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イギリス編
14、最後の撮影
しおりを挟む宣言通り、僕はセフレの一人と前日にベッドを共にして、体中にキスマークと首元には一つ噛み跡がある。
普段モデルをしているので、絶対に跡をつけるなとセフレたちには言っているから、昨夜の相手は相当喜んだ。興奮しすぎで若干腰回りも痛いけど、仕方ない。興奮させたのは僕なんだから。
でもどうしてだろう。彼と寝た時、類の顔が思い浮かんでしまった。類なら僕をどう攻め立てるのだろうとか、キスをされても類のキスの方が気持ちが良かったなとか、ほとんど集中力できなくて、そんな僕に気づいた彼は必要以上に僕を貪ってきた。こんなにスッキリしないセックスは初めてだった。
僕の中であの過去のトラウマが、少し浄化されたのかもしれない。あの夜、類に抱きしめてもらったことでなんとなく心が軽くなった。
「おはようございま――す」
「kaiおはよう。大丈夫? その色気は半端ないわ」
「はは、ビリーのお題のせいだよ」
「体も辛そうね……」
ヘアメイクのビアンカと談笑をしていると、類も到着した。
笑顔でスタジオ入りしてきた類の周りはキラキラとしていた。さすが王子様、周りの雰囲気も一瞬で色気のあるものに変わったよ。僕の色気は男性にしか通用しないけど、類のそれは女性陣を一瞬でとりこにしていた。
「ルイ――おはよう‼」
「あっkai‼ うっ、なにその香り……」
類が近づいてきたから挨拶したら、笑顔の類は一瞬で真顔になって、思いっきり鼻を抑えて僕から離れた。
「えっ、なんか匂う?」
「全然わからないわ、なんだろ」
僕は自分をクンクン嗅いだけどわからなかった。今日は香水もつけてないし、ヘアスプレーもさほど匂わないけど……。ビアンカも不思議そうな顔して僕と顔を合わせた。
「ごめん、俺今日は無理みたい、その執着臭の染みついているkaiには触れない……」
「えっと……どういうこと?」
「kaiについたアルファのフェロモンだよ。そんな匂い付けられてんのに、相手は彼氏じゃないの? だとしたらやばいよ、それ。威嚇も激しいし、独占欲丸出しだから」
「えっ」
なに、その怖い話。昨日の相手はいつもの中の一人で、独占欲なんてあるタイプじゃないし、初めからセフレだって了承を取れたから続いているのに。そもそも独占欲強いタイプとは一晩でも過ごさないと決めている。以前執着されて困ったことがあったから、それ以来寝る相手は慎重に選んできているはずなのに。
僕たちが揉めていて、撮影どころじゃなくなる雰囲気だった。スタッフは全員ベータだからアルファの香りがわからない、そんな中で困ったアシスタントが、急遽ビリーに連絡を取ってその話をしたみたい。ビリーは今日こちらに来られないから、他のアルファに確認取って欲しいって言われて、撮影スタッフが隣のスタジオで撮影に入っているモデルのアルファを連れてきた、僕は会ったことのないアルファだったけど、その人が僕を見て顔をしかめた。
「まさかあのkaiとこんな風に会えるなんて驚きだけど、それよりもその香りに驚きだね。アルファとのペア撮影の日にそんなフェロモン付けてきたら迷惑だよ」
「ど、どういうこと?」
「kaiほどの人がそんなのもわからないの? kaiってオメガでしょ。アルファを舐めない方がいいよ、そのフェロモンは俺以外が近づくなっていう威嚇だから、よっぽど彼氏に好かれているというか執着されているんだね、そんなんじゃ他のアルファはしばらく近寄れないから」
オメガと思われることは多々あるからそこは否定しなかった、このアルファはラノキリア専属ではないから、僕の情報は言えない。ましてやセフレでもないし。僕が驚いているとその彼は話を続けた。
「正直、俺もkaiに会えて興奮するはずなのに、気分が悪くなる一方だよ? 彼氏にほどほどにって言った方がいいね、じゃああまりここにいると体調悪くなりそうだから、俺戻るね! kai会えて光栄だけど、そのフェロモンが取れたら改めて挨拶する、じゃ!」
「あ、ありがとう」
隣から呼び出されて僕に会うも、辛いフェロモンのせいで気分悪くさせたという、なんとも迷惑なフェロモン野郎になってしまった僕だった。あの昨夜の男とはもう縁を切らなければ‼ 僕が一番嫌なのは、仕事に穴をあけること。協力してもらうはずが、とんだ迷惑行為をしでかしてくれたものだ。
「ビリーからルイ以外のアルファからの確認が取れて続行不可能なら、撮影は延期って指示だから今日は残念だけどお開きね! あっkaiはその色気もったいないからピン撮影に入れって、ビリーから。だから残ってね、ルイ悪いけどまた後日頼めないかしら?」
「いいよ、今日はごめん。俺役に立たなくて」
「ルイが悪いわけじゃないし、ビリーもkaiにそうするように指示したのは自分だから、相手が悪かっただけってことでお咎めなしよ。さ‼ 気を取り直していこう」
僕が近寄ると類は気分が悪くなりそうだから、僕からは何も言えず類はその場を去っていった。僕は罪悪感が溢れてきてしまい、その後の撮影はスタッフが僕のその表情に萌えてなんだかんだとめちゃくちゃいい画が取れたみたいだった。
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