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「コーヒー奢ってやるけん話を聞いてくれ」
翌日の放課後さっそく、いつもタバコを吸っている路地裏に黒縁を呼び出した。
微糖と無糖の缶コーヒーを手に持ち、おれは路地裏へと出た。おれが着いてから三十分程経ったのだろうか。そのくらいでようやく黒縁はやって来た。
「すみません、お待たせして」
放課後など、どうせ暇なのだから待つのは気にならない。黒縁に缶コーヒーを二本とも差し出した。遠慮していたが、無理矢理押し付けた。おれは甘党だからどちらも飲まない。飲んだとしてもカフェオレくらい、ミルクも砂糖もたっぷりでないと気が済まないのだ。
「ところで、急にどうしました?」
いざ相談するとなると気恥ずかしい。それに、呼びつけたのは良いのだが、一体何をどう聞いて良いのやら分からない。タバコに火を付け、大きく煙を吸い込み、ゆっくりと吐き出してから口を開いた。
「前にいっぱいいっぱいやって言いよったけどさ、最近はどうなん?」
おれが話したかったのはそんなことではなかった。何とも要領を得ない。これでは博士のことを馬鹿にできないな。
「ええ、まあ。大変なのには変わりないですけど、それなりに楽しくはやってますよ」
こいつは驚いた。黒縁はこの仕事を楽しんでいるのか。おれには窮屈で仕方がないというのに。
「ハル先生も、毎日生徒と楽しそうじゃないですか」
このいつの眼鏡は度が合っていないのかもしれない。そうでなければよっぽどの能天気だ。一度、その目を通して世の中を見てみたいものだ。どこをどう見ればおれが楽しそうにしているというのだろう。おれの物言いも悪かったが、こいつには一から十まで説明しないと敵わない。おれは博士からの小言をこいつに打ち明けてやった。
「ああ、難しい話ですね。でも、僕はハル先生のこと良いなって思いますよ。生徒と対等な感じが」
対等であってたまるか。おれはあいつらの一.五倍近くは長く生きているのだ。やはりあいつらはおれを同じ目線か、何なら下に見ているということが傍目にも分かるということだ。
「良い意味でですよ。生徒達も楽しそうじゃないですか」
そりゃあ人を小馬鹿にするのは楽しいに決まっているではないか。
「お前は生徒とうまくやれよんけ?」
「部活の子達とはそれなりに色んな話をするようにはなってきたけど、授業だけでしか関わらない子達はまだまだ見えてない所が多いのかなって」
何とまぁ。授業だけでも面倒なのに、こいつは放課後に部活の世話まで焼いているとな。それで仕事が楽しいときたら、こいつはいよいよ変態だ。
「おれはお前が羨ましいわ」
タバコの煙と一緒にポツリと吐き出した。黒縁は不思議そうな顔をしている。
「あんまり気にしなくて良いと思いますよ。ハル先生らしくで」
その自分らしくがもう何だかよく分からないから、わざわざお前にまで話を聞いてみようと思ったのだ。
「じゃあ、部活に戻らないといけないんで、そろそろ行きますね」
一応礼は言っておいた。何も解決はせず、黒縁の野郎が変わり者だということだけは分かった。
解決というか、そもそもおれは何を気に病んでいるのだろうか。もうそれすらも分からなくなってきた。こんな、自分に向いていない仕事をしているから、単に嫌になってきただけだろうか。
何だかもう頭の中がむしゃくしゃしてしょうがなくなったので、定刻まで路地裏で時間を潰し、十七時ピッタリで学校を後にした。嫌でもきちんと時間までは学校に居座ったのだから褒められても良いくらいだと思う。帰ってからも、どうにも胸の奥がモヤモヤするので出掛けることにした。
おれの地元、特におれの住んでいる所は、まぁ田舎だ。大学進学のためにと県外に出た際に余計に実感した。
鉄道は終点の町。バスの時刻表は空白ばかりで、約二時間に一本の間隔でしかやって来ない。周りは山と田畑ばかり。ガキの頃の遊びといったら、田んぼで野球をしたり、今日はあっちの山へ、明日は向こうの川へと探検に行ったり。
大人へと成長していくにつれ、辺鄙な場所に住んでいるものだという思いが日に日に増していくのだが、一つだけ好きな場所がある。
標高約五百メートルの山頂付近の公園。そこには、町を一望でき、街中を通り越して瀬戸内海まで、さらにはうっすらとだが中国山脈をもその視界に捉えることができる展望台が備えられている。
その自然公園へ上がる山道の途中に、少し開けた夜景スポットの様な広場がある。眼下には高速道路のインターチェンジ、煌びやかな市内の街の明かりが遠く向こうの方まで伸びており、百貨店の屋上の巨大観覧車の灯も、小指の爪程小さくだがはっきりと目に届く。
そして、特に寒く乾いた季節に空を見上げれば、何にも遮られることの無い、文字通り満天の星空が頭を覆っている。頭上には無数に星がまたたく空。目を下にやれば、山々を避けながら長く遠くに伸びて広がっていく夜の景色。おれはこの場所が好きで、何か良い事があっても悪い事があっても、決まってこここを訪ねていた。
崖ぎわに、腰掛けるのにちょうど良い岩があり、そこに腰を落ち着かせて、夜景を見ながらタバコを吸う。耳に入ってくるのは、風が周りの木々を柔らかく撫でる音だけ。一人でここに座っていると、自分とこの場所だけ世界から切り離された様にさえ感じられる。
学校に勤めはじめてからは、今日初めてここに足を運んだ。いつもの場所に座ってタバコを咥え、眼下の景色をぼんやり眺めた。たまにふと空に目をやるが、まだ初夏のこの時期、冬場の空気の澄んだ季節と比べると、その星の数は六分といったところだ。それでも充分、下界とは比べ物にならないだけの光が目に入ってくる。何を考える訳でもなく、ただひたすらに、夜の景色をこの山から見渡していた。
どれくらい時間が経ったか分からない。気にもならない。俗世の喧騒や毎日の慌しさで汚れた心を、全てこの場所が洗い流してくれている気がする。のんびり五本目のタバコを吸い終わったくらいに、携帯の着信音が鳴り響き、夢から無理矢理に叩き起こされた気になった。画面を見るとアキからだった。
「ハルさーん!今何しよん?」
「んー。何しよるかどうかで言うたら、何もしてないな」
「ほうなん?家でダラダラしよったん?」
「いや、外に出とるで」
「え?お出掛けしとん?」
「お出掛けと言われたらお出掛けやけど」
「なんよそれ!ハルさん今どこおるん?」
「どこって言われたら……山」
「山?何しによ?」
アキからの質問攻め。いつもなら厚かましいと思うのだろうが、今日はそうでも無かった。おれの心は今、とても穏やかなものだから。
「景色見にやが。おれの地元にええとこあるんや」
「ウソ?ウチもそこ行きたい!」
前言撤回。やっぱり面倒だ。
「来んでええ。ここは静かな時間を楽しむ場所なんやけん。お前みたいなやかましい奴が来たら何もかんもが台無しやわ」
「ひどー!それは言い過ぎやろ!」
受話器の向こうで頬を膨らませているのが想像できる。
「せっかくハルさん元気付けてあげようと思ってウチから電話したのに!」
大きなお世話だ。
「大きなお世話や」
「あーあ!傷付いたわ!もう知らん!」
知らないも何も、お前はおれの何を知っているのだか。
「はいはい。わざわざ電話くれたのに悪かったな」
「そんなんじゃ許さんけんね!」
本当に面倒な奴だこいつは。
「じゃあどうせえ言うんで?」
「ウチもそこ連れてって!やないと許さんけん!」
「分かった分かった。そのうちな」
「ホンマに?絶対やで!」
一気にアキのテンションが上がったのが声の調子で読み取れた。しまった。つい空返事をしてしまったばかりに。
「絶対やけんね!じゃあまたね、ハルさん!おやすみー!」
おれに断る隙を与えずに、勝手な約束を取り付けるだけして電話を切りやがった。あの野郎。まぁ、こんな適当なやり取り、アキのことだから三日も経てばすぐに忘れてしまうだろう。
静寂が戻った広場で、またタバコに火を付け、夜景に目をやった。アキも今この光の中のどこかにいるのかと考えた。どの光も一緒に見えるから、検討なんかつきっこない。すぐに考えるのを止め、タバコを吸い終わらないまま帰路へとついた。
翌日の放課後さっそく、いつもタバコを吸っている路地裏に黒縁を呼び出した。
微糖と無糖の缶コーヒーを手に持ち、おれは路地裏へと出た。おれが着いてから三十分程経ったのだろうか。そのくらいでようやく黒縁はやって来た。
「すみません、お待たせして」
放課後など、どうせ暇なのだから待つのは気にならない。黒縁に缶コーヒーを二本とも差し出した。遠慮していたが、無理矢理押し付けた。おれは甘党だからどちらも飲まない。飲んだとしてもカフェオレくらい、ミルクも砂糖もたっぷりでないと気が済まないのだ。
「ところで、急にどうしました?」
いざ相談するとなると気恥ずかしい。それに、呼びつけたのは良いのだが、一体何をどう聞いて良いのやら分からない。タバコに火を付け、大きく煙を吸い込み、ゆっくりと吐き出してから口を開いた。
「前にいっぱいいっぱいやって言いよったけどさ、最近はどうなん?」
おれが話したかったのはそんなことではなかった。何とも要領を得ない。これでは博士のことを馬鹿にできないな。
「ええ、まあ。大変なのには変わりないですけど、それなりに楽しくはやってますよ」
こいつは驚いた。黒縁はこの仕事を楽しんでいるのか。おれには窮屈で仕方がないというのに。
「ハル先生も、毎日生徒と楽しそうじゃないですか」
このいつの眼鏡は度が合っていないのかもしれない。そうでなければよっぽどの能天気だ。一度、その目を通して世の中を見てみたいものだ。どこをどう見ればおれが楽しそうにしているというのだろう。おれの物言いも悪かったが、こいつには一から十まで説明しないと敵わない。おれは博士からの小言をこいつに打ち明けてやった。
「ああ、難しい話ですね。でも、僕はハル先生のこと良いなって思いますよ。生徒と対等な感じが」
対等であってたまるか。おれはあいつらの一.五倍近くは長く生きているのだ。やはりあいつらはおれを同じ目線か、何なら下に見ているということが傍目にも分かるということだ。
「良い意味でですよ。生徒達も楽しそうじゃないですか」
そりゃあ人を小馬鹿にするのは楽しいに決まっているではないか。
「お前は生徒とうまくやれよんけ?」
「部活の子達とはそれなりに色んな話をするようにはなってきたけど、授業だけでしか関わらない子達はまだまだ見えてない所が多いのかなって」
何とまぁ。授業だけでも面倒なのに、こいつは放課後に部活の世話まで焼いているとな。それで仕事が楽しいときたら、こいつはいよいよ変態だ。
「おれはお前が羨ましいわ」
タバコの煙と一緒にポツリと吐き出した。黒縁は不思議そうな顔をしている。
「あんまり気にしなくて良いと思いますよ。ハル先生らしくで」
その自分らしくがもう何だかよく分からないから、わざわざお前にまで話を聞いてみようと思ったのだ。
「じゃあ、部活に戻らないといけないんで、そろそろ行きますね」
一応礼は言っておいた。何も解決はせず、黒縁の野郎が変わり者だということだけは分かった。
解決というか、そもそもおれは何を気に病んでいるのだろうか。もうそれすらも分からなくなってきた。こんな、自分に向いていない仕事をしているから、単に嫌になってきただけだろうか。
何だかもう頭の中がむしゃくしゃしてしょうがなくなったので、定刻まで路地裏で時間を潰し、十七時ピッタリで学校を後にした。嫌でもきちんと時間までは学校に居座ったのだから褒められても良いくらいだと思う。帰ってからも、どうにも胸の奥がモヤモヤするので出掛けることにした。
おれの地元、特におれの住んでいる所は、まぁ田舎だ。大学進学のためにと県外に出た際に余計に実感した。
鉄道は終点の町。バスの時刻表は空白ばかりで、約二時間に一本の間隔でしかやって来ない。周りは山と田畑ばかり。ガキの頃の遊びといったら、田んぼで野球をしたり、今日はあっちの山へ、明日は向こうの川へと探検に行ったり。
大人へと成長していくにつれ、辺鄙な場所に住んでいるものだという思いが日に日に増していくのだが、一つだけ好きな場所がある。
標高約五百メートルの山頂付近の公園。そこには、町を一望でき、街中を通り越して瀬戸内海まで、さらにはうっすらとだが中国山脈をもその視界に捉えることができる展望台が備えられている。
その自然公園へ上がる山道の途中に、少し開けた夜景スポットの様な広場がある。眼下には高速道路のインターチェンジ、煌びやかな市内の街の明かりが遠く向こうの方まで伸びており、百貨店の屋上の巨大観覧車の灯も、小指の爪程小さくだがはっきりと目に届く。
そして、特に寒く乾いた季節に空を見上げれば、何にも遮られることの無い、文字通り満天の星空が頭を覆っている。頭上には無数に星がまたたく空。目を下にやれば、山々を避けながら長く遠くに伸びて広がっていく夜の景色。おれはこの場所が好きで、何か良い事があっても悪い事があっても、決まってこここを訪ねていた。
崖ぎわに、腰掛けるのにちょうど良い岩があり、そこに腰を落ち着かせて、夜景を見ながらタバコを吸う。耳に入ってくるのは、風が周りの木々を柔らかく撫でる音だけ。一人でここに座っていると、自分とこの場所だけ世界から切り離された様にさえ感じられる。
学校に勤めはじめてからは、今日初めてここに足を運んだ。いつもの場所に座ってタバコを咥え、眼下の景色をぼんやり眺めた。たまにふと空に目をやるが、まだ初夏のこの時期、冬場の空気の澄んだ季節と比べると、その星の数は六分といったところだ。それでも充分、下界とは比べ物にならないだけの光が目に入ってくる。何を考える訳でもなく、ただひたすらに、夜の景色をこの山から見渡していた。
どれくらい時間が経ったか分からない。気にもならない。俗世の喧騒や毎日の慌しさで汚れた心を、全てこの場所が洗い流してくれている気がする。のんびり五本目のタバコを吸い終わったくらいに、携帯の着信音が鳴り響き、夢から無理矢理に叩き起こされた気になった。画面を見るとアキからだった。
「ハルさーん!今何しよん?」
「んー。何しよるかどうかで言うたら、何もしてないな」
「ほうなん?家でダラダラしよったん?」
「いや、外に出とるで」
「え?お出掛けしとん?」
「お出掛けと言われたらお出掛けやけど」
「なんよそれ!ハルさん今どこおるん?」
「どこって言われたら……山」
「山?何しによ?」
アキからの質問攻め。いつもなら厚かましいと思うのだろうが、今日はそうでも無かった。おれの心は今、とても穏やかなものだから。
「景色見にやが。おれの地元にええとこあるんや」
「ウソ?ウチもそこ行きたい!」
前言撤回。やっぱり面倒だ。
「来んでええ。ここは静かな時間を楽しむ場所なんやけん。お前みたいなやかましい奴が来たら何もかんもが台無しやわ」
「ひどー!それは言い過ぎやろ!」
受話器の向こうで頬を膨らませているのが想像できる。
「せっかくハルさん元気付けてあげようと思ってウチから電話したのに!」
大きなお世話だ。
「大きなお世話や」
「あーあ!傷付いたわ!もう知らん!」
知らないも何も、お前はおれの何を知っているのだか。
「はいはい。わざわざ電話くれたのに悪かったな」
「そんなんじゃ許さんけんね!」
本当に面倒な奴だこいつは。
「じゃあどうせえ言うんで?」
「ウチもそこ連れてって!やないと許さんけん!」
「分かった分かった。そのうちな」
「ホンマに?絶対やで!」
一気にアキのテンションが上がったのが声の調子で読み取れた。しまった。つい空返事をしてしまったばかりに。
「絶対やけんね!じゃあまたね、ハルさん!おやすみー!」
おれに断る隙を与えずに、勝手な約束を取り付けるだけして電話を切りやがった。あの野郎。まぁ、こんな適当なやり取り、アキのことだから三日も経てばすぐに忘れてしまうだろう。
静寂が戻った広場で、またタバコに火を付け、夜景に目をやった。アキも今この光の中のどこかにいるのかと考えた。どの光も一緒に見えるから、検討なんかつきっこない。すぐに考えるのを止め、タバコを吸い終わらないまま帰路へとついた。
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