ローズゼラニウムの箱庭で

riiko

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第二章 運命

31、発情 1

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 なんだろう。

 森の中にいるような静寂。さわやかな香りに誘われて、それを必死に求め香りが強い方へと歩いていく。

 大きな森の中に一本の巨大樹がある。これ、前に植物図鑑で見たことある……サンダルウッド。古代の歴史では、皇族のみがつけることを許される、貴重で高価な香木こうぼく、和名で白檀びゃくだん

 この香木こそ自分の求める香りだと確信した。

 もっと匂いをかぎたい、そんな衝動を止めるすべを俺は知らなかった。


 ◆◆◆

 ふと目覚めると先輩の腕の中でぎゅっとされていた。まだ夜中だろう、その時間に目覚めることなど滅多にないのに。

 久しぶりに見たな、あの夢。

 先輩の服からはいつものさわやかな香りがする、きっと高級な柔軟剤でも使用しているのだろう。

 でもチガウ……もっと……。

 なぜかそのいい香りさえも、邪魔に感じた。この匂いで先輩のニオイが消されちゃう。

 無意識に寝ている先輩の首元に、鼻先を近づけてくんくんした。はあ……落ち着く。この匂いだ、幼い頃から何度も見る夢。あの大木に抱きついていると、とても安らいで落ち着く。ストレスが多い時に決まって見ていた夢だ。

 なんで先輩からこの匂いがするんだろう。

 そして俺はいつの日からか、先輩に抱きしめられて寝ていてもおかしいとさえ思わなくなっていた。普通に考えて、ベータ男が上位種のアルファにベッドで抱きしめられているなんて、あってはいけない。だって、先輩と俺の関係はただの同居人なのだから。

 生徒会長が世話をする苦学生。ちょっと過保護すぎるくらい面倒を見てくれるが、俺が奨学生で優秀だからだろう、そんな所のはず。

 先輩は一緒に寝るようになってから、抱き枕みたいで気持ちいいって言って俺を離さない。俺も昔から一回眠りに入れば、目を覚ますことがないから、いろいろお世話になっている代わりに好きにさせることにした。

 性的な意味は絶対にない。先輩はモテるし、女の子としか付き合ってきてないって言っていた。だから絶対、まかりなりにも俺はない。そしてそんな勘違いベータなどと思われても嫌なので、俺に性的な興味ある? なんてことも聞いたことはない。

 スキンシップが多いだけで、勘違いするほどおめでたい頭は持っていない。自分の身分についてはきちんとわきまえているから大丈夫だ。

 だが、これはやばい。なぜか寝ている先輩の香りをかいでいたらムラムラしてきた。

 もうしょうがないとあきらめるべきか。

 だって恋愛感情がなくても、この先輩は言うことなしのハイスペックで、近くで目視できないほどの美男子だ。目なんか合ったら、男嫌いの人だって、赤くなる……絶対なる。

 個人的に、そういう相手としてアルファや男は嫌だ。でもそれは関係なくこの美貌はやばい。決して好きなわけではない。だが、エロい。寝ている吐息さえ、近くて嗅ぎたいくらい官能的だ。
 
 それでも前まではそんなこと思わなかったのに、あの片岡君のせいだな。彼はベータなのに同室のアルファの先輩と多分付き合っている。彼が生徒会長に惹かれないのかって聞いてきたから、だから変に意識しちゃっただけだ。

 これではただの変態だ。

 明日から先輩に白い目で見られてしまう、お情けで同室においてやっているのに、ベータ男が自分に欲情したなんておぞましい話であろう。

 昨日、生徒会室で恋人うんぬんの話をしていたけど、あれはお互いの利益になるカモフラージュ、そんな話をした翌日に本気に取られたなんて思われたくない。

 俺はそんな不名誉なことになっては困るので、このベッドから抜け出すことにした。

 でも、どうしてだろう。離れられない、離れたくない、この男は俺のモノだ……。

 明らかにおかしい思考が頭の中をうるさく交差しだした。体は勝手に反応してしまい、またもや先輩の胸に自分の顔を擦り付けてしまうという悪行をしてしまった。

「はあ……はっ……」

 先輩の匂いを嗅いで、胸に顔を埋めただけで俺の下半身はビンビンになっている。吐く息さえも我慢できず、自然と色のあるような吐息が漏れてしまう。だめだ、だめだ、だめだ、生理的な涙も出てくる。自分の心はだめだと言っている。

 だが、奥底ではこの男を欲しいとも言っている。頭では必死で抵抗をしているが体は正直に反応している、もう何がなんだかわからない。ありえない場所から何かが垂れた気がした。

 なんで……!?

 オメガとしての機能は完璧に抑えていたはず、それなのにオメガの子宮が存在するといわれる後ろの孔から蜜が漏れる……すなわち発情している。前はもう下着が苦しいくらい張り詰めてきた。

 どうしよう……まずい! アルファと同じ空間で発情なんて。しかも相手は自分をベータだと思っているのに。

 どうしよう、どうしよう、あっ、勇吾さんに電話するべきか。いや、まずはすぐにでもこの部屋を出ないといけない。まだ理性が少しでも働くうちに。

「ん……はっ」

 呼吸をするたびに、先輩のフェロモンだろう香りが自分の中に入ってきて、もう発情は免れないことを悟った。はやくこの腕から抜け出さないと。

 うごけ! 俺の体。

 力が出ない、少しモゾっとするだけで酷く汗が出る。そうすると自分から、ブワっと花の香りが立ち込めてきた。この匂いは幼い頃、何度も嗅いだから知っている。これは母さんと同じ花の香り、すなわち俺のフェロモンだ!

 焦っていると、ついに眠っていた先輩が異変に気づき、眠りから覚醒させてしまった。

「ん……りょうた……? えっ、この香り、はっ、やばっ……」

 先輩が俺の匂いに反応して目が覚めたのだ。そして先輩も俺の発情に乗せられてラットを起こし始めた? 抱きしめられているから、先輩の下半身も俺の太ももにあたって勢いよく固くなりだしたのがわかってしまった。

「先輩っ!? ごめんなさい。離してください。俺からはな……れて……ん……っ」

 だめだ、先輩が俺のフェロモンに反応して、すごい香りを放ってきた。この香りに当てられた俺は力を少しも出すことはできない。あとはもう上位種アルファである、先輩のオメガ耐性にすがるしかない。

「良太、はぁ」
「先輩、しっかりしてください。とりあえず離してっ」
「…………俺のオメガ!」
「えっ?……っあぁぁぁん……」

 全く耐えられていない! すでに先輩に理性は残ってないように見える。

 先輩の目が野獣化したと思ったら勢いよく抱きしめられて、そして首筋を舐められた。そのまま先輩の形のいい唇は俺の顎から口元に移り、唇と唇が重なり、濃厚な口づけが始まった。

 先輩の手は俺の胸の突起をつまんできては、器用に唇の中はぐちょぐちょに回し舐められ、俺の唾液はどんどん溢れてきた。

「んんっ、んはっ や、めて、ん……」

 そして先輩の唾液も入ってくると、ますます俺の後ろがグチュって音を出すほど濡れてきた。それでいて口づけは甘くて、どんなお菓子よりも美味しくてたまらない。

 抵抗しているはずが、もっと欲しい、もっと欲しいとついに自分から求め始めている。

「ん……はぁ、もっと!」

 俺は何を口走っているのか? もっと唾液をくれと懇願している。

  もっと、もっと……。
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