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本編
17、キス
しおりを挟む正樹が疲れて眠りに落ちたのを見届けてから部屋を出て、これからのことを生徒会に連絡を取り、秘密裏に全ての処理を行わせた。
そしていつか正樹と付き合えた時の為にと、実は以前から正樹用の特注ネックガードを作っておいた。それを持って正樹の眠る部屋に置いた。
夕方に正樹が目覚めたと報告を受けたので、医師の診察を終わらせてから部屋を訪れると、真っ赤な顔をした正樹がいた。
「どうした? そんな可愛い顔をして、まだ気分が優れないか?」
「えっ、いやっ、違うっ」
ん? 何か言いたいようだけど、言葉に詰まっている正樹を見ているのは楽しかった。俺は隣に座って髪を触って正樹が話す言葉を待った。驚いた顔で俺を見ている。
「西条っ」
「司……そう言ってって言ったのは覚えている?」
「あっ、でも、もう発情も収まったから」
「それ関係ある? 西条なんて他人行儀な呼び方はやめて欲しいな」
正樹はさらに戸惑った顔をした。起きていて戸惑う顔もいただきました!! マジで俺の嫁可愛い!!
「ごめん、でも俺と西条は接点ないだろ? とにかく俺を助けてくれてありがとう、それと、偶然居合わせたにしても、こんなことに付き合わせて本当にごめん。俺、学校辞めるから、目の前から消えるから、だから今回のこと、許さなくてもいい。無かったことにしてくれたら有難い」
やっぱりあの時の会話は、夢として処理されたんだ。俺は散々愛をささやいたけど、正樹の中では接点のないアルファ。そんな立ち位置に戻っていた。ひたすら正樹の可愛さにやられてしまった俺の喜びを、返せぇ――。
「……なんで、そんな話しになる?」
「あっ、都合いいよな、ほんとごめん、やっぱりフェロモンレイプは犯罪だし、おれ警察に行けばいい?」
これは何か勘違いをしている。
俺が正樹のフェロモンに当てられて、無理やり関係を強要されたとでも思っているのか? 悪いがオメガに襲われるような俺でない。正直正樹のことは抱きたくてたまらなかったから、フェロモンには逆らわなかったけどな!
「そんなこと望んでない。正樹があんなアルファに襲われなくて良かったし、俺も正樹を抱けて嬉しかった。お礼ならキスをしてもいい?」
「えっ!? な、なんで?」
「だって、現実じゃキスだけは許してくれなかったから、俺、キス好きなんだよね」
そう、正樹は夢だと思ってキスを許してくれた。今度はきちんと現実にキスをして、俺を受け入れて欲しいと思った。
「え、でも……」
「俺にお詫びしたいんじゃないの? キスで許すって言っているのに、してくれないの?」
正樹は悩ましい顔をするも、わかったって言って、俺の頬にキスをしてきた。
「これでいいだろ? だからもう忘れてっ」
うっ、可愛すぎだろう。下から見上げられた目は潤んでいて、一生懸命やっただろう? と訴えているようだった。褒めてあげたいが、でもここは心を鬼にして。
「ふざけているの? そんな子供みたいなキスで許すと思っている? まじめにやれ」
「うっ、なんで? 俺したことないし、下手だと思うし、ってか俺なんかとしなくても……」
「ふふっ、またそんなこと言っている。ほら! 早く」
正樹は今度こそ、俺の唇にチュッと軽めのキスをした。そしてすぐに真っ赤な顔して離れていく唇を俺は追いかけて、今度はこちらからキスをして、そしてすぐさま口内に舌を刷り込ませて、正樹の唇を貪った。
「んんっっっ、やっ、んんっ」
「ふっ、可愛い、ほら、もっと口開けて、そう、上手だよ」
「ふあっ、んんっっっ、もっ、くるしっ」
たまに息継ぎで唇を離してやると、思いっきり空気を吸う。その新鮮な空気も、また唇ごと吸われて苦しくなるみたいだ。息の仕方を教えてやるよりも、俺はその必死な正樹を楽しんでいた。
可愛い!! 気持ちいい! 好きな子とのキスはたまらない!!
「はあっ、はっ、もう、いいだろ! 離せよっ」
「ふふ、素直に受け入れるだけの正樹も良かったけど、必死に抵抗する姿も可愛いな」
「俺っ、男でオメガ! どうしちゃったの、フェロモン嗅いでおかしくなった? 大丈夫か?」
俺が正樹にキスをするのが、おかしいと思っているらしい。どうしてこうも伝わらないんだろう。
「ああ、おかしくなったよ。正樹のフェロモンは媚薬だ。俺を虜にした責任は取るよね?」
「と、りこ? 西条本当におかしいよ、医者に見せた方がいい」
「正樹は本当に可愛いな、好きだよ、キス、もっとして」
俺は笑って言うと、正樹が戸惑いを隠すようにムスっとしだした。それもまた可愛い、ほんとに俺はどうかしていると思う。
「っな! からかっているのか、それなら良いけど。オメガ相手にそういう言い方はよした方がいい、そんな風に迫られたら勘違いするから! 気をつけろよ」
からかわれているのはいいんだ? なんだかこの先心配だなぁ、こんなに流されやすくて優しいからあんな櫻井みたいなアルファに騙されるんだよ。
「勘違いとか酷い。俺はいつだって本気なのに」
そう言ってまた無防備な正樹にキスをした。
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