ローズゼラニウムの箱庭で

riiko

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第四章 番

87、夏休み 10 ※

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「先輩、お世話になりました。とても楽しかったです。ありがとうございます、あっ、伊藤さんも長い時間ありがとうございました」

 運転手の伊藤さんは、暑いのにわざわざ車を開けてくれて俺に手を貸してくれた。優しく、とんでもございませんと丁寧に言ってくれた。先輩は車の中では、ずっとイチャイチャしてきていた。俺は、やっと家の前についてホッとしていた。

 でも先輩のその態度は、俺に責任があるというのもわかるから、そのまま好きにさせた。

 俺がおとといの夜、自ら先輩を受け入れたから。そこから優しく抱いてくれたが、相当溜まっていたのか、翌日の夕方までは抱かれていた気がする。

 少し休み、風呂に入れられて、食事をとり、そしてまた抱く。まるで発情期だなって思わなくもなかったが、それでも先輩がやりたいように受け入れた。

 俺も初めてそんな感情になって、戸惑っている。でも、夏のせいだと思い深く考えないようにした。

 先輩からは週末に会う約束を取り付けられていた。俺との夏休みに満足したのか、笑顔でキスして、またねって別れた。

 岩峰家に戻り、みんなにお土産を渡し楽しんで過ごしていたら、夜遅くに勇吾さんは帰ってきた。

 色々聞きたいからと眠る前に勇吾さんの自室に呼ばれて、十日間何をしたかをざっと話した。もちろんどれだけ抱かれたとか、意見の違いがあったとかは言わなかった。

 勇吾さんに嫉妬しているとか、そういう先輩の感情は何も伝えずに出来事だけを話した。海がきれいだったとか、魚釣りをしたとか、そんな感じだ。

「楽しめたみたいだね、良かった」

 俺の髪を梳きながら話している。あれ? 勇吾さんってこんな表情する人だった? きょとんとしていると。

「海そんなに好きだったの? 今まで連れて行ってあげられなくてごめんね。これからの夏の家族旅行は海にしよう」
「ううん、初めて行って興奮したけど、勇吾さんとの家族旅行ならどこでもいい!」
「そう? でも良太君の行きたいところ連れて行ってあげたいな、考えてみてね」
「うん、ありがとう」

 勇吾さんが手を取ってきたので、俺もそのまま立った。手を引かれてベッドの上に座らされた俺はなんだろう? そう思ったら勇吾さんが、体が無事か見せてと言ってきた。どういう意味かわからなくてきょとんとしていたら、俺のパジャマのボタンを一つ一つ外してきた。

「え? 何?」

 器用にボタンを外しながら、上着を脱がして俺の上半身を見た。俺はとっさに手で隠したけど、病気のようにたくさん付いている跡は隠せるはずもなく、すぐに勇吾さんの目が険しくなった。

「酷いね」
「あっ」

 そっと触って確かめる。乳首を掠めた時ゾワっとして、俺の声が漏れた。

「散々抱かれたんだ……。気持ち良かった?」
「勇吾さ…ん? あんっ! やっ、」

 乳首を念入りにこねられる。どうしたんだろう。なんでこんなことをするのかが、わからない。

「勇吾さん、やめて……この体に、幻滅したの?」
「いや、違うよ。君は嫌がって旅行に行ったのも知っていたし、上條君と一緒に過ごすなら抱かれるのもわかっていた。だけど良太君があまりに楽しそうに話すから、もしかしたら上條君を自分から受け入れたのかと思って」

 なんでわかるのだろう。

 そうだけど、最後は自分から抱いてって言ったけど。でも、勇吾さんにそれを知られるわけにはいかない。

「確かに、旅行は初めての経験で楽しかったけど、つがいを受け入れた以上、抱かれるのはしょうがないと思って好きにさせている。だけど心はいつだって反対のことを感じていて、苦しい」
「そうだよね、ごめん。年甲斐もなく嫉妬した」
「ううん、嬉しいよ。勇吾さんでもそんなこと思ってくれるんだ」
「君は僕をどういう立ち位置で見ているのかな?」
「先輩に嫉妬とか言われるとむかってするけど、でも好きな人にそう言われると嬉しい!」

 そこで勇吾さんが優しい顔になった。

「まあ、君が僕を好きでいてくれるのなら今は良しとしようか、上條君も報われないね。少し同情するよ、それにしても体は大丈夫だった?」

 改めて、人から指摘されると恥ずかしい。俺は赤くなって、大丈夫って言った。情事の詳しい内容までは言えなかった。そもそも夢中で何をしていたのかまで覚えてない。

「後ろも見せて?」
「えっ、恥ずかしいよ」
「最終日はほぼやりっぱなしだったんだろう? きちんと診察させて、嫌がることはしないから」

 このキスマークの後なら、新しいものだってわかったのだろう。勇吾さんは初めからそのつもりだったのか、手袋をつけ始めた。なぜだか医療用ローションもあるし……。まあ、抵抗してもしょうがないし素直にズボンを脱いでベッドに四つん這いになった。

「恥ずかしいから、早く終わらせてね」
「やけに素直じゃない? それにこんないやらしい姿勢取れるようになったなんて、上條君に躾けられたの?」
「えっ、こんなかっこ先輩の前でしないよ? あんっ」
「この手袋は対オメガ用の医療用だから、入れても拒絶反応は起こらないからね、楽に息をして」

 話している最中から、ズボって勇吾さんの指が入ってきた。俺はフーフーって必死に感じないように耐えた。

「うん、中は大丈夫そうだけど、良太君、この数日ですっかり感じやすい体になったんだ、ここは?」
「やっ、ああぁぁっ――や、やめてっ」

 俺の後孔からどろっと、オメガ特有の愛液が出たのを感じた。

「うん、いい反応だ」
「だめ。気持ち良すぎて、あっ、ああっ、またきたっ、んんん、あっ、そこだめ!」

 指がだんだん増やされて、先輩に開発されたあの場所に届いた。

「ぐちょぐちょだ、ここも気持ちいい?」
「あっ、も、だめ」

 どうしたというのだろう、勇吾さんにこんな性的な触られ方をされたのは初めてだった。手袋をしているからか、全く拒絶感もなく、ただただ気持ちよかった。

「うん、たくさん出たね。じゃあ、精液と後ろの液を採取して、検査に出すから。前は自分で精液をこの試験管に採取して。もう少し濡らして、良いところを刺激していてあげるから、思いのままに感じて」
「え? やだっ! あんっ、むり、はぅっ」
 
 勇吾さんの手が抜けたら後ろからじわって液体が流れたのを感じた。ハアハアと言っていると、今度はひっくり返されて仰向けにされた。

 できないんじゃしょうがないねって、手袋越しに前も擦られて前でも達し、手際よく試験管に精液を入れられた。

 俺はどっと疲れてそのまま勇吾さんのベッドで眠った。明け方目が覚めると、勇吾さんの寝顔が目の前にあって驚いた。でも嫌じゃなかった。先輩の顔を寝起きで見ると刺激が強くて毎回ドキドキしちゃうけど、勇吾さんの顔は安心する。

 俺は安心しきって、寝ている勇吾さんに抱きついて、それだけでは満足できなくなり、勇吾さんの腕を動かして俺の体にまわして、自分から抱きしめられるポジションを作った。満足していると、上からクスクスって笑い声がして、恥ずかしかった。

「もう! 起きていたの? 恥ずかしいじゃん」
「違うよ。可愛い手に触られて、もぞもぞしていたから起きちゃった。そしたら良太君一生懸命、僕の腕の位置を変えているから、おかしくなっちゃって」
「……起こして、ごめんね?」

 恥ずかしいやらなんやらで、変な感情の声になってしまった。

「せっかく良太君がこんな良いポジション作ってくれたから、このまま二度寝しようかな、おやすみ」
「もう……」

 そう言いながらも、俺も勇吾さんのあったかい体温に包まれて眠くなった。勇吾さんが一層深く自分から抱きしめてくれたから、嬉しくなった。

 ここは安心する。

 やっと俺の本来いるべき場所に帰ってこられたんだ。俺の場所はここだ、間違えたらいけない、そう自分に言い聞かせた。
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