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本編
26、プロポーズは発情期の後で ※
「凄かったね」
「ああ、もうヒート終わったな」
ベッドで楓に寄りかかりながらもらったお水を飲んでいた。なんだか霧が晴れたように、発情の波が終わった。
あれからひたすら楓を求めていた。
記憶は全部あるし、ご飯を食べていてもトイレに入っていても、すぐに楓を呼び寄せた。とにかくひと時も離れたくなかった。僕を休ませている間に、楓はベッドを片付け、ホテルスタッフに連絡してはご飯やリネンを運んでもらっていた。この空間に誰もいれたくない、僕の発情を誰かの目に触れさせたくない、香りも、声も、誰にも聞かせたくないって、すっごい頑張ってくれていた。
僕はそれをぼぅっと見ては、カッコイイなと思うとすぐにまた発情して楓を求める、それを繰り返ししていた。とにかく幸せだった、ずっと楓とくっついていられるし、僕がローズの香りを出せば、すぐに楓が目の前に来て抱きしめてくれる、番ってなんて便利なんだろう!
「楓、ありがどう、ほんと、すき」
「あはっ、すっかり声がかれちゃったな、そんな声もセクシーだよ」
「んもぉ! だれのぜいだど!!」
「もう喋るな、喉が痛む。フロントに蜂蜜レモン頼んでくるな!」
僕の唇にちゅっと大きなリップ音をだしてキスをすると、頬を大きな手でなぞってから、楓はベッドを降りて行った。
あっ、下は履いていたんだ。スラリと長い足は、スウェットを着用していた。上半身は裸で引き締まって筋肉がしっかり分かる背中がたくましくてカッコいい。
僕の男の後ろ姿を、動かない体で見送っていた。
ヒート凄かったな、幸せだった!!
一人で過ごすヒートと全然違う、一人だと一週間ダラダラと辛いのに、楓の精が僕の中にこれでもかってくらい入ってきたおかげで三日くらいでぼぅとするのは収まって、あとははっきりと記憶に残る交わりがひたすら続いた、嬉しかった。あんなに愛してくれて、楓が好きで好きで好きでたまらない!!
「由香里? 一人でなに可愛い顔しているの? ほら、これ飲んで」
「ん」
すぐに蜂蜜レモンを持ってきた楓が、僕の隣に座ってそれを僕の口にカップを持ってきて飲ませてくれた。コップすら持てないくらいに僕のチカラは完全に抜けていたからありがたい。
「ぶはっ! おいしいっ!!」
「ふふっ、良かった。由香里は何をしていても愛らしい」
発情期を一週間つきっきりで僕のお世話をしてくれた楓は、前よりも僕の一挙一動に感動? しているみたいだ。どういう心境!? まるで雛鳥を見る親鳥? いやいや、僕たちいやらしいことしまくりだから親の愛情ではない、番とは不思議なものだ。
「楓、すき。愛している」
「由香里、俺を殺す気? ただでさえ由香里の魅力にこの一週間参りっぱなしだったのに、ヒートが終わっても俺を魅了するの? 俺の方が愛している。由香里は俺の本質を知らないからそんな可愛くしているけど、俺、これ以上抑えられるか心配だよ」
「なにそれ、抑える必要ないでしょ。僕たちはこれから一生ずっと一緒にいるんだよ? 見せてよ、楓の本質」
「参ったな、亜香里さんの手前、無理やり由香里を攫えないし、まだ俺にも少し理性はあるんだ。だからこれ以上は煽るな」
僕は笑った。楓が本気で困っていたから、楓は馬鹿だな、楓の本質なんて出会った頃から気づいている。それなのに、出ちゃっているのに抑えていると思い込んでいるところが本当に可愛い。
「僕のために頑張ってくれてありがとう!」
「由香里、また順番が前後したけど、今夜こそ夜景の見えるレストランでプロポーズさせてくれ」
順番が前後したのは僕の早くきてしまったヒートのせいであって楓のせいじゃない。でも、そういう僕をたててくれるところが本当に素敵っ! 紳士っ! 最高!!
「楓、僕いろいろ我儘言ってごめんね。そんなのほんとはどうでもいいの」
「えっ、由香里ぃ、ごめん!! 俺もっと頑張るから!!」
「違うから、そんな泣きそうな顔しないで。そうじゃなくて、今して。指輪持ってきているんでしょ? ほんとは場所とかシチュエーションとかじゃなくて、僕の気持ちが最高潮に来た時にプロポーズして欲しかっただけ。僕たち出会いからいろんなことが急に動き過ぎて、考える時間もないくらいにペースが乱されていたから、せめて順番を踏んで僕の気持ちの整理が……ってのは、おかしいね。初めからは楓しかいないからそれは決定だったんだけど、でも勢いじゃなくてゆっくり進めたかったの。だから雰囲気にこだわっていただけ」
僕の手を握って楓が真剣に聞いてくれていた、そして、ベッド脇に置いてある紙袋から指輪が入っているケースを出した。
あっ、そこにあったんだ! こないだ二人で買いに行った指輪、僕の好みを選ばせてくれたやつだった。僕は楓の動きを目で追っていた。
「由香里、由香里は俺より年下なのに、とてもしっかりしている。俺をこれからも導いて」
「ふふっ、楓は僕に関してだけ少しおかしいけど、それも好きだよ。でも僕も楓のこれからを支えたい」
楓はゆっくり指輪を取り出して、僕の左手をとった。
「由香里、愛している。生涯俺と共に過ごして欲しい、結婚してください」
「……はい」
僕の震える左手、それをしっかりと力強く支えて指輪が薬指に入る、僕の目からは大きな涙。
「楓っ、愛してる!」
「由香里、由香里、もう離さない」
二人抱き合ってキスをする。僕はなんだかんだ言ってもこの人がたまらなく好き、これから先も、ずっと好きだって確信が持てる。どんなに強引に僕を捻じ伏せたとしても、それすらも喜びになる未来しか想像できない。
「ヤンデレも、認めちゃえば、うれしかな」
思わず出てしまった、僕の俳句の楓シリーズが。
「えっ!?」
「ふふ、うまくできた!! おばあちゃんにこの俳句提出してみようっと!」
「ゆ、由香里ぃ――ぃぃ? まさか俺の行動……」
プロポーズ後のうっとりした雰囲気から一転、楓が困った顔をした。知られていないとでも思った? 君のヤンデレすらも僕は愛しているから安心してね!
「好きだよ、楓っ!! その執着も堪らなく好きっ!!」
「由香里ぃ!! 愛してる」
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