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本編
19、上條楓3(楓side)
「婚約者ってなんのことですか? 由香里は俺と番になる約束をしています。俺たちは、まだ出会って日も浅いですが、運命の番なんです」
「まぁ!! そうなの!? それは、おめでとう!! あっでも、じゃあ由香里は今日小湊さんにお断りに行ったのかしら?」
あれっ、意外にもすんなり受け入れて貰えている?
「婚約者って、小湊議員ですか? でもあの方は昨年お亡くなりになってさらに御年も召した方では?」
「あら、違うのよ。小湊洋平さんという方で、今年二十歳になった彼のお孫さんなの。でも運命と出会ったのならきっと由香里お断りしているんじゃないかしら」
孫? この亜香里さんは小湊とはどういう。
「失礼ですが、あなたはお亡くなりになった小湊氏の愛人ではなかったのですか?」
「ちょっ、上條先輩!?」
梨々花が俺の失礼な言葉に、むかっとして反論しようとしてきたが、すぐに亜香里が止めた。
「いいのよ、梨々花ちゃん。さすがアルファの方、いろいろとお調べになられたのね。でも違うわよ、世間には由香里を守るためにそういう噂はそのままにしてきたの。だけど小湊さんは私の元婚約者で、主人と娘が亡くなった時に由香里とお孫さんの縁組をする約束で援助をしてくれた方なの、でもあの方の遺言で運命の番に出会ったらこの援助は打ち切りで縁談も白紙に戻すってあったから、良かったわね! 結婚前に運命が判明して」
そうだったのか、ほっとした矢先、梨々花が大声を上げた。
「ええええ――!! 亜香里さん! それ、由香里知っているの!?」
「それって?」
きょとんとする亜香里さん。
「だから運命に出会ったら白紙ってやつ!!」
「ああ、知らないかも。言おうと思った矢先、由香里ったら洋平さんのこと気に入っていたから、もう受け入れたって言っていたし、運命なんてそうそう会えるものじゃないから、会えたって聞いたら言おうと思っていたのよ」
梨々花が凄い勢いで焦りだしている。
「だめじゃん!! 今の婚約者、洋平じゃなくて、叔父の達夫になったんだよ!!」
「え、なんでそんなことに!? 梨々花ちゃん、それって誰?」
「だから脂ぎった五十代の叔父さんで離婚歴三回の気持ち悪い人。そいつが由香里を手に入れたくて、洋平さんを陥れて洋平さんに番を作らせたの、それで小湊家の独身で由香里と結婚できるのは自分だけだって達夫がしゃしゃり出てきたのよ!! 由香里、今までの援助もあるからその人と結婚するつもりだったんだよ、でもその決意の後に上條先輩に出会ったから、きっとどうにかするつもりだったんだと思うけど……」
なんだって!?
「梨々花ちゃん、由香里はその男と会っているのか?」
「分からないけど、もし婚約者に会うっている話なら、小湊達夫しかいないと思います」
くそっ。俺の由香里が今現在、他の男と二人きりだと!?
「あっ、今日由香里に首輪の鍵が欲しいって言われたんだけど、小湊家が管理しているって話したの。だからその鍵を貰いに行ったのかもしれないわね」
「じゃあ、由香里は今日その男の前で首輪を外すかもしれないということですか!?」
「え、そうかもしれないわ」
「どこで会っているか分かりますか?」
「いつも会うホテルのラウンジだって、今日もそこで会うって言って出ていったわ」
オメガの二人が事の重大さに気がついたようで、オロオロとしだした。この二人は由香里を想っているからこそ、二人にはこれからも俺の味方でいてもらう必要もある。俺がこの場を収める必要があるし、何より俺の大事な由香里が男と二人で会うなんて許せるわけがなかった。
「すぐに由香里を保護します。その男が、そんなに由香里に執着しているなら、もし由香里が運命に会ったなんて話をしたら逆上して由香里を襲う可能性もあります」
「ど、ど、どうしよう。上條先輩!! 由香里は先輩を愛しているんです」
「梨々花ちゃん、大丈夫。俺も由香里を愛しているよ。必ず救い出すから。亜香里さん、後で連絡します、とりあえずは由香里を保護します」
「上條君、由香里を頼みます」
そうして俺は安里家を後にした。すぐに上條の諜報部に連絡を取り、由香里の居場所を調べさせた。由香里にはお揃いのモノを身に着けたいといって、小さい宝石の付いたチャームをキーケースに取り付けた。
俺のキーケースにもその場で取り付けて見せると、由香里は満面の笑みで俺を魅了した。とっても嬉しいと言ってくれてちょっと心が痛んだが、仕方ない。いつ何時由香里に何が起きようと居場所を把握できるようにGPSを付けておいた。まさかこんなにすぐにその機能を使うとは思いもしなかったが。
そして諜報部の調べによると、小湊の動向を調べた結果、由香里の居場所であるホテルと、小湊がホテルの部屋を取ったという場所が一致した。
小湊ぉ――。俺の由香里を部屋に連れ込むつもりか!? これは警察案件だと思い、知り合いの刑事を呼んだ。
由香里が不当に部屋に連れ込まれている証拠も必要だったので、亜香里さんから小湊の手紙を借りた。そこに書かれているのは、孫の洋平との結婚を破断したい場合は、運命の番に出会った時のみ、もしくは孫が他に好きな人ができて番ができた時。その二つが破断の条件だった。そこに叔父が代わりになるなどとは一言も書かれていなかった。
警察にそれを渡し、ホテルの部屋へ乗り込むと下着姿の由香里が組み敷かれているちょうどその時だった。これは、明らかに強姦の現場にしか見えない、由香里が泣き叫んで頬に殴られた跡がある。
警察に連行される小湊達夫は喚いていたが、小湊収蔵の手紙を見せつけられるとたちまち達夫は黙ってしまった。不当な婚約だったと本人も分かってやっていたのだから当然だった。
全てが片付いて車で移動をしている最中に、由香里の現状を亜香里さんに連絡をして無事を伝えた。そこに梨々花もいたみたいで二人はとても安心していた。由香里が精神的にショックを受けているのでしばらく預かると言い電話を切る。
震える由香里を抱きしめて俺は安堵した。
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