運命を知りたくないベータ

riiko

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イギリス編

28、エピローグ

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「あっ、手紙だよ」
「へぇ、あいつもマメだな。こないだの返事かな?」

 僕はソファに座っている類のところに手紙を持って行って隣に座ると、類は僕の肩に手を回してキスをしてきた。

 あいつというのは、日本で類と関係のあったようななかったようなオメガ。でも彼のおかげで僕は類と出会えた、僕たちの出会いへの最大の貢献者だった。僕は会ったことないけどね!

「んん、それ開けないの?」
「ああ、そうだね。一緒に見よう」
「いいの?」
「だって、手紙も写真も海斗と一緒に送ったじゃん。その返事だから海斗も一緒に見るべきでしょ」

 僕はそれを聞いてほほ笑んだ。

 類は僕に何一つ隠し事をしないし、むしろすべてのことを共有したいみたいだった。プロポーズされて婚約もして、類は前よりももっと僕を求めるようになった。前は一応抑えていたって……どの辺が? そう思わなくもないけど、僕が離れていかないように強気に出られなかったんだってさ、やっぱりその辺のアルファと違う。とっても優しいし、僕を優先してくれる。

 あの時の結婚指輪の撮影は、等身大の僕たちが上手く撮れたってカメラマンが写真をくれたんだ。アルファでもオメガでもない僕。そして僕の恋しい人である類との最上の一枚。それを送った。僕は会った事もないオメガに、ベータだって類を手に入れられたという想いを伝えたかった、要は牽制だ。類は手紙を書いていたけどさすがにそこまでは僕は読んでいない。

「どれどれ、ぶはっ‼ まさかの旦那からの手紙もある。しかも長い、どれだけ嫉妬深いんだよ。呪いの手紙か!? 海斗が読んでくれない?」
「ふふ、じゃあ僕が読んであげるね」

『あの時は悪かった。俺は悪くないが、俺の最愛がしでかしたことは俺の責任だ。

 お前が幸せなのは伝わった、良かった。俺がそう思ったのはお前が幸せだからじゃなくて、お前とその恋人の表情を見て、俺の敵ではないと確信が取れたからだ。

 それと驚いたが、恋人はモデルのkaiカイだろ? 俺の最愛の恋人は、モデルという存在自体を知らないから安心しろ、いやさすがにモデルは知っている。ただ芸能人とかモデルが誰だということまで知らない、世間に疎い奴だ、もちろんそこも可愛い。kaiカイは性別不詳モデルなんだろ? ベータということも誰にも言わないから安心しろ、それにしても、お前の目……やばいな。

 を見る時と全然違ったぞ、本来の愛情が出せているみたいで、俺としても一安心だ。あの時のお前たちは間違い過ぎだ、送られてきた写真を見て、そう思えた。とにかく良かった。俺の愛する人も、そのだらけきった顔を見て安心していたようだったし、写真を見て女神のように微笑むつがいの姿もとても可愛くてたまらない、お前ごときのことで可愛さが出てきたのは大変腹立たしいが、俺のつがいの優しさに免じて許す』

 一息に読んで疲れた。なんだ? これって本当にアルファが書いているの? 要点が良くわからないし、ほぼ惚気だった。僕はいったん読むのをやめて類に向き合った。

「な、長いね……この手紙。このアルファってネチネチしている男なの? しかもツガイ、ツガイってうるさいね」
「ネチネチ……してなかった気がするけど、つがいになれたことがいまだに嬉しいんだな。それにつがいを得て、本当の意味で自分を出せてきたのかもしれないね、俺みたいに」

 そして類は僕にキスをする、もちろん僕もそのキスに答えるし、類の手は僕の服の中の胸の突起を触ってきた。こらこら、相変わらずおっぱい好きだな、僕の彼氏は。僕はその手を抑えて話を続けた。

「でも、この手紙読むと、このネチ男は鋭い目をしているね。類が僕を見る目は情熱的で、他の誰にも見せていないんもんね! カメラマンたちがこの写真は凄いって言うのがわかるんだもん、類の目がやばいって意味でね」

 そして類は僕の頬にキスをした。僕は続きを読んだ。

『お前の幸せそうな写真を見て、涙を流して喜んでいるつがいがいる。お前ごときが俺のつがいの涙を出させたのは、恨みがたいが仕方ない。喜んで泣くという可愛いさが見られたから、良しとしよう。

 それにわかると思うが、あいつは俺を愛している。毎日毎日好きとか愛しているとか言われるんだ、いいだろう! 

 俺の方がその倍に愛を伝えているけどな、櫻井もその王子顔で美人を必死で捕まえとけ』

 ネチ男は何を言っているんだ? 

「僕はむしろ類を捕まえとくので、いっぱいいっぱいなのにね。このネチ男、類がどれだけモテるか知らないの?」
「海斗、愛してる。こいつにはわかっているんだと思う、俺が海斗に必死なのを。つがいのいるアルファだよ? その男がそう言うんだ。それは俺が海斗をつがいだと思っているとバレている証拠だ」
つがい? 僕はベータだよ」
「俺にとっては海斗の性別がなんであろうと、唯一無二だよ。それをつがいというんじゃないの? 海斗は違うの?」

 僕は涙を流して類に抱きついた。

「好き、ほんとに好きだよ。愛してる、世間がなんと言おうと、僕のつがいは類だ」
「そうだよ、俺を安心させて? それから自信持って俺は海斗のモノだって言ってね。そう言われるのは嬉しいしかないから!」
「うん! 類は僕のモノで、僕も類のモノ。唯一無二だよ」

 僕の涙をキスで拭うと、そのまま唇に下がり濃厚なキスが始まった。

「んっんっ、はぁ、気持ちいっ」
「キス、これからも、っふ、たくさんしようね」
「うん、んちゅっ、んん、あっ、続き読んじゃお」
「え――っ、この流れはこのままいたすんじゃないのぉ?」
「ふふっ、読み終わったらしよう」

 類はぶすっとしたけど、今度は僕を後ろから抱きしめた状態に座り直した。

『日本で式を挙げるなら、俺の家のホテルを使え。kaiカイにふさわしい最高級の会場を用意しておく。詳しい日時は早めに知らせろ。うちのホテルは超人気でそう簡単には使えないんだからな、お前は俺に感謝しろ。

 そして目の前で、kaiカイに永遠の愛を誓え、俺のつがいにお前の幸せを見せて安心させたい。いや、今も相思相愛で安心しきってはいるが、心残りはなくしてやりたいんだ、だからよろしくな‼ 

 とにかくこの手紙見たら連絡をよこせ、すぐに結婚式場抑えてやる、お前レベルのアルファは、kaiカイを早く世間に自分の嫁だと知らしめたほうがいい。

 もう誰にも愛する人を奪われるなよ、というか愛する人を間違えるなよ!』

 読み終えたところで、僕と類は顔を合わせて笑った。

「何、このアルファ。凄く強烈だね、おもしろい」
「そうだな、こんなくだけた奴じゃなかったのに、運命とつがいになって、いい意味でバカになったみたいで俺も嬉しいよ。じゃ、次はこっちの手紙も読んで?」
「えっ、それも僕が読んじゃっていいの?」
「俺は、海斗に何も隠したくないし、というかあいつが書くことなんてきっと一言だけだよ、ネチネチアルファと違って、男前でさっぱりした奴だからな」

 そして僕は、そのオメガの子の手紙を開けて読み上げた。

『お前すっげぇ幸せそうじゃん‼ 恋人さんもいい人そうだな。マジで良かったよ。おめでとう‼』

 僕と類はまた目を合わせて、笑った。

「なにこれ、こんなあっさり?」
「ああ、それがあいつなんだよ。俺たちは日本で和解していてわだかまりはもう何もないんだ。そのことについてはもう触れないところが、あいつらしい」
「類もこの子も、お互いあっさりしていて安心した」
「というか不安要素なんてなかっただろう? 俺が海斗に溺れているのはもう世界が知っているのに。それに海斗が一番知っているでしょ?」

 自然に顔が近づきキスを交わした。そのままソファで愛を体いっぱい表現した、今ではその子との過去が僕と類にいい刺激を与えてくれる。この手紙一つでここまで盛り上がれるなら、これからも文通は続けてもらおうかなとひそかに思った。


 そして僕のために作ったという指輪はその後、伝説の結婚指輪として爆発的なヒット商品になったのは僕たちが入籍発表をしてからのこと。類が僕の指に合うものをと考えて作り出したラノキリアとの共同制作。

 あの日、スタッフが全てを撮影していて僕たちの発表とともに、ラノキリアのサイト、CMでも一斉に僕たちのプロポーズ写真はメディアに流れた。

 その後しばらくしてから、僕たちはイギリスでの生活を終えることにした。二人の活動拠点を、日本に移した。

 僕は最愛の人と共に、またこの地で暮らせる。運命を恨んで悲しい去り方をしたけど、今度は人生で一番大切な人を、運命の人を得ることができたから、運命も悪くない。

 僕は類と一生を共にするんだ。類と結ばれたことで、僕のこの先はずっとず――と、幸せな運命でしかなかった。


  ――イギリス編 fin――
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