捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?

めがねあざらし

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第47話:歪み  

 ――私はずっと、見ていた。

 あの子が屋敷に来たその日から。

 父が連れてきた、妙に静かな子ども。
 同じ血を分けた弟でありながら、どこか現実味の薄い顔をしていた。

 その瞳には、私が見ている世界とはまるで違うものが映っていた。
 人間の心をそのまま写すような、透き通った色。

 ……正直、最初は興味などなかったのだ。

 だが、あの子が母に打たれ、泣きながらも必死に立ち上がる姿を見たとき、私は強く思った。

 ――ああ、この子が……欲しい、と。

 リオンは力が発現できないと言われていた。
 だが、私は知っていた。
 彼の魔力の“質”は、アルファである私などよりはるかに上だ。
 ただ発揮する“触媒”を持たないだけ。
 あの子の身体そのものが、未完成の奇跡の器だった。

 肌は白く、髪は光を飲むように柔らかい。
 泣くとき、喉の奥で震える声が、どうしようもなく甘い。

 ――酷く、愛おしい。

 屋敷に閉じ込めてしまいたいと思ったのは、その頃からだ。

 母も妹も、皆、愚かだった。
 目の前の宝に気づかない。

 リオンには私こそが相応しい。

 私が教え、
 私が守り、
 私が壊すべきだった。

 あの夜――
 私の指示で放った者たちは、彼を痛めつけるつもりはなかった。
 少し怯えさせて、私が“救う”段取りだった。
 そうして彼を私の別邸に運ばせ、二度と家には戻さないつもりでいた。

 ……だが、狂ったのだ。

 たった一夜で、あの子は消えた。
 どこかへ逃げて、あの獣人の手に落ちた。

 ――奪われた。

 あれは本来、私の手の中にあるべきだったものだ。
 リオンの力も、身体も、名前も。
 あの子は生まれた時から、私のために用意された“奇跡”だ。

 私の血を継ぐ子どもを宿せるのは、あの子しかいない。
 私の傍にいることでしか、彼は価値を持たないのだから。

 ……リオン。

 君はまだ理解していないのだろう。
 君の“生きる意味”を、君自身が決めることなどできはしない。
 その権利は、最初から私にある。

 愛しいリオン、帰っておいで。




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