54 / 67
番外編
3、番になったご挨拶 3
しおりを挟む「正樹、今回のこと、俺は怒っている」
「……はい」
どういうこと!? 番にしちゃったよ、俺、番だよね? だって和樹さんあの時、いいって言ったじゃん!! どういうことだぁ――。
親子の空気感に入り込めず、俺はじっと見守った。正樹も親に怒られているからか、しゅんとしていつものおふざけはない、そして百合ちゃんもいつになく真剣な顔で何も言わない。そのまま流れをじっと見ることにした。
「何を怒っているかわかるか?」
「番契約したこと……ですか?」
正樹が敬語使った、めちゃくちゃ貴重な一瞬。親子で敬語って、何? 昭和!?
「はぁ、正樹は何もわかっていない。お前の一生を左右することだから最後はお前が判断するのが正しいけど、仮にもお前は未成年で俺に養ってもらっているのを忘れたのか、その俺になんの相談もなく契約しようとした。そしてその相手が、お前を陥れたあの櫻井君だったんだろ。俺はその話を聞いた時ぞっとした、結局は司君と契約したから良かったものを」
「う……」
「もし仮にお前がそこまで櫻井君を好きになっていたのなら、周りを騙して番になるんじゃなくて、俺たち親をまずは説得するくらいの本気を見せるべきだった、まぁ本気じゃなくてくだらない逃げからくる理由だったみたいだけどな」
俺が、俺が運命を拒絶したから、正樹はその結末を選んだ。全て俺の責任だ!!
「か、和樹さん!! それは俺が、俺のせいなんです」
「君は黙っていなさい。これは親として息子を教育しているんだ、君の話は君から前に聞いた。でもおかしいと思わないか? 正樹自身のことを正樹以外の人から聞くなんて。俺たち親子はそんな軽薄な関係だったのか!?」
「ご、ごめんなさい!! 俺、あの時どうかしていた。どうしても司と離れたくなくて、あの時は番ができたら、このまま司の側に友達としてでもずっと、一緒にいられるってそればっかり思っていて、その時ちょうど櫻井が契約してくれるって言ったから、それに甘えて。でも父さんたちに言ったら反対されると思ったし、説得する時間も無くて……」
バチ――ン!!
「ま、正樹っ!!」
ええ!! 俺の正樹の頬が、俺の正樹の父親の手でぶたれた!? どうしよう、どうしよう。俺はすぐに正樹を抱えて持っていた冷えタオルをほほにあてた。
正樹は呆然としていたが、すぐに俺を見た。
「大丈夫だ、司。ありがとう」
「でもっ」
「父さん、母さん、本当にごめんなさい。俺は二人を裏切ったし、司も裏切った。それなのに司は諦めずに俺を番にしてくれました。事後報告で申し訳ありませんが、二人を認めてください!! お願いします!」
正樹が和樹さんに頭を下げた。俺もすかさず正樹を抱えて頭を下げた。
「二人とも頭をあげなさい、その件に関しては認めているんだよ。俺は今そのことを言っているんじゃない。お前がお前の利益だけを考えた結果、一人の若者を傷つけた。それがどういうことかわかるね?」
「あ……」
「櫻井君は初めこそ卑怯な真似をしてお前を陥れた。もちろんそのことは俺の中で何の解決もしていないし、どんなに謝罪されても許される行為じゃなかった。でも、今回はお前が卑怯な真似をして彼を利用したんだ。あの子だってお前たちと同じ16歳の子供だよ、そんな子に一生を誓わせて、それで直前で裏切ったんだ。その罪の重さをお前はもっと真剣に考えるべきだった」
「……はい」
149
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
【本編完結済】巣作り出来ないΩくん
こうらい ゆあ
BL
発情期事故で初恋の人とは番になれた。番になったはずなのに、彼は僕を愛してはくれない。
悲しくて寂しい日々もある日終わりを告げる。
心も体も壊れた僕を助けてくれたのは、『運命の番』だと言う彼で…
【完結】end roll.〜あなたの最期に、俺はいましたか〜
みやの
BL
ーー……俺は、本能に殺されたかった。
自分で選び、番になった恋人を事故で亡くしたオメガ・要。
残されたのは、抜け殻みたいな体と、二度と戻らない日々への悔いだけだった。
この世界には、生涯に一度だけ「本当の番」がいる――
そう信じられていても、要はもう「運命」なんて言葉を信じることができない。
亡くした番の記憶と、本能が求める現在のあいだで引き裂かれながら、
それでも生きてしまうΩの物語。
痛くて、残酷なラブストーリー。
36.8℃
月波結
BL
高校2年生、音寧は繊細なΩ。幼馴染の秀一郎は文武両道のα。
ふたりは「番候補」として婚約を控えながら、音寧のフェロモンの影響で距離を保たなければならない。
近づけば香りが溢れ、ふたりの感情が揺れる。音寧のフェロモンは、バニラビーンズの甘い香りに例えられ、『運命の番』と言われる秀一郎の身体はそれに強く反応してしまう。
制度、家族、将来——すべてがふたりを結びつけようとする一方で、薬で抑えた想いは、触れられない手の間をすり抜けていく。
転校生の肇くんとの友情、婚約者候補としての葛藤、そして「待ってる」の一言が、ふたりの未来を静かに照らす。
36.8℃の微熱が続く日々の中で、ふたりは“運命”を選び取ることができるのか。
香りと距離、運命、そして選択の物語。
うそつきΩのとりかえ話譚
沖弉 えぬ
BL
療養を終えた王子が都に帰還するのに合わせて開催される「番候補戦」。王子は国の将来を担うのに相応しいアルファであり番といえば当然オメガであるが、貧乏一家の財政難を救うべく、18歳のトキはアルファでありながらオメガのフリをして王子の「番候補戦」に参加する事を決める。一方王子にはとある秘密があって……。雪の積もった日に出会った紅梅色の髪の青年と都で再会を果たしたトキは、彼の助けもあってオメガたちによる候補戦に身を投じる。
舞台は和風×中華風の国セイシンで織りなす、同い年の青年たちによる旅と恋の話です。
人生2度目に愛した人は奪われた番の息子でした
Q矢(Q.➽)
BL
幼馴染みだったαの村上 陽司と早くに番になっていた南井 義希は、村上に運命の番が現れた事から、自然解除となり呆気なく捨てられた。
そして時が経ち、アラフォー会社員になった南井の前に現れたのは、南井の"運命"の相手・大学生の村上 和志だった。同じビルの別会社のインターン生である彼は、フェロモンの残り香から南井の存在に気づき、探していたのだという。
「僕の全ては運命の人に捧げると決めていた」
と嬉しそうに語る和志。
だが年齢差や、過去の苦い経験の事もあり、"運命"を受け入れられない南井はやんわりと和志を拒否しようと考える。
ところが、意外にも甘え上手な和志の一途さに絆され、つき合う事に。
だが実は、村上は南井にとって、あまりにも因縁のありすぎる相手だった――。
自身のトラウマから"運命"という言葉を憎むアラフォー男性オメガと、まっすぐに"運命"を求め焦がれる20歳の男性アルファが、2人の間にある因縁を越えて結ばれるまで。
◆主人公
南井 義希 (みない よしき) 38 Ω (受)
スーツの似合う細身の美形。 仕事が出来て職場での人望厚し。
番を自然解除になった過去があり、恋愛感情は枯れている。
◆主人公に惹かれ口説き落とす歳下君
村上 和志 (むらかみ かずし)20 α (攻)
高身長 黒髪黒目の清潔感溢れる、素直で一途なイケメン大学生。 " 運命の番"に憧れを抱いている。複雑な事情を抱えており、祖父母を親代わりとして育つ。
◆主人公の元番
村上 陽司 (むらかみ ようじ) 38 α
半端ないほどやらかしている…。
【完結】僕の匂いだけがわかるイケメン美食家αにおいしく頂かれてしまいそうです
grotta
BL
【嗅覚を失った美食家α×親に勝手に婚約者を決められたΩのすれ違いグルメオメガバース】
会社員の夕希はブログを書きながら美食コラムニストを目指すスイーツ男子。αが嫌いで、Ωなのを隠しβのフリをして生きてきた。
最近グルメ仲間に恋人ができてしまい一人寂しくホテルでケーキを食べていると、憧れの美食評論家鷲尾隼一と出会う。彼は超美形な上にα嫌いの夕希でもつい心が揺れてしまうほどいい香りのフェロモンを漂わせていた。
夕希は彼が現在嗅覚を失っていること、それなのになぜか夕希の匂いだけがわかることを聞かされる。そして隼一は自分の代わりに夕希に食レポのゴーストライターをしてほしいと依頼してきた。
協力すれば美味しいものを食べさせてくれると言う隼一。しかも出版関係者に紹介しても良いと言われて舞い上がった夕希は彼の依頼を受ける。
そんな中、母からアルファ男性の見合い写真が送られてきて気分は急降下。
見合い=28歳の誕生日までというタイムリミットがある状況で夕希は隼一のゴーストライターを務める。
一緒に過ごしているうちにαにしては優しく誠実な隼一に心を開いていく夕希。そして隼一の家でヒートを起こしてしまい、体の関係を結んでしまう。見合いを控えているため隼一と決別しようと思う夕希に対し、逆に猛烈に甘くなる隼一。
しかしあるきっかけから隼一には最初からΩと寝る目的があったと知ってしまい――?
【受】早瀬夕希(27歳)…βと偽るΩ、コラムニストを目指すスイーツ男子。α嫌いなのに母親にαとの見合いを決められている。
【攻】鷲尾準一(32歳)…黒髪美形α、クールで辛口な美食評論家兼コラムニスト。現在嗅覚異常に悩まされている。
※東京のデートスポットでスパダリに美味しいもの食べさせてもらっていちゃつく話です♡
※第10回BL小説大賞に参加しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる