運命の番は姉の婚約者

riiko

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第三章 仮初の関係

27 バーでのこと

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 それからの二人は特に内面に触れることなく、金曜にバー御影で会って、そのままホテルに行くを繰り返した。たまに相原が御影にいる時は、みかげを含め四人で話し、バーに長居する。
 その日は偶然、以前爽が誘おうとした丈というベータの男が来店した。丈は二人の存在に気付き、声をかけてきた。隆二が手招きすると、丈は隆二の隣に座った。
 カウンターにいたみかげが、丈におしぼりを渡しながら笑顔でいらっしゃいと言って、ビールを提供していた。
 酒の入った丈はみかげに愚痴る。
「爽君は、隆二さんと付き合っていたんだよね。ほんとみかげさん酷い! 俺の好み知ってて、ドンピシャな子を紹介するなんて」
 丈の言葉にみかげは笑っていたが、爽は内心驚く。
 ――まさかの俺がドンピシャだったの⁉
「ははは、本当にごめんねぇ」
 なんだかすいませんと、心の中で爽も謝罪した。そこで隆二が隣を見てから、みかげを見てふてくされたように言う。
「本当だよ? 僕こそ焦ったよ。よりによって丈君の好みに合う、を紹介してるとかさ。みかげ君ちょっと意地悪じゃない?」
 僕の爽って……と思った爽だが、付き合っている前提で話が進んでいるので何も言えなかった。
 そこでみかげがおもしろそうに話す。
「えー、だって。恋ってさ、誰かと取り合った方が燃えるし、肝心の爽君も二人の男に好かれてるってわかったら、少し自衛本能も生まれるかなって?」
「生まれてないけどね」
 すぐさま隆二がみかげの言葉に突っ込んだ。ほんと、すいませんと、爽はまた心の中で謝った。
「でもさ、隆二はなんで丈さんを知ってるの? ここって常連さんはみんなお友達なの?」
「ああ、丈君は以前いた会社の後輩なんだ」
「えっ、隆二って証券会社にいたの?」
「あれ、知ってるの?」
 隆二は爽の言葉に反応した。
「ああ、僕が丈君を紹介した時に、証券マンって言ったからだね」
 そこでみかげのサポートが入る。
「なんだぁ、爽が僕のこと検索でもしてくれたと思ったのに」
「検索したらヒットするって、やっぱり隆二は犯罪者なのか? 正直に言いなよ、オメガ一人くらい監禁したことあるだろ?」
「えええ⁉ ないよ~。酷いなぁ」
 みかげと丈は、二人の会話を聞いて笑っていた。丈がそこで助け船を出す。
「隆二さんは犯罪者じゃないよ。俺が保証するから大丈夫! 会社では惜しまれながら辞めていったんだ。その時にここを教えてもらって、それから俺もチョクチョクみかげさんのところに来るようになったんだ」
「そうなんですか……」
 カウンターで横並びに座っているので、丈が隆二を挟んで爽に話しかけてきた。それに答えると、隆二が爽を見てきた。
「僕のこと、知りたくなってきた?」
「全然。だって、その大手証券会社辞めて今は無職なんだろ? もう働くの飽きちゃったとか?」
「平日はちゃんと働いてるよ」
「ふーん、そうなんだ」
 爽は、隆二のことを探ろうとは思わなかった。体だけ繋げているのに、私生活まで知ってしまったら情が湧いて、子供ができたとき縋ってしまいそうになる。情報は少ない方がいい。
「爽君。隆二さんのこと、本当に知らないの?」
 そこで丈が、不思議そうに聞いてきた。
「名前しか知らないです」
「わーお。それは、凄く貴重な子ですね。隆二さんのバックを知らずに付き合ってくれる子なんて、久しぶりじゃないですか?」
 丈が意味深なことを言う。
「え、隆二、もしかして……裏社会?」
「「ぶはっ、ははは!」」
 みかげと丈が大笑いした。隆二はぶすっとした顔をする。
「そんな危ない男じゃないから! 一年前に身内の会社に呼ばれて転職したんだよ。だから会社員だってば」
「ふーん」
 丈と隆二は繋がっている。そしてここのマスターであるみかげの夫が、隆二の友人。
 もうみかげ周辺では、男を漁れない。というか隆二の子種にかけている今、爽が今後男を漁ることはない。きっと、子供を産んだらそれどころじゃないし、一生誰とも行為をしなくても良いと思っている。
 妊娠するまでの今だけ、オメガとしての機能――性欲に溺れるという行為を楽しむ。
 そういう軽い考えに切り替えていた。
 どうしたって、隆二に抱かれたら、おかしくなる。きっと、爽はまた変なことを行為中に言っている気がする。たまにイキ過ぎてヒートに近い状態のような心境に入ることがあった。でも隆二はあれ以来、行為中のことをそれ以外の時に本当に言わなくなった。
 だから、ホテルで事後にまったりしているときは、まるで友達かのようにくだらない話をして、心地のいい時間を過ごしている。そして少しして、お互いに触れると、また欲望が顔を出して交わる。そんな風に過ごしていた。
 爽の体は、隆二に会うと確実に熱くなる。
 交わっていないときは友人みたいに過ごしているといいつつ、少しでも隆二の体に触れるとすぐにスイッチが入る。なんなら見つめられるだけでも、キスをしたくなる。
 最近では、体の反応だけではすまなくなってきた。心も少しおかしい気がする。それは考えないようにして、どうおかしいのかは自分自身に追求しない。ただ会うたびに、キスをするたびに、体を交えるたびに、隆二を愛おしいと思ってしまう自分に焦る。
 きっと、そういう性的な状況を共にする相手だから、そういった意味で心の誤作動が生まれているだけだ。
 もともと爽のオメガの体も心も「運命の男」を知ってから誤作動だらけなのだから……
 隆二と会えば濃厚な時間を過ごして、たっぷりと隆二の子種を貰っているのに、爽はいまだ妊娠していなかった。そろそろ焦りだすのだが、こればかりは神のみぞ知ることなのかもしれない。

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