運命を知らないアルファ

riiko

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番外編

4、番になったご挨拶 4

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 和樹さんの言うことは正しい。

 俺たちは紆余曲折してつがいになれてハッピーエンドを迎えられた。でも櫻井は結論から見たら、ただの当て馬だった。それに関しては正樹は酷い奴だと思ったけど、それ以上に俺は正樹を手に入れられた喜びが勝って、櫻井の、捨てられた方の気持ちまでは頭が回らなかった。

 あいつ大丈夫かな。アルファと言えど俺たちはまだ十六歳、周りにはアルファは何でもできて人生勝ち組だって思われがちだけど、まぁ実際にそうだけど、でも悩みがないわけじゃない。俺だって全然完璧じゃないし、愛する人のことに関してはアルファはとても弱い生き物だって、今回のことで実感した。

「お前の決断は、お前自身のものだ、だけどそれによって人を傷つけるのは違う。起こしてしまったことは戻らない。今回のことでそれを学んで、二度と人をおとしいれるなんてことを考えるんじゃない。たとえそう考えずにやった事でも、結果が同じなら、それは人を傷つけたと同じだ。わかったか?」
「はい」
「櫻井君は友達だったのだろう、だからそんな大事な決断を、大事なことを相談できた。それは素晴らしいことだけど、もう二度と間違えるな。人を傷つける人間になってはいけないよ、彼とのことはきちんとこれから清算しなさい」
「はい」

 和樹さんは、正樹を抱き寄せて、胸に抱えた。正樹は和樹さんの胸で泣いていた。俺は、俺は、まだそんな二人の間に入れなかった。やはり、和樹さんは偉大だなって、思った。そんな人を義理の父親にできるなんて俺は幸せだな、ちょっと涙ぐんでいると、百合子さんがハンカチをそっと差し出してくれた。

「さあ、正樹の頬が腫れたら大変だ。百合ちゃん悪いけど、氷持ってきてくれる?」
「うん、すぐ持ってくるね、ぐすっ」

 百合子さんも涙でてるし、和樹さんも、正樹も、俺も泣いている。

「ううっ、父さん!!」
「ほらほら、正樹、手を挙げて悪かったな。もうお前に手を出させないでくれよ」
「うん、うん、もう、もう絶対しない!!」
「よしよし」

 ちょっと、最高じゃない? この家族。もらい泣きが止まらないぜぇ!!

 その後、正樹は一人櫻井に謝りに行ったけど、そこでもひと悶着だった、正樹の能力はある意味特殊過ぎて読めない!! チョロレベルが最大限にレベルアップしていたのには驚きの連続だったよぉ。つがいになったところで安心できないのが、正樹である。特殊オメガをつがいに持つ俺が、これからももっと頑張らなければ!!

 というわけで無事に俺は真山家に受け入れてもらえて、そのあとは、まあ最高に幸せしかない家庭を築くことができた。それはまた別のお話だ!!


 俺は、真山家が好きだぁぁぁ――。 

 俺は真山正樹を永遠に愛しているぅ――。


 ***

 正樹と櫻井君のその後は正樹側視点のストーリー「運命を知っているオメガ」番外編~つがいになったその後~に掲載しております。良かったらそちらも合わせてお楽しみくださいませ。
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