ローズゼラニウムの箱庭で

riiko

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第八章 束の間の幸せ

177、決着 1 ※

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「良くん、これね、プレゼント!」
「ん? なんだろ」

 可愛い岬が幼稚園から帰ってくると、まっさきに俺にぴたっとくっついてきた。俺はそんな岬の頭を撫でてから、ありがとうって言ってプレゼントというものを受け取った。

 それは器用に折り紙でできた、箱だった。

「可愛いね、岬すごいな」
「でしょ! ねっ、開けてみて」

 俺はフフって笑って、一つ開けると中からは一回り小さい箱が出てきた。

「うわっ、これ岬が作ったの? ほんとすごい……」
「ふふふ――。最近入ってきた先生がねっ、一緒に作ってくれたの! もう一回あけられるよ?」

 そして最期の箱を開けると、中からは手紙が出てきた。俺はなんの迷いもなく、可愛いことをするなと思って、どれどれって中の手紙を開けようとした。最後のプレゼントは似顔絵か何かかなって思っていた。

「あっ、それはね、明日ぼくが幼稚園に言ってからじゃなきゃ見たらいけないんだよ」
「あはっ、なにそれ」

 俺はクスクス笑った。

 可愛いな、この頃ってよくわからないルールがあるからな、あまり詮索せずに手紙をしまって頭を撫でた。そしたら岬は満足したのか絵本を持ってきて読んでくれとおねだりしてきた。ころころと興味が変わるのも可愛くてたまらなかった。

 その日の夜、勇吾さんにその箱を見せた。

「岬は本当に可愛いね。俺これから母親として頑張るね」
「岬もこんなもの作れるようになったんだ、ちょっと妬けるな。良太君は僕よりも好かれているし、それに僕だって良太君にはいろいろプレゼントしてるつもりなのに、岬には負けるな」
「勇吾さんは岬に? 俺に? どっちにヤキモチ妬いているの。そんな必要ないくらい俺たちは勇吾さんを愛しているのに、勇吾さんも可愛いよ」

 そんな話を寝る前にベッドでしていたから、そのまま勇吾さんに抱きついてキスをした。

「よし! 本格的に子作り開始しようか? 岬に兄弟ができれば、また良太君を独り占めできるしね、可愛い子供産んでくれる? 次の発情期に作ってもいいかな?」

 子供……勇吾さんの。そんなことを言われてハッとした、俺はこの結婚を現実的に考えてなかったかも。

「良太君? まだ早かったかな?」
「あっ、ううん。そんなことない。もう本当に結婚して家族になるのが目の前にきているんだなって思っただけ。ねえ、今夜も抱いてくれる?」
「もちろんだよ、君からねだってくれるなんて嬉しいよ」

 そう言いながら、勇吾さんは俺のパジャマのボタンを外しはじめた。そして俺の顎を触って首まで手が入ってくる。

 これが勇吾さんの始まりの合図。いつもの流れ、まるで神聖な儀式が始まるかのように、うなじを触ってから始まる行為。

「っう、んっっ」

 ピチャピチャとお互いの唾液を交わる音がする。そして勇吾さんの吐息と、俺の収まりきらない声。

「んんっ くちゅっ、ごくんっ」

 キスの合間に、勇吾さんの唾液を飲み込む。勇吾さんはこの行為が好きみたい。自分のモノだって自覚できるのかな? オメガがつがいの体液を入れると安心する。その行為を自分達がしていると思うと、俺も勇吾さんとの繋がりを深く感じられるから、実は好きだ。変態みたいだけど、勇吾さんの唾を飲むことで改めて感じてしまう。

「あんっ、美味しいっ」

 執拗に乳首をいじられて、俺の下腹部からのだらしのない欲望もだらだらと流れてくる。腰が勝手に揺れてくるので、勇吾さんの股間にすり寄せるように動くと、乳首を触っていた手が下に降りてくる。既に前はち上がっていたので、すぐにピクってなってたえられなくなった。

「あっ、はんっ、勇吾さん、後ろも」

 最近では、俺の男根は意味をなさないモノとなっている気がする。後ろさえ満足すればイケる体になっていた。前よりも後ろをどうにかして欲しくてたまらない。

「良太君、もう前も後ろもびちゃびちゃだよ、キスと胸だけで感じちゃった?」
「うん、勇吾さんに愛されてるって思うだけで濡れる体になっちゃったよ、そんな俺は嫌?」
「嫌な訳ないよ、すごく嬉しい。気持ちいい?」

 言葉はかわしながらも、勇吾さんの長くてしなやかな指が後の孔に入ってきた。ゆっくりと進んでくるそれに俺は歓喜した。

 俺の前を触りながらも、後ろも丁寧にほぐしてくれる。なんとも言えず、気持ちがいい。まだ勇吾さんの、はちきれそうになっているモノをれても無いのに、これだけでも達してしまいそうだった。

「あんっ、気持ちいい! もうれて。イッちゃいそうだよ」
「ふふ、一度いっとこうか?」
「やだ! これがいい。勇吾さんはこんなになってるのに、なんで我慢できるの?」

 俺は手をそっと伸ばして、勇吾さんの硬くなったモノを掴んだ。勇吾さんは、うって言っていたから限界なんだってわかった、それなのにいつも、いつも俺に気を使ってくれる。

 アルファだったら本能が勝って、自分の欲を抑えられない。でもベータだからなのか大人だからなのか、はたまた俺みたいなオメガにはそこまで欲望を引きずられないのかはわからないけど、でもいつも良識的で、たまにこの人を狂わせてみたいって思う。

 どうでもいいから、欲望に駆られて酷く扱うくらい俺に溺れて欲しいとも思う。やっぱり俺はオメガなんだなって、少し失望した。アルファに我を忘れて貪られることすら喜びを感じていたんだ。

 それをベータの勇吾さんにも、そんな最低なことを求めてしまいそうになる。こんなに大切に大事に扱われているのに、物足りないなんて。

「勇吾さん、そんなに優しく扱わないで。俺、オメガだよ? 雑にしてくれても快感を拾える」

 勇吾さんがそれを聞いて、ゆっくりと後孔に自分の亀頭を擦り付けた。俺はその感触に期待して後ろからまた甘い蜜を垂らした。

「あっ」
「僕は君を雑には扱わない。大切だから君をゆっくり求めたいし早急に繋がるコトはしたく無いんだよ? 愛している、これが僕のやり方だ。他の誰かと比べないで、僕の愛し方覚えて欲しい……」
「えっ、あっ、ああっっっっ……あん」

 勇吾さんの言ってくれた言葉を考えようとしたけど、ダメだった。入ってきたそれに意識は持っていかれた。ゆっくりときたかと思ったら、じわじわと際奥に到達して、そして一旦抜かれては、抽挿ちゅうそうが始まると、もう後ろは勇吾さんのモノで自分の中を気持ちよくさせることしか考えられない。というか気持ち良すぎて何も考えられない。

「はっ、あっ、あっ」

 その間も、うなじにチクっとした痛みがあったが、それすらも快感の一部となって勇吾さんを締め付けた。

「良太君、気持ちいいよ。愛している」
「んっ、うんっ、おれ、も……っ」

 勇吾さんは最後に俺の中にジワっと射精をして、俺の体もまたビクンってなって快感に溺れていった。ズルっと勇吾さんが中から出てく。中の液体も一緒に外に出ていく刺激だけで、また快楽を拾ってしまった。

 普通の日は限界まで抱かれることはない。

 週末はもう少し何度かするけど、余力が残る程度で終わる。こういう抱かれ方に慣れてきた。勇吾さんとのセックスで気を失うのは発情期と、この間のホテルでの時だけだった。

 これから夫婦としてセックスが日常の一つになるなら、こういう穏やかな就寝前のひと時もいいなって感じる。

 勇吾さんは情事の後も気だるいだろうに、ぎゅっと抱きしめてくれて俺のお尻をさわさわと触って、キスを繰り返してくれる。そんな優しさにまたキュンってする乙女な俺もいる、恋しているんだろうな。

「勇吾さん、好き……きもち、いいっ。こんな穏やかな夜がこれからも続くといいな」

 俺の頭を撫でながら勇吾さんは続くよって言った。そのまま俺は安心したのと適度な運動で疲れたのもあって眠りの世界へと入っていった。

 明日はいよいよ、桐生と岩峰の共同開発したオメガ新薬の発表が控えている。

 そしてその日に俺は勇吾さんと正式に籍を入れて夫婦となる。その記者会見も含まれているのだ。世間にはそのことはもう発表されていて、明日で俺は本当の意味で勇吾さんのものとなるのだ。

 どうか無事にコトが運びますように。

 最後に先輩と会った時の様子だけが未だに引っかかって、胸の中はモヤモヤしたままだったが、明日になれば全て終わってスッキリするだろうと簡略的に考えていた。
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