ローズゼラニウムの箱庭で

riiko

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第五章 戸惑い

95、二度目の発情期 1

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 ジジイからは、あまり上條に甘い餌ばかりは与えられないと言われた。いったい何があったのだろう、ビジネスの方で苦虫を食わされたと言っていた。

 先輩は何したんだろう。

 いったん俺は席を外され、勇吾さんとジジイが二人で話し合いをしていた。

 そして数分後、ジジイから改めて今回の説明をされる。それはいきなり決定事項だった。

「二度目の発情で不安定になるのはわかるが、ここにはオメガ研究の権威がいる、だからつがいがいない発情を耐えて見せなさい」

 これで耐えられないようなら、二年後も考え直す必要があると言われた。それはどういう意味だろう、三行半を下されるかのようだった。

 夏休みの俺の不安定な行動はジジイの耳にもちろん入っていた。二年後こいつ使えるのか? と思ったのだろう、だから発情を一人で耐えられるかの実験でもするのか? よくわからない。

 研究に役立つデータが欲しいと言っていたから、ただ俺のいく末、云々だけではない。

 計画は今回の発情を急な発情に見立てる。

 まだ発情の周期が安定してないので、予定より早くきてしまった。そして、今まで薬で抑えていたオメガ性でもあるから、入院して見守る必要があるので、今回は先輩の出番は無いと知らせる。

 そんなことしても、あのアルファだよ? 先輩がこっちに来ちゃうんじゃないの? そう言ったら、勇吾さんに主治医として必ず守るよと言われた。

 発情に苦しむ俺に、先輩の血液や精液から採取した液体を注射して抑えるという名目で、勇吾さんは先輩の血液などを採取する。

 実はこれが目的みたい。

 今後の薬開発資料として、俺のつがいのデータが欲しいんだって、そのための茶番劇。普通に頼んでも、上條の血なんかもらえないからねと勇吾さんは言っていた。

 この茶番は発情期だからって俺を自由にできないと教える、俺の所有権はまだ桐生だと知らしめるのだと。そしてつがいである先輩の血液のサンプルを手に入れる、それが目的だった。

 でも俺の発情は? ほんとに大丈夫なのかな?

「それについては問題ないよ。実は抑制剤も数種類試してみたかったんだ。どれが合うのか、今後のためにも早く探したほうがいい。つがいがいるオメガは必要ないから、いざって言う時困るんだよ」

 だからそのために先輩から離れる必要もあったみたい。最悪、薬が効かなくても、もらったサンプルを注入すれば大丈夫だから心配しなくてもいいって言われた。

 俺、やっぱり人体実験の検体だよなって、なんだか悲しくなった。

「良太君、そんな顔しないで? これは君が二年後に自由になるのに必要な行為だよ。できれば何も心配せず快楽に溺れさせてあげたいけど、でも僕だって君を愛しているんだ、それもわかって?」

 えっ、勇吾さんどうしたのだろう。ここ、ジジイの家、そして目の前にはジジイがいる。俺はいきなりそんなこと言われて、真っ赤な顔になった。それを見てジジイが微笑ましいと笑っていた。

「おお、二人はいつの間にか愛を育んでいたのか。これじゃ上條の入る隙もないかな」
「総帥、僕は良太君に惚れています。だから彼を必ず幸せな方へと導きます。ただそれには苦痛も伴いますが」
「勇吾さん……」

 そんな勇吾さんの真剣な告白に、ジジイは真面目な顔で俺に向き合ってきた。

「良太も、あまり岩峰君を悲しませるような行動は控えなさい。彼の愛情に答えてあげられるようになるといいな」
「……はい」

 勇吾さんは俺の手を握って、大丈夫って言ってくれた。

「今回は僕が医者として、つきっきりで君の発情期を見届けるから、何も心配ないよ」

 俺は複雑な気持ちになったけど、この人たちに従うべきなのは決まっているのだから、大人たちの決定に俺は素直に頷くしかできなかった。
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