初めてで。私と付き合って欲しいな」
「断る」

 その女は驚いた顔をしていた。

 よっぽど自分に自信があるのだろう。この女は昨日の女か? 昨日、光輝と歩いていたところ俺を凝視するオメガの女がいると言われて、チラッと女と目が合ってしまった。その時アルファと腕を組んで一緒にいた。

 凄い目で見られた記憶もまだ浅かったから、鮮明に覚えている。こんなギラギラしたハンターの眼をする女がこの学校にはいるのか、厄介だなと。そして早速来た。

「えっ、でも私、優良物件だよ。西条君ほどの人の隣に居られるくらいの美貌もあるし!」
「それが何?」

 この女、俺のこと知らない? 俺がオメガを嫌いということ、そしてオメガとは絶対に付き合わないということも。

 手を出そうとするオメガには容赦無いと噂が立っていたはずなのに、女は高校から入ってきたのかもしれないな。内部から高校に上がるオメガは、もう俺に近づこうとしない。

「えっ! 私可愛いでしょ、すごくモテるんだよ。私が隣にいたら西条君も見栄えが良くなるし、なにより私、あっちも上手いから」
「あんた男いるだろ。そいつとその力を発揮しろよ」

 まだ食いつくのか? 面倒臭いな。というかこのレベルくらいの女なんて山ほどいる。男がいるくせに、他の男にも声をかける時点でレベルが低いのが丸わかりだ。

「私のこと知っていてくれたの? 嬉しい!! でもそれなら大丈夫! 西条君に一目惚れしちゃったから、別れたし。それ心配してくれたの? 優しいね」
「……」

 俺に声をかける女は、なんていうか。やばい奴しかいない。それはオメガに限ったことではない。だから俺は、好きと言ってきた女は選ばない。

 なんとなく目があって、ヤレる雰囲気になったらこれといった言葉を交わさずに、ホテルへ行くか聞く。体だけでいいという女じゃなければ付き合わない。そこでまずは付き合いたいという女には、期待を持たせても悪いから縁がないと言って断る。

 酷い男と罵られたこともあるが、むしろいい人だと思う。騙して体だけもらうわけじゃない。始めから俺は体だけしか欲してないと言ってあげるのだから。

 それで納得したはずなのに、俺が飽きた時には縋りついて泣く女がいた。それこそ酷い女じゃないか? 俺は付き合いたいなど言ったこともないのに、捨てるなんて酷いと。捨てたも何も拾ってもいないだろうと言いたい。面倒臭くなって、体だけの女もそれから厳選することとなった。アルファで俺と同じようにただ性欲を満たしたいだけの女に。

 アルファは男も女も性欲が強い。だからこそ性に奔走なオメガを相手にするが、オメガの相手を簡単にするにはリスクも高い。執着されてつがいにしろと言われても面倒なので、アルファの女が一番楽だった。
しおりを挟む
感想 69

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

【本編完結済】巣作り出来ないΩくん

こうらい ゆあ
BL
発情期事故で初恋の人とは番になれた。番になったはずなのに、彼は僕を愛してはくれない。 悲しくて寂しい日々もある日終わりを告げる。 心も体も壊れた僕を助けてくれたのは、『運命の番』だと言う彼で…

アルファな彼とオメガな僕。

スメラギ
BL
  ヒエラルキー最上位である特別なアルファの運命であるオメガとそのアルファのお話。  

うそつきΩのとりかえ話譚

沖弉 えぬ
BL
療養を終えた王子が都に帰還するのに合わせて開催される「番候補戦」。王子は国の将来を担うのに相応しいアルファであり番といえば当然オメガであるが、貧乏一家の財政難を救うべく、18歳のトキはアルファでありながらオメガのフリをして王子の「番候補戦」に参加する事を決める。一方王子にはとある秘密があって……。雪の積もった日に出会った紅梅色の髪の青年と都で再会を果たしたトキは、彼の助けもあってオメガたちによる候補戦に身を投じる。 舞台は和風×中華風の国セイシンで織りなす、同い年の青年たちによる旅と恋の話です。

【完結】end roll.〜あなたの最期に、俺はいましたか〜

みやの
BL
ーー……俺は、本能に殺されたかった。 自分で選び、番になった恋人を事故で亡くしたオメガ・要。 残されたのは、抜け殻みたいな体と、二度と戻らない日々への悔いだけだった。 この世界には、生涯に一度だけ「本当の番」がいる―― そう信じられていても、要はもう「運命」なんて言葉を信じることができない。 亡くした番の記憶と、本能が求める現在のあいだで引き裂かれながら、 それでも生きてしまうΩの物語。 痛くて、残酷なラブストーリー。

36.8℃

月波結
BL
高校2年生、音寧は繊細なΩ。幼馴染の秀一郎は文武両道のα。 ふたりは「番候補」として婚約を控えながら、音寧のフェロモンの影響で距離を保たなければならない。 近づけば香りが溢れ、ふたりの感情が揺れる。音寧のフェロモンは、バニラビーンズの甘い香りに例えられ、『運命の番』と言われる秀一郎の身体はそれに強く反応してしまう。 制度、家族、将来——すべてがふたりを結びつけようとする一方で、薬で抑えた想いは、触れられない手の間をすり抜けていく。 転校生の肇くんとの友情、婚約者候補としての葛藤、そして「待ってる」の一言が、ふたりの未来を静かに照らす。 36.8℃の微熱が続く日々の中で、ふたりは“運命”を選び取ることができるのか。 香りと距離、運命、そして選択の物語。

さかなのみるゆめ

ruki
BL
発情期時の事故で子供を産むことが出来なくなったオメガの佐奈はその時のアルファの相手、智明と一緒に暮らすことになった。常に優しくて穏やかな智明のことを好きになってしまった佐奈は、その時初めて智明が自分を好きではないことに気づく。佐奈の身体を傷つけてしまった責任を取るために一緒にいる智明の優しさに佐奈はいつしか苦しみを覚えていく。

人気者の幼馴染が俺の番

蒸しケーキ
BL
佐伯淳太は、中学生の時、自分がオメガだと判明するが、ある日幼馴染である成瀬恭弥はオメガが苦手という事実を耳にしてしまう。そこから淳太は恭弥と距離を置き始めるが、実は恭弥は淳太のことがずっと好きで、、、 ※「二人で過ごす発情期の話」の二人が高校生のときのお話です。どちらから読んでも問題なくお読みいただけます。二人のことが書きたくなったのでだらだらと書いていきます。お付き合い頂けましたら幸いです。

処理中です...