25 / 63
イギリス編
25、運命と出会った日 ※
しおりを挟む「海斗‼ 待って!」
えっ、なんで。
類は僕がいることに気がついた? その場を去ろうとした足を止めると、オメガを抱きしめながら、僕の方をしっかりと見つめる最愛の人がいた。息が上がっている、きっと彼もラットを。
「お願い! こっち来て、この子を助けて」
「えっ、どういうこと……」
「海斗、お願い。俺を捨てないで……」
何が起きているの? 君たちは今、運命の出会いを果たして、これから本能のままに番になるんじゃないの。捨てるのはいつだってアルファ側なのに……でも類は珍しく汗もかいていて必死に僕に訴える。
「海斗ォ‼」
「る、類‼」
僕は考えるよりも、彼のところに走っていった。周りがざわざわする、運命の二人のところに行く男、そして僕という人物はあまりに世間に知られすぎている。
僕は類の元に行くと抱きしめられた、その時にサングラスも帽子も外れた。そして密着してわかるけど、類は興奮している。オメガの子はもうヒートに入っているようで、何もできずうずくまっている。首にはネックガード、類は彼を抱きしめながら僕にキスをした。唾液を絡めるとても濃厚なもの。
「愛してる……海斗、俺、抑制剤打つから、この子をお願い。抱きしめて俺のフェロモンで少し覆ったけど、もう無理そう。周りがこの子を襲わないように、すぐに緊急抑制剤打たないと、持っているか聞いて、打ってあげて」
それで抱きしめていたの? 類が苦しそうにしている。きっと、この子を襲いたい本能を抑えて、そしてこの子を守ったんだ。
「わ、わかった」
離れた唇からは銀糸が伸びる。
キス一つで、僕はさっきまでの光景も忘れて心が楽になった。瞬時に理解したことは、類は運命に出会っても抗ったということ。周りに人がいるけど、類はカバンから注射を出して腕に打っていた。そして僕はその子を、オメガの男の子を預かり、彼に聞く。
「君、緊急抑制剤持っている?」
「はあ、はっ、え……kai!?」
「そうだよ、君は今、道端でヒートを起こしている。まずはそれを沈めてから話をしないと」
「あっ、もってない。僕、初めてのヒートみたいで。お願い、kai助けて……」
「大丈夫、君を守ってあげるから」
まだ若い子だと思ったが、未発情の子だったらしい。それじゃあ本能に逆らうことも難しいだろう。
「海斗、ここじゃまずい。ヒート対応のホテルに連れて行って、その子の保護者呼ぼう。ちょっとキスさせて」
「えっ、んんん」
類がいつもよりも激しめにキスをして、僕に類の唾液を送ってきた。いつもの通り飲もうとしたら、類が唇を離して僕の口に手を当てた。
「唾液は飲まないでためて。ヒートを収めるのはアルファの体液がてっとり早いけど、俺はその子に触れられない。……海斗、俺以外とキスするのは嫌だろうけど、人命救助だと思って口移しでその子に俺の唾液入れて」
僕は口を閉じたまま頷いて、その子にキスをした。その子は驚いた顔もするも、すぐにうっとりした表情になって僕に縋ってきた。それを見て安心した、類をよこせて言われても応じられないから。こんな状況に僕を呼んだ類は、もう覚悟を決めているとわかったんだ。
「んんん、んん、はっ、……kai、もっと、もっと頂戴」
「これくらいで我慢してね、あれ? 気を失っちゃった?」
正気を戻しつつある類がタクシーを手配して、僕達はその子を抱えて車に乗った。その時、周りはカメラを向けていたりして、ざわざわしていた。僕はそれなりに顔が知られているし、類だって僕と一緒にモデル活動をしていたんだ。僕の熱愛相手というのは知られているはず。
そこに、ヒートを起こしたオメガ。
僕と類のキス、僕とオメガの子のキス。何を囁かれるのか想像がつくような気もするが、この場を収めないと。
「急にヒートになった子を運ぶだけだから、みんなSNSとかにアップしないでね。この子はこれから保護者を呼んで助けるから、心配しないで」
周りがわあっとなったが、すぐにタクシーに乗ってその場を去った。
類が懇意にしているホテルに、その子を連れ込みベッドに寝かすと、すぐに類が僕にキスをしてきた。性急すぎて、いつになく余裕がない。
これが……これがラット?
人生で見るのは二度目、一度目は僕の弟に向けられた目を僕は唖然と見るしかできなかった。でも今は、今は目の前のアルファはその目を僕に向けて、僕だけを求めている。
「ちっ、余計な味がする。海斗だけを味わいたい、お願い、口ゆすいでその子の味を消してきて。間違えないで、俺が求めているのは海斗だけだから、アルファだから勝手にラットは起こるけど、心も体も俺を満たすのはいつだって海斗だけ。愛してる、もう逃げないで」
「う、うん」
「待って、少しだけ海斗を頂戴」
「えっ!?」
類は僕のズボンを下ろして、僕のまだなんの反応もしていないソレを口に含んだ。
「あ、あぁ、いきなり、あっ、あん」
「ごめん、海斗を味わいたい。いきなりは後ろに挿入いらないから、これだけでも飲ませて」
「あ、ああ‼! イクっ」
「んん、ごくんっ」
吸われ慣れている類の口に、こんな状況なのにあっけなくイかされて、僕は欲望を類の口の中に吐き出した。
「美味しい、やっぱり海斗だけが俺を満たすことができる」
「はっ、はぁっ、あっ、類っ、ぐすん」
「ごめん、急に嫌だったよな。ほんと無理やりごめん」
「そうじゃない、そうじゃなくて、嬉しい。僕、二人を見て辛かったから……」
「愛してる、安心して。俺はどこにも行かない」
「うん」
僕があの時、一瞬でも類を諦めたのに気がついたのだろう。でも責めないで僕に愛を囁いてくれる。僕はとにかくこの場を収めようと思って、類がズボンを履かせてくれたので、急いで口をゆすぎ、その子の様子を見に行った。
その間に類が医者を手配してくれたので、医者があの子を見に来てくれていた。抑制剤も効いてきたとのことだった。
「はっ、あっ、いやいやっ、僕、運命なんて会いたくない‼」
「大丈夫ですよ。あのアルファにはちゃんと恋人がいて、あなたをどうこうしようと思ってここに連れてきたんじゃないですから」
目が覚めたその子は暴れた、そして運命と言った。やっぱり二人は運命だったんだ。そして類同様、運命を拒絶している。
「はっ、いやっ! あっ‼ kai助けて‼」
僕を見たその子は、きっと僕という存在をメディアで知っていて、唯一ここで顔を見たことある人として安心したのだろう。僕は慌ててその子に駆け寄った。
「大丈夫だよ、怖いことはない。さっきのアルファは、君の運命は……僕の彼氏だ。だから君を番にすることは無い」
「えっ」
「安心した? それとも残念だった?」
僕は意地悪な聞き方をしてしまった。いまだこの子の発情が、僕には脅威だった。類を信じていないわけじゃないけど、運命を差し出せとオメガの子に言われたら辛い。
「ちがうっ、僕も彼氏がいて、その人しか番になりたくないの。だから良かった。でも……kaiの彼氏が、他の人の運命とか、嫌でしょ」
僕はこんな状況でも、類を縛ることしか考えていないのに、この子は……。
「君は今、そんなこと気にしなくていいよ。それより君の保護者かその彼氏に連絡取りたいんだけど、取れる?」
「う、うん」
僕は運命を勘違いしていたのかもしれない。類とこの子の抗う姿を目の当たりにして、そう初めて思った。
68
あなたにおすすめの小説
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
僕がそばにいる理由
腐男子ミルク
BL
佐藤裕貴はΩとして生まれた21歳の男性。αの夫と結婚し、表向きは穏やかな夫婦生活を送っているが、その実態は不完全なものだった。夫は裕貴を愛していると口にしながらも、家事や家庭の負担はすべて裕貴に押し付け、自分は何もしない。それでいて、裕貴が他の誰かと関わることには異常なほど敏感で束縛が激しい。性的な関係もないまま、裕貴は愛情とは何か、本当に満たされるとはどういうことかを見失いつつあった。
そんな中、裕貴の職場に新人看護師・宮野歩夢が配属される。歩夢は裕貴がΩであることを本能的に察しながらも、その事実を意に介さず、ただ一人の人間として接してくれるαだった。歩夢の純粋な優しさと、裕貴をありのまま受け入れる態度に触れた裕貴は、心の奥底にしまい込んでいた孤独と向き合わざるを得なくなる。歩夢と過ごす時間を重ねるうちに、彼の存在が裕貴にとって特別なものとなっていくのを感じていた。
しかし、裕貴は既婚者であり、夫との関係や社会的な立場に縛られている。愛情、義務、そしてΩとしての本能――複雑に絡み合う感情の中で、裕貴は自分にとって「真実の幸せ」とは何なのか、そしてその幸せを追い求める覚悟があるのかを問い始める。
束縛の中で見失っていた自分を取り戻し、裕貴が選び取る未来とは――。
愛と本能、自由と束縛が交錯するオメガバースの物語。
六年目の恋、もう一度手をつなぐ
高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。
順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。
「もう、おればっかりが好きなんやろか?」
馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。
そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。
嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き……
「そっちがその気なら、もういい!」
堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……?
倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
-----------------------------------------
0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる