31 / 237
第二章 運命
31、発情 1
しおりを挟むなんだろう。
森の中にいるような静寂。さわやかな香りに誘われて、それを必死に求め香りが強い方へと歩いていく。
大きな森の中に一本の巨大樹がある。これ、前に植物図鑑で見たことある……サンダルウッド。古代の歴史では、皇族のみがつけることを許される、貴重で高価な香木、和名で白檀。
この香木こそ自分の求める香りだと確信した。
もっと匂いをかぎたい、そんな衝動を止めるすべを俺は知らなかった。
◆◆◆
ふと目覚めると先輩の腕の中でぎゅっとされていた。まだ夜中だろう、その時間に目覚めることなど滅多にないのに。
久しぶりに見たな、あの夢。
先輩の服からはいつものさわやかな香りがする、きっと高級な柔軟剤でも使用しているのだろう。
でもチガウ……もっと……。
なぜかそのいい香りさえも、邪魔に感じた。この匂いで先輩のニオイが消されちゃう。
無意識に寝ている先輩の首元に、鼻先を近づけてくんくんした。はあ……落ち着く。この匂いだ、幼い頃から何度も見る夢。あの大木に抱きついていると、とても安らいで落ち着く。ストレスが多い時に決まって見ていた夢だ。
なんで先輩からこの匂いがするんだろう。
そして俺はいつの日からか、先輩に抱きしめられて寝ていてもおかしいとさえ思わなくなっていた。普通に考えて、ベータ男が上位種のアルファにベッドで抱きしめられているなんて、あってはいけない。だって、先輩と俺の関係はただの同居人なのだから。
生徒会長が世話をする苦学生。ちょっと過保護すぎるくらい面倒を見てくれるが、俺が奨学生で優秀だからだろう、そんな所のはず。
先輩は一緒に寝るようになってから、抱き枕みたいで気持ちいいって言って俺を離さない。俺も昔から一回眠りに入れば、目を覚ますことがないから、いろいろお世話になっている代わりに好きにさせることにした。
性的な意味は絶対にない。先輩はモテるし、女の子としか付き合ってきてないって言っていた。だから絶対、まかりなりにも俺はない。そしてそんな勘違いベータなどと思われても嫌なので、俺に性的な興味ある? なんてことも聞いたことはない。
スキンシップが多いだけで、勘違いするほどおめでたい頭は持っていない。自分の身分についてはきちんとわきまえているから大丈夫だ。
だが、これはやばい。なぜか寝ている先輩の香りをかいでいたらムラムラしてきた。
もうしょうがないとあきらめるべきか。
だって恋愛感情がなくても、この先輩は言うことなしのハイスペックで、近くで目視できないほどの美男子だ。目なんか合ったら、男嫌いの人だって、赤くなる……絶対なる。
個人的に、そういう相手としてアルファや男は嫌だ。でもそれは関係なくこの美貌はやばい。決して好きなわけではない。だが、エロい。寝ている吐息さえ、近くて嗅ぎたいくらい官能的だ。
それでも前まではそんなこと思わなかったのに、あの片岡君のせいだな。彼はベータなのに同室のアルファの先輩と多分付き合っている。彼が生徒会長に惹かれないのかって聞いてきたから、だから変に意識しちゃっただけだ。
これではただの変態だ。
明日から先輩に白い目で見られてしまう、お情けで同室においてやっているのに、ベータ男が自分に欲情したなんておぞましい話であろう。
昨日、生徒会室で恋人うんぬんの話をしていたけど、あれはお互いの利益になるカモフラージュ、そんな話をした翌日に本気に取られたなんて思われたくない。
俺はそんな不名誉なことになっては困るので、このベッドから抜け出すことにした。
でも、どうしてだろう。離れられない、離れたくない、この男は俺のモノだ……。
明らかにおかしい思考が頭の中をうるさく交差しだした。体は勝手に反応してしまい、またもや先輩の胸に自分の顔を擦り付けてしまうという悪行をしてしまった。
「はあ……はっ……」
先輩の匂いを嗅いで、胸に顔を埋めただけで俺の下半身はビンビンになっている。吐く息さえも我慢できず、自然と色のあるような吐息が漏れてしまう。だめだ、だめだ、だめだ、生理的な涙も出てくる。自分の心はだめだと言っている。
だが、奥底ではこの男を欲しいとも言っている。頭では必死で抵抗をしているが体は正直に反応している、もう何がなんだかわからない。ありえない場所から何かが垂れた気がした。
なんで……!?
オメガとしての機能は完璧に抑えていたはず、それなのにオメガの子宮が存在するといわれる後ろの孔から蜜が漏れる……すなわち発情している。前はもう下着が苦しいくらい張り詰めてきた。
どうしよう……まずい! アルファと同じ空間で発情なんて。しかも相手は自分をベータだと思っているのに。
どうしよう、どうしよう、あっ、勇吾さんに電話するべきか。いや、まずはすぐにでもこの部屋を出ないといけない。まだ理性が少しでも働くうちに。
「ん……はっ」
呼吸をするたびに、先輩のフェロモンだろう香りが自分の中に入ってきて、もう発情は免れないことを悟った。はやくこの腕から抜け出さないと。
うごけ! 俺の体。
力が出ない、少しモゾっとするだけで酷く汗が出る。そうすると自分から、ブワっと花の香りが立ち込めてきた。この匂いは幼い頃、何度も嗅いだから知っている。これは母さんと同じ花の香り、すなわち俺のフェロモンだ!
焦っていると、ついに眠っていた先輩が異変に気づき、眠りから覚醒させてしまった。
「ん……りょうた……? えっ、この香り、はっ、やばっ……」
先輩が俺の匂いに反応して目が覚めたのだ。そして先輩も俺の発情に乗せられてラットを起こし始めた? 抱きしめられているから、先輩の下半身も俺の太ももにあたって勢いよく固くなりだしたのがわかってしまった。
「先輩っ!? ごめんなさい。離してください。俺からはな……れて……ん……っ」
だめだ、先輩が俺のフェロモンに反応して、すごい香りを放ってきた。この香りに当てられた俺は力を少しも出すことはできない。あとはもう上位種アルファである、先輩のオメガ耐性にすがるしかない。
「良太、はぁ」
「先輩、しっかりしてください。とりあえず離してっ」
「…………俺のオメガ!」
「えっ?……っあぁぁぁん……」
全く耐えられていない! すでに先輩に理性は残ってないように見える。
先輩の目が野獣化したと思ったら勢いよく抱きしめられて、そして首筋を舐められた。そのまま先輩の形のいい唇は俺の顎から口元に移り、唇と唇が重なり、濃厚な口づけが始まった。
先輩の手は俺の胸の突起をつまんできては、器用に唇の中はぐちょぐちょに回し舐められ、俺の唾液はどんどん溢れてきた。
「んんっ、んはっ や、めて、ん……」
そして先輩の唾液も入ってくると、ますます俺の後ろがグチュって音を出すほど濡れてきた。それでいて口づけは甘くて、どんなお菓子よりも美味しくてたまらない。
抵抗しているはずが、もっと欲しい、もっと欲しいとついに自分から求め始めている。
「ん……はぁ、もっと!」
俺は何を口走っているのか? もっと唾液をくれと懇願している。
もっと、もっと……。
62
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
8/16番外編出しました!!!!!
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭
4/29 3000❤️ありがとうございます😭
8/13 4000❤️ありがとうございます😭
12/10 5000❤️ありがとうございます😭
わたし5は好きな数字です💕
お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました
2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。
様々な形での応援ありがとうございます!
【完結】end roll.〜あなたの最期に、俺はいましたか〜
みやの
BL
ーー……俺は、本能に殺されたかった。
自分で選び、番になった恋人を事故で亡くしたオメガ・要。
残されたのは、抜け殻みたいな体と、二度と戻らない日々への悔いだけだった。
この世界には、生涯に一度だけ「本当の番」がいる――
そう信じられていても、要はもう「運命」なんて言葉を信じることができない。
亡くした番の記憶と、本能が求める現在のあいだで引き裂かれながら、
それでも生きてしまうΩの物語。
痛くて、残酷なラブストーリー。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる