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番外編
6、お酒はハタチを過ぎてもほどほどに!
しおりを挟む十歳で天涯孤独になり絢香に拾われる。そして十四歳でオメガオークションにかけられて実の祖父に救われ、勇吾さんと岬に出会い俺の世界が少しずつ広がる。
十六歳には念願の学生に戻れた。そこで俺は運命の出会いを経験して恋をする。
二年間の番との学生生活の後、俺は最愛の桜を捨てて勇吾さんの婚約者になった。わずか半年だったけれど、自分の使命を忘れ、ただただ愛のある家に囲われて、勇吾さんと岬、絢香と華との、誰にも邪魔されない家族としての生活を味わった。
いろんなことがあり、結局は桜と結ばれる。そこは今思い出してもちょっと怖いからあまり触れたくないけれど、十八歳で監禁生活になり妊娠。
死を決意した俺は、最愛の番と腹を割って全てを吐き出し、大切な人達に見守られる中、やっと幸せを見つけた。
そこからは心から安心できる、箱庭を作り上げてきた。
十九歳で出産、そして大学入学などもあり、慌しすぎる十代はあっという間に過ぎていった。
「うっ、うっ、おれって、振り返るとすんごく酷い人生じゃない?」
「な、なにそれ。うう、ぼく知らなかったとはいえ、過酷すぎて、吐きそうっ、うえっ、あっちょっと吐いた、あははははぁ」
「きちゃな――い、あははっ、吐いてないし! 口から出ているのししゃもだから、ししゃものあたま出しただけじゃん、あははは!! うけるぅ」
「良くんだってさ、うはっ、鼻からそうめんでてるからぁ!」
「「あははは――っ!!」」
今日も今日とて親友の相原君こと、光希と楽しんでいた。コトの始まりは月に一度のランチの時だった。光希も授乳を終えておうちの人に子供を預けて、俺もお義母さんに預かってもらって、久しぶりに子供なしオメガ二人きりで楽しむことにした。
そして、光希が言ったんだ。
「僕、授乳も終わったしお酒飲んでみたい!」
「えっ、でも俺とでいいの? 初めての酒は旦那とじゃなくても?」
「うん、だってああ見えて潤ってお酒嫌いなんだもん、だから僕の二十歳の初めてのお酒は、親友の良君と楽しんでみたいな、今日は子供もいないしせっかくだからさ」
「そんな、俺と初めてを? いいよ、飲もう!!」
その言葉に俺はちょっと感動してしまった。
実は酒は得意ではないし、桜からは自分以外の前では絶対飲むなと言われているんだけど、光希だしいいかな。それに安定安心の藤堂さんもいるわけだし。
俺たちオメガ会には、いつも藤堂さんもいる。いつもは俺たちがランチしてる時に二人の赤ん坊を抱きかかえて遊んでくれているという、隠密やら護衛からベビーシッターまでもこなしてくれているスーパーマンみたいな相変わらず無駄にスペックの高いイケオジだった。
いつも会う場所は広い個室。そこだけは二人の番が譲らなくて、和食、中華、イタリアン、フレンチなどその時食べる種類によって、場所は違うが、堂島君が贔屓にしている個室で安全なところしか行かせてもらえない。桜以上にやばいアルファだってことが分かってしまったよ。
そこに入れるのはもちろん藤堂さんだけ。藤堂さんがいないならオメガ二人の外出は禁止とまで言われた。俺たち信用無いのって聞いたら、光希と俺が一緒だと可愛さが増して危ないからって言われた。まあ光希はオメガ代表と言っていいほどに可愛いから仕方ないか。
今日は料亭だったので、お酒とそれにあう和食という感じで出してもらった。そして飲み始めて数分で二人とも楽しくなってしまって今に至る。
「そんな良君は、よく頑張りましたぁ!!」
「うん! 光希もあの執着アルファで良く耐えてる、えらいぞ」
「ははは、僕は潤のことは操縦できてるし、囲われるのは嫌いじゃないからねぇ、ぎゃははは、良くん、座布団がすべったぁ、あははは――」
「危ないなぁ、ああ、俺もこけるぅ――ぎゃははは」
二人ではちゃめちゃになって、隣通しでスライングしたりしてバタバタしてた。藤堂さんが何事だという風に部屋をのぞきに来たときは、もう二人とも涙を流して笑いっぱなしだった。
「俺が唯一安心して会っていいお友達の光希君にね、桜がいつも感謝してるんだぞ」
「ん? 先輩が?」
「ほら、俺に色々と番を喜ばせる行為を高校時代伝授してくれただろ?」
「あったかなぁ?」
「裸エプロンとかさ、」
「裸エプロン? エプロンを良君にあげたことはあったけど、裸で着けるとは言ってないよぉ、もう!! 良君ってエッチなんだからぁ」
「え――、あ、あれは桜が俺に裸で着ろって言って、それでそうなったんだ、えへっ」
藤堂さんが俺たちの会話を聞いて固まっている。
「お前ら、大概にしとけよ」
「なんじゃ――ぃ、俺のストーカーさんは、そういうことも全て知ってるんにゃろぉ?」
「そんなことまで知るか、ってか知りたくないわ」
俺と藤堂さんの会話を聞いて、光希がまたけらけらと笑っていた。
「良君、じゃあ僕がね、潤が一番喜ぶ誘い方をでんじゅしてあげるにゃあ」
「してほしいんにゃ?」
藤堂さんはもう諦めて、俺たちを放置して見守ることにしたらしく、一人で勝手に手の付けてない料理を食べ始めていた。
「んじゃね、りょ――くん、だっこだよ?」
「だっこ? 俺がするの?」
「うん、だっこしてっていって、こういう風に手を広げてね、顔をちょっと横にすると潤は黙ってそそそって近寄ってくるの、かあい―んだよ?」
「可愛いか? あの堂島君だよ。むっつりにしか見えない」
「ん!! もう、イイからほら、抱っこ」
俺は光希に言われた通り、光希を抱っこしたというか抱き合った。
「おい!!」
そこで藤堂さんが慌てた声で、俺たちを引き離そうとしてきた。光希はぎゅっとくっついてきて俺の口の前にピンクの可愛らしいぷるぷるの唇を寄せてきた。
「そんでねぇ、ちゅうするのぉ」
「ちゅ、ちゅうしちゃうの?」
「うん、潤ちゅうしよって誘って、こういう風にね、ゆっく――り、お口を近づけて」
うわっ、可愛い男の子代表の光希がエロイ顔で俺を誘っている、思わずお口が…ん!! んん!? 光希の口ってガサガサしてて堅くないか? って目を明けたら藤堂さんの手に光希も俺もキスをしていた。
「「ぶぶっ」」
「……そこまでだ」
「良きゅんのお口かた――いって、これ藤堂しゃんのお手てだぁ――!! この手大しゅき!!」
「俺も好きだよ、パパっ」
光希と二人で藤堂さんに抱きついた。光希はいつも藤堂さんのことかっこいいって言っていたし、俺はもう藤堂さんは俺のお父さんだと思っているから、大好きだぁ!! なんだ俺たち親友の好きな人を両方から挟んでいる。なんかいい!!
「だれがパパだ!! ガキども、いい加減にしろ。お前ら、たとえオメガ同士でもそんな触れ合いしているのバレたら、お前らの穏やかではない旦那どもがどんな行動に出るか、考えろ!! ってか二人とも離れろ。お前らなんて力で絡まってきやがるんだっ」
そこで冷ややかな声が聞こえてきた。
「何を……している。藤堂さん、両手に花とは……減給です」
「おい!! これを見ろ、どこが花だ。俺はこの怪獣たちに絡まれてるだけだ、助けろバカ野郎」
「あなたがいながら、なんで良太がこんなに酔っぱらっているんですか、しかも光希君まで」
「知らねえよ、騒がしいと思って入ってみたら、勝手に宴会が始まってたんだよっ」
俺と光希はもう夢の中、藤堂さんの優しい香りに二人ともぐっすりだった。バタバタと足音が聞こえると思ったら光希が引き離されたのが分かった。でも藤堂さん独り占めできるしそれでもいいやって思って藤堂さんに抱きついていた。
『先輩、どういうことですか!? 光希に酒飲ませて、あんたの嫁までぐてぐてで。しまいには藤堂さんに抱きつくなんて!!』
『俺だって、藤堂さんのメールで急いできたばかりだから知らないし』
『お前らの子供の世話ならまだしも、嫁のお守りまではもうごめんだ、ほらっさっさと連れて帰って処理しろ』
夢の中で三人のアルファの声が聞こえるけど、久しぶりに楽しい楽しいお食事会だったなぁって思っていたら、いつの間にか俺はサンダルウッドの香りに包まれていた。うん、この香りが一番好きだ!!
朝起きた時、頭が痛いのと同時に体中が痛かった。寝起きに桜の怖い顔があってやっちまったって思ったけど、俺も酔っぱらった中、安定の桜に散々抱かれたらしいから、これでチャラだって言ったら悔しそうな顔をしていた。
その後のお仕置きは、俺だけじゃなくて藤堂さんにも及んだ。桜だけでなく藤堂さんからも俺はその後ネチネチ怒られたのは説明するまでもない。
連帯責任ということで、愛しい雫が藤堂家で二週間のお泊り保育になってしまった。
もちろんこれは俺への嫌がらせだった、俺は愛する息子と二週間も離れて眠るという罰。藤堂さんは二週間の子守りという罰だった。藤堂さんの奥さんは雫をいつも可愛がってくれるので逆に喜んでくれたけど、藤堂さんは二週間も奥さんと夜の営みを雫に邪魔されまくって疲弊していた。
藤堂さんも嫌がらせを、かなり地味に桜から受けたのだった。
まあ、楽しかったからいいかな。お酒はやっぱりほどほどにしないとねって、後日光希と反省をした。光希は光希で思い出したくないトラウマ級のお仕置きをされたとかなんとか。内容は怖くて聞けなかったけど、あの執着アルファならやりかねないな。
次のランチ会では、旦那のネチネチしたお仕置きにどう対処するかが話題になった。アルファは怒らせると厄介だから、結果はお仕置きされない清廉潔白な生活を心がけようとまとまった。
なんだかんだと、今日も旦那の話で盛り上がれる、そんな穏やかな日だった。
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