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本編
16、熱が引いた後には ※
しおりを挟む薬によるものだったので、一晩経てば正樹の発情の熱は引いた。
明け方に正気に戻って戸惑う正樹をもう一度抱いた。なぜ俺と一緒にいたのかわからなかったようだった。発情前後の記憶が定かではないようで、今は夢を見ているのだと思っていた。
それはそれで素直で正直な正樹が可愛かったので、そのまま夢を見ていると思わせて、夢の中ならなんでもありと、お互いに愛を囁き合って、俺は正樹が気を失うまで貪った。
「好きっ、ずっと好きでした。俺っオメガじゃなかったら、男じゃなかったらって、西条を見た日から本当は何度も思っていた……だからっこんな俺なんかの夢に出てきてくれてありがとう」
なんと、正樹は俺が好きだったと告白してきた。
そんな奇跡が起こるものなのか? これは俺の夢? 正樹の夢? もうよくわからないけど、もう、もう、嬉しいしかない!
正樹こそ、いつ俺の存在を知ったのだろう?
そしてオメガ嫌いの俺を思って、そんな気持ちを言えなかったと。夢の中なら言ってもいい? って可愛すぎる。
「俺は正樹がオメガで良かったよ、番になれる。俺の唯一だ、愛している」
「……あっ、夢だからっ、こんなに優しい西条に会えているってわかっているけど、今だけは俺のオメガ性を否定しないでくれて嬉しいっ」
なんて健気なのだろう、たまらなく愛おしい。俺はもうすでに正樹を好きという気持ちを超えて、愛してしまった。
夢の中なら、快楽に溺れさせても問題ないだろう、先ほど拒絶されたキスをしようと思った。一応正樹の了承をとりたい。
「俺はこんな可愛い正樹を前に、キスしない選択肢はないよ? それに抱きたい、愛したい、だめ? 俺のオメガになってよ」
正樹の目から涙が出てきた。ちょっと驚いた、好きなのに、俺のオメガにはなれないのか?
「そんなに嫌? 俺に抱かれるの……」
「違っ、できることなら西条に抱いてもらいたい、だけど俺のこんな醜い欲望のために、たとえ夢の中でも西条を汚したくないっ」
醜い欲望って、なんだ?
どうして自分の欲望に忠実に生きない? オメガなら目の前のアルファに縋るのが普通だろう、しかも俺を好きだと言って俺も正樹を好きだと言った。相思相愛なのに。
その後必死に説得して、キスをもらい、そしてまた抱いた。正樹の欲望を自然と口にした、まさかこの俺が男のモノを口に含む日がくるとは、夢にも思わなかったけど、自然にそうしたいと思った。
やり方なんてわからなかったが、正樹のことを思って、正樹の顔を見て、正樹の動きで、俺はその場で勉強しながら口淫を習得できた!! 今初めて、アルファのなんでもできてしまう能力にありがたさを感じた。
正樹は抵抗するも体は素直に反応して、可愛らしく俺の口の中で達した。本当に可愛すぎだろう!!
嬉しくてにやりと笑ってしまったよぉ。
ごくりと飲んだ、こ、こ、これは貴腐ワインなのか!? 一応未成年なので、まだワインは飲んだことないけど、母親が貴腐ワインが甘くてデザートみたいに美味しいと言っていたから、たとえるならそれなのかと思った。
正樹のミルクは、きっとワインよりも芳醇で濃厚でそれでいて甘い。なんてミルクを正樹は持っているんだ。俺が初めて味わって、今後は誰もこの味を知ることはない、絶対に知らせるような状況は作らない! 正樹のミルクは俺が守る。
「あっ、ば、バカ。何飲んでいるんだよ!?」
正樹が友達と話すように俺に気兼ねなく、バカって言ってくれた。バカと言われて嬉しくなったのは初めてだった。俺、もしや変態なのか?
「俺も初めて飲んだけど、正樹のは……なんていうか、最高だな。癖になりそうだ」
真っ赤な顔で恥ずかしがって、たまらなかった。
俺、死にそうだ。いや、今日死ぬのか!? 俺は死ぬのか!? ダメだ、俺は正樹が死んでからじゃなきゃ死ねない。正樹を看取るのは俺だぁ!!
もうすでに思考は二人の老後まで見えていた。俺は正樹と死ぬまで一緒にいる、そう思えた瞬間だ!
正樹という唯一の存在に出会えて、たまらなく幸せだった。
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