運命を知りたくないベータ

riiko

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日本編

9、弟の過去

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 爽と陸斗は、僕がこの家を去ってから妊娠が発覚して同棲を始めた。陸斗はまだあの時、十五歳で、結婚ができる年齢ではなかった。

 そして爽の家に両親と陸斗で挨拶に行った時、向こうの両親はうちの家族を罵った。陸斗のことは、中学生でアルファをたぶらかす淫乱オメガと。結婚相手を連れてくるのも、同級生のベータ男性と聞いて 虫唾むしずが走ると思っていたら、その弟が相手になったのはもっと酷い状況だと言ったらしい。

 会ったその日にヒートでつがいにまでさせて、さらに妊娠するなんて、財産を狙う兄弟にうちの息子はたぶらかされたと、まるで我が家を犯罪者家族のように責め立てた。

 そこには父も激怒した。爽は結婚もできる年齢で、それをまだ中学生の子を無理やりつがいにした方が犯罪だろうと、反論した。結婚の約束をしていたのに、簡単に裏切られた長男も被害者だと。

 両家はお互いに収まらない怒りのもと、爽がそれでも陸斗を愛しているからと、二人は家を借りて同棲した。

 お互いの両親は受入れないことに二人はヒートアップして、初めは上手くいっていたらしいが、なにせまだ子供の陸斗は何もできなかった。爽はいつも僕と比べ、できないことにいら立つようになったらしい。陸斗も家で親に愛されて何もかもしてもらっていた生活の中、男同士の二人暮らしに戸惑っていた。そして出産するも、生まれた子はすぐに向こうの両親に高い費用をかけてバース検査をさせられたところ、アルファと判明。

 運命同士のアルファは優秀というデータがあるので、むこうも陸斗は気に入らなくても跡取りとしての子供は欲しかった。世間体も考えて爽にはアルファ女性と結婚させてその二人の子供として、陸斗が産んだ子供を引き取らせた。陸斗もやり込められて何も言えない状態だったし、なにせ子供だから抵抗するすべもなかったのだろう。

 爽は爽で、自分が親の連れてきた相手と入籍さえすれば、陸斗を守れると思ったらしい。

 お互いが子供過ぎた責任のとれない関係だったせいで、なにもかもが間違いだらけで始まった爽と陸斗のつがい関係。そんな二人の関係は運命だっただけで、決して愛ではなく想いもなかった。上手くいくはずもない二人は距離を取った。

 愛人として別宅に住まわされて、本宅には爽とその妻。その二人が実子として陸斗の産んだ赤ん坊を育てた。陸斗は爽のつがいだと、誰にも言うことを許されず、爽とは発情期の時だけ体を交わす関係に落ち着いていた。

 今の陸斗は何もせずに、爽の家の金で自由に暮らしているとのことだった。家を駆け落ち当然に出た気まずさから、父の説得でもここに帰ってくることはなかったそうだ。

 なんというか、驚いた。

 そして爽はなんて無責任なのだろう、そんな男だったなんて知らなかった。もしかしたら陸斗とつがいになったことで何かが壊れ始めたのかもしれない、爽だってアルファとはいえあの時は十八歳の子供だったのだ。

「こんな結果になってすまない、お前を裏切ってまで結ばれた二人の末路はこんなもんだ」
「いや、僕はあの時のことがあったから、こんなに素晴らしい人と出会えたし、今となっては良かったって思っているけど、お父さんもお母さんも大変だったね」
「海斗は優しいな」

 父は、僕が今でも陸斗を恨んでいるとでも思っていたのだろう、でも今の話を聞いても何にも感じなかった。僕とは無縁の知り合いの話程度に、余裕で聞くことができた。

「そんなこと。そもそも僕が爽をこの家にあげたことが始まりだったし、一応変な男を家族に紹介した責任は感じる……陸斗は今、大丈夫なの? つがいがいるのに発情期だけの関係だなんて」
「陸斗はなんというか、意地になっているみたいでここにも帰ってこないんだ。初めて産んだ子供を取られて 憔悴しょうすいしきっていたから、なんとか我が家で引き取りたかったんだけどな。一応、つがいにした責任は最後まで追うと、爽君が生活の全てをサポートしている」

 なんだか悲しいな、オメガとは、運命とは。

 生きるためにつがいと離れられないなんて。そんな本能に左右される時期でも、上手くいかない相手と体だけを交えるなんて……。

 そこで類が、僕や両親に話した。

「海斗、その男はおかしい。俺の家もなかなか人道に外れた意見は言うけれど、そいつの家はもっとヤバイ。そんな家と縁を結ばなくて済んだなら、それはそれで飯田さんも良かったと思います」
「類君……俺のことはお 義父とうさんと言って欲しい、これからは君も息子になるんだろ?」
「あっはい‼ ありがとうございます、お義父さん」

 ふふ、類は気に入られている。良かった。

「こんな話を聞いた後に言うのは気が引けますが、俺はなにも隠し事をしたくないので言わせてもらいますが、うちの家もアルファ家系でおかしいところがあります」
「ん? 我が家はずっとベータ家系だったから、アルファとかオメガについても疎いんだ、今回の爽君の家族のことも相当参ってしまってね、何がおかしいことなのか詳しく教えてくれるかな? もし君の家族が何か変なことがあっても、君を信頼している海斗を俺たち親は信じているから、君を受け入れないわけではないよ」
「ありがとうございます。実は昨日俺の家に二人で結婚の報告に行きました……」

 それから昨日、櫻井家で言われたことをそのまま類は両親に伝えた。嘘がつけない、ほんとにクリーンないい男だと思う。

「そうか、まぁそうだろうな。爽君の親は過激だったけれど、上流家庭ではベータとはそういう立ち位置なのだろうなとうすうす気が付いていた」
「でも、俺は違います。俺はバース性なんて付属品だと思います。俺は海斗自身を愛している。だから海斗に肩身の狭い思いを絶対にさせない、俺の一番は海斗なので、海斗を認めない親とは縁をきります。実家のサクラジュエリーに就職する気もないし、イギリスでもっと勉強して、いい仕事について絶対に海斗を養ってみせます」

 驚いた、僕を養うつもりでいたの? 一応僕結構稼いでいるから、類を養えるけど、そういうところ、男らしい。

「そこまでうちの息子を想ってくれてありがとう。海斗は、類君の親御さんが言ったことをどう思ったんだ?」
「僕は、類と結婚できるなら、バースは今まで通り秘密にしてもいいし、そんなたいした問題じゃないと思っている。類とお父さんとお母さん、周りの親しい人だけが僕のことわかっていてくれたらそれでいいかなって、わざわざそこに執着してまで、類と類の親の縁を切らなくても」
「そうか、海斗はもう色々と吹っ切れて類君を想っているんだね。類君、君の親の言うことも一理あるしそこまで頑なにならず、もう少し海斗と話し合いなさい。俺たちは海斗の意思を尊重する。俺たちにできることがあるなら遠慮なく言いなさい、君のご両親との決着がついたなら、一度ご挨拶だけはいかせて欲しいな」
「はい、寛大なお言葉ありがとうございます」

 そうして僕たちは、飯田家をあとにしてホテルへと戻った。

 母からはせっかく日本にいるなら、家に泊まればいいと言われたけれど、類もきっと他人の家は疲れちゃうだろうし、僕も類と二人きりの方がまだ安心する。せっかくいいホテル泊まっているし、もったいないからと言って辞退した。
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