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番外編
13、ハッピーエンドのその先 4
しおりを挟む今日は待ちに待った俺たちの結婚式。
隣には美しく着飾った、俺の最愛の人……正樹がいる。
友達や両親、そして俺の家の都合で会社関係が多く集まっている。式と披露宴は仕方ないにしても二次会は親しい人だけで別に用意してある。
今は式の前、準備が終わって参列者たちが受付をしている頃だろう。二人だけのひと時、独身最後の二人の時間。俺は正樹に向き合って手を握った。
「正樹、愛している。俺と番になってくれてありがとう。そして俺と結婚してくれてありがとう」
「おう! 俺のこと諦めずにずっと支えてくれて、俺こそありがとう。司、愛している」
二人笑いあって、キスをした。感極まって二人ともほほには涙が流れてくるけど、そんなことは気にならないくらいお互いの唇をむさぼっていた。
部屋にノックの音がするも、俺たちは止まらずにキスを繰り返していると、ドアが開く音とともに親父の呆れ声が聞こえて、キスを中断せざる負えなくなった。
神聖な口づけだったな。
「お二人さん! そろそろ時間だぞ」
「式の前に、正くんを泣かせてどうするの。っていうか司、あなたがボロ泣きじゃないの、ははっ、マジで私の息子? 人が変わり過ぎよ」
「ああ、正樹のお陰で司は幸せそうだな」
親父たちの言葉に、俺たちは涙を流して笑っていた。
「正樹、しっかりしなさい。これからは司君を支えるのはお前の役目なんだぞ」
「そうよ!! 正樹。次はスパダリアルファあたふた子育て編という、ママの三作目創作意欲を掻き立てるような新婚生活を送るのに、涙は似合わないわ、ぐすっ、ぐすんっ」
「百合ちゃん、ほら、可愛い顔が涙でもっと可愛くなるから、泣かないでね、司君、これからも正樹をよろしく頼むよ」
今度は和樹さんと百合ちゃんが仲良く手を繋いで俺たちのところに来た。ちなみに百合ちゃんの二作目も飛ぶように売れて、今は三作目を創作中だという。凄いな!! 百合ちゃんに協力をしたいところだけど、まだ新婚で正樹と二人きりを楽しみたいから、子供は大学を卒業するまでは作らないと二人で話し合った。
物語の方が先にできそうだな。
「はい! 命にかけて正樹を守ります!! 幸せにします」
「バ――カ! 命かけるな、命は大事にしろ、俺より先に死ぬな!」
亭主関白キタ――!!
「うん!! 正樹が死んだ後にきちんと正樹を看取ってから死ぬからね!」
「それでいい」
みんな笑っている、今は式の前、親族だけでいられる時間。
「あらあら、さっそく正くんが主導権握っているのね、その方が幸せよ。正くん、司はこんなんだけど一応アルファとしては優秀に育ててあるから、これからもこの子をよろしくね」
「はい!! こいつの面倒は一生かけて俺が見ますから安心してください」
「はは、それは凄く心強いな、正樹、ありがとう。司を選んでくれて」
親父が正樹の頭を撫でて、また正樹は顔を赤くした。ホント親父の顔に弱いんだから。そして、俺たち二人は神聖な場所で今日、大勢の人の前で誓い合った。
俺たちは一生離れない、死が二人を別つまで、ずっと一緒にいようねって誓い合った。
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