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本編
27、高嶺のオメガ
「ゆがりぃ、ぐっすっ、うっ、うっ」
「陽子ぉ、泣かないでよぉ、ぐすん」
今日は僕と楓の結婚式。控室では僕の親友の二人が大変なことになっていた。
「まぁまぁ二人とも、そんなに泣いたら式が始まる前に目が腫れちゃうわよ」
「だっでぇ、由香里がとても綺麗なんだもん!! 亜香里さんっ!」
「うん、うん、ほんとこんなに素敵な花嫁見たことない。由香里はやっぱり、高嶺のオメガだね、ぐすんっ、由香里の花嫁姿みたら、教会で待つ上條先輩、卒倒しちゃうんじゃない?」
高嶺のオメガ、久しぶりに聞いた気がする。楓と付き合ってからは、他の人が僕をそう言うのも楓は許さなかった。とにかく誰の目にも止めたくないと過保護というか、溺愛は一層激しくなった。楓が大学を卒業すると同時に、楓と入籍、そして今日の結婚式。あの楓がプロポーズも済ませたのに、結婚まで一年近く待てたのにはみんな驚いたものだった。
僕があまりにおばあちゃんっ子で、もう少し祖母と二人で暮らしたいという希望を最大限に叶えてくれた優しい人だ。
「ふふっ、まだその呼び方するの? でも結局は楓が今まで僕たち家族にかかった費用を向こうの弁護士と話し合って支払ったらしいから、やはり僕は高嶺というより高値のオメガだったね!」
「ははっ! うまい!! でもさすが上條先輩だよね。出会う前でも自分の番が他の男の金で生かされていたなんて過去は抹消したいって言うんでしょ、あそこまで行くと流石にね」
梨々花が苦笑いした。
「可愛いじゃない? ちょっとお金で買われた感も出て僕、興奮しちゃったよ」
「由香里も大概ね。お互い盛り上がったなら良かったけどさ、本当に凄い人が旦那様になるのね、これで私たちも肩の荷がおりるわよ」
陽子がにっこりと笑っていた。僕は思わず二人を抱きしめた。
「二人とも、本当にありがとう」
「「由香里ぃぃ!!」」
「僕は幸せだね。こんな感動的な結婚式の前の時間を迎えられると思わなかった。本来なら二人とお葬式みたいな時間になるところだったのに、運命と出逢えてこんなに僕の未来が変わるなんて思わなかった。二人ともずっと僕を支えてくれてありがとう」
そして、祖母に向き合った。
「おばあちゃん、僕をここまで育ててくれてありがとう。僕はっ、僕はっ、凄く幸せだったよ、おばあちゃんの孫で良かった、ぐすっ、」
「由香里、あなたとても綺麗よ。一生の別れでもなんでもないんだから、そんな挨拶いらないのに。でもおばあちゃんの方が幸せよ、私はあなたがいたから今日まで生きてこられたの。本当なら番と死別したオメガは生きる気力を失くすものなのよ、でも私には由香里がいた。あなたが愛する人を見つけてくれたことが、私の一番の幸せだわ、本当にありがとう。今まで以上に幸せになるのよ」
「っ、おばあちゃん!!」
祖母は幼い頃からしてくれているように、僕を抱きしめてぽんぽんって頭を撫でてくれた。いつでもこの手が僕を守ってくれたんだ。今では僕の方が背が高くなってしまったけど、幼い頃から祖母の手が大好きだった。どんなに、どんなに愛されてきたか、僕は痛いほど感じていた。こんなに早く嫁に行きたくは無かったけど、でも僕が幸せになることが祖母の喜びだって言われ続けていたから、この決断は正しいのだと思う。
「さぁさぁ、もう行かないと。おばあちゃんとバージンロード歩いてくれるのでしょう? こんな素敵な孫と一緒にまたあの道を歩けるなんて、嬉しいわ」
「うん! おばあちゃん、僕を楓のもとに連れて行って」
陽子と梨々花は僕たちを見て泣いているけど、これは感動の涙だし、いいかな! みんなで泣き崩れてしまいせっかくのメイクも崩れて、僕たちを呼びに来た係の人たちが慌ててみんなのメイクを直してくれた。
そうして僕と祖母は子供の頃と何も変わらずに、いつものように一緒に手を繋いで歩いた。僕の愛おしい最愛の番の待っているところまで。
祖母はぎゅっと手を握ってくれた、そして僕の愛おしい人へと僕を託した。
「由香里」
「……楓っ」
僕の名前を呼んで、崩れた笑顔を見せた僕の運命の人、この人とこれからを生きていく。
僕は大切な人達に囲まれて今日、人生で一番幸せな時を迎えられた。
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