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第18話『制服の重さだけ責任はあるのだ』
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「──異議なし。特殊回復能力者、レン。黒騎士団に正式登録とする」
イーサン団長の低く響く声が、静かな会議室に落ちた。
言葉としてはたったそれだけ。
でも、それは間違いなく、この砦の秩序と信頼のもとに置かれた“認可”だった。
(……あれ? 今のって……僕のこと、だよね?)
一瞬だけ、頭の中が空白になる。
それからじわじわと、実感が染み込んできた。
(あ……正式登録……。つまり、団員になった……んだ……)
嬉しい、というより、ただ不思議だった。
自分がこの場所で、「ちゃんと名簿に載る側」になったことが。
ふと、胸の奥にもうひとつ浮かぶ。
(……そういえば、僕……回復能力者だったな)
あれ以来、発動の機会もなかったけど──
自分でも忘れてた力に、ちゃんと意味があったんだ。
(他にもできることがあったのは……良いことかも。それに、あれ……?正式雇用ってことは、疑われて……なかった?)
ふっと胸に湧き上がる。
ずっと自分で「疑われてる」って決めつけてたのは、ルースさんがいう通り僕のほうじゃないか?
※
「制服、支給されたぞ。サイズは合うか?」
幹部会議のあと、控え室でテオさんに手渡されたのは──
黒地に銀の紋章が入った、立派すぎる制服だった。
「えっ……えっ、これ……本当に僕が?」
僕の手元にあるには明らかに場違いな、ちゃんとした騎士団の“正装”。
僕の手が触れたら汚れるんじゃないかってくらい、立派で、重くて、しっかりした生地。
「支給された以上は、お前のものだ。……ありがたく着ろ。ただし──」
テオさんは制服の袖をひと目見て、無言でぐっと引っ張った。
「……やはり少し長いな。調整しておく。任せろ」
「あ、ありがとうございます……」
言い終わる前に、もう制服は彼の腕の中から離れていた。
仕事が早いというか、判断が一瞬というか……やはりお母さんだからだろうか?
その一言一言に、細やかな気遣いが混ざっていて、胸がじんわりする。
(……不器用だけど、優しい人だよなぁ)
※
その日の午後、調整された制服を受け取って、試しに袖を通してみた。
前線用の軽装とは違う、式典や報告用の、しっかりとした一張羅。
(……あ、重みが……違う)
服が重いんじゃない。
“責任”ってやつだ。いや、“信頼”かもしれない。
それに加えて──
「おっ、レン。それ似合ってんじゃん」
「やっと正規メンバーか。遅いくらいだな」
「……あれ、ちょっと袖長くない? まあ、レンは子供サイズだからなぁ」
砦の中を歩けば、何人かの騎士たちが声をかけてくれる。
ちょっとした冷やかし混じりの言葉。
でもそれは、全然冷たくなんてなかった。
(あれ……なんか、違う)
どの言葉にも、トゲがなかった。
心から「良かったな」って、そう言ってくれてる気がした。
通り過ぎたあとの小声が、耳に届く。
「……いや、むしろ俺らが、レンに任せすぎたんだろ」
「正直、俺らが間違ってた可能性もあるって……」
「あ~、俺、間違ってない自信なんか……ねぇな……だって昔の間違いだらけだったし」
「じゃあ、むしろ減ってんじゃねーか、間違い」
僕は、思わず立ち止まった。
でも、振り返ることはしなかった。
ただ、足元の影をじっと見て、少しだけ息を吐いた。
(……ああ……そうか)
胸の奥にあった重苦しいものが、少しずつほどけていく。
ずっと「責められてる気がする」って思ってた。
でもそれ、たぶん──自分で自分を責めてただけだ。
(……社畜メンタル、恐るべし)
会社時代の記憶がよぎる。
自分が悪くなくても、責任を取る立場にされてきた日々。
それはコンビニでも一緒だった。
だから、誰かの視線に勝手にビクついて。
「自分のせいかもしれない」って、無意識に思い込んでた。
でも今は──違う。
「信じてくれてる」って、ちゃんと分かる。
肩の力が、ようやく抜けた。
制服の重みが、誇りに変わった瞬間だった。
(……うん、大丈夫。きっと、これからは)
もう少しだけ、ちゃんと前を向ける。
少しずつでも、自分のことを信じてみようと思える。
砦の廊下の窓から、夕焼けが差し込んでいた。
誰に言うでもないぼやきが、砦の空にゆっくりと溶けていった。
ところで。
この世界でこそ僕はミニマムっぽいが、あっちでは極々普通の背丈で子供サイズじゃないのだが?!
そこは訂正させて頂きたい。
———————
投稿は毎日7:30・21:30の2回です。
リアクションやコメントいただけると嬉しいです♪
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イーサン団長の低く響く声が、静かな会議室に落ちた。
言葉としてはたったそれだけ。
でも、それは間違いなく、この砦の秩序と信頼のもとに置かれた“認可”だった。
(……あれ? 今のって……僕のこと、だよね?)
一瞬だけ、頭の中が空白になる。
それからじわじわと、実感が染み込んできた。
(あ……正式登録……。つまり、団員になった……んだ……)
嬉しい、というより、ただ不思議だった。
自分がこの場所で、「ちゃんと名簿に載る側」になったことが。
ふと、胸の奥にもうひとつ浮かぶ。
(……そういえば、僕……回復能力者だったな)
あれ以来、発動の機会もなかったけど──
自分でも忘れてた力に、ちゃんと意味があったんだ。
(他にもできることがあったのは……良いことかも。それに、あれ……?正式雇用ってことは、疑われて……なかった?)
ふっと胸に湧き上がる。
ずっと自分で「疑われてる」って決めつけてたのは、ルースさんがいう通り僕のほうじゃないか?
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「制服、支給されたぞ。サイズは合うか?」
幹部会議のあと、控え室でテオさんに手渡されたのは──
黒地に銀の紋章が入った、立派すぎる制服だった。
「えっ……えっ、これ……本当に僕が?」
僕の手元にあるには明らかに場違いな、ちゃんとした騎士団の“正装”。
僕の手が触れたら汚れるんじゃないかってくらい、立派で、重くて、しっかりした生地。
「支給された以上は、お前のものだ。……ありがたく着ろ。ただし──」
テオさんは制服の袖をひと目見て、無言でぐっと引っ張った。
「……やはり少し長いな。調整しておく。任せろ」
「あ、ありがとうございます……」
言い終わる前に、もう制服は彼の腕の中から離れていた。
仕事が早いというか、判断が一瞬というか……やはりお母さんだからだろうか?
その一言一言に、細やかな気遣いが混ざっていて、胸がじんわりする。
(……不器用だけど、優しい人だよなぁ)
※
その日の午後、調整された制服を受け取って、試しに袖を通してみた。
前線用の軽装とは違う、式典や報告用の、しっかりとした一張羅。
(……あ、重みが……違う)
服が重いんじゃない。
“責任”ってやつだ。いや、“信頼”かもしれない。
それに加えて──
「おっ、レン。それ似合ってんじゃん」
「やっと正規メンバーか。遅いくらいだな」
「……あれ、ちょっと袖長くない? まあ、レンは子供サイズだからなぁ」
砦の中を歩けば、何人かの騎士たちが声をかけてくれる。
ちょっとした冷やかし混じりの言葉。
でもそれは、全然冷たくなんてなかった。
(あれ……なんか、違う)
どの言葉にも、トゲがなかった。
心から「良かったな」って、そう言ってくれてる気がした。
通り過ぎたあとの小声が、耳に届く。
「……いや、むしろ俺らが、レンに任せすぎたんだろ」
「正直、俺らが間違ってた可能性もあるって……」
「あ~、俺、間違ってない自信なんか……ねぇな……だって昔の間違いだらけだったし」
「じゃあ、むしろ減ってんじゃねーか、間違い」
僕は、思わず立ち止まった。
でも、振り返ることはしなかった。
ただ、足元の影をじっと見て、少しだけ息を吐いた。
(……ああ……そうか)
胸の奥にあった重苦しいものが、少しずつほどけていく。
ずっと「責められてる気がする」って思ってた。
でもそれ、たぶん──自分で自分を責めてただけだ。
(……社畜メンタル、恐るべし)
会社時代の記憶がよぎる。
自分が悪くなくても、責任を取る立場にされてきた日々。
それはコンビニでも一緒だった。
だから、誰かの視線に勝手にビクついて。
「自分のせいかもしれない」って、無意識に思い込んでた。
でも今は──違う。
「信じてくれてる」って、ちゃんと分かる。
肩の力が、ようやく抜けた。
制服の重みが、誇りに変わった瞬間だった。
(……うん、大丈夫。きっと、これからは)
もう少しだけ、ちゃんと前を向ける。
少しずつでも、自分のことを信じてみようと思える。
砦の廊下の窓から、夕焼けが差し込んでいた。
誰に言うでもないぼやきが、砦の空にゆっくりと溶けていった。
ところで。
この世界でこそ僕はミニマムっぽいが、あっちでは極々普通の背丈で子供サイズじゃないのだが?!
そこは訂正させて頂きたい。
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