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第51話:歪んだ愛の証明
――これは、正しいことだ。
そう証明するように、男は笑った。
クラウス・ヴァルセリウス。
その目に映るのは、ひとりの弟ではなく――
手に入れ損ねた“理想”だった。
ベッドの上、浅い呼吸を繰り返すリオンの額には、汗が滲んでいた。
熱に浮かされた瞳は焦点を失い、唇は微かに震えている。
身体の奥から生まれる疼きを、必死に堪えているのが見て取れた。
クラウスは、まるで壊れ物を扱うように、その髪を撫でた。
「苦しいだろう、リオン。……可哀想に」
慈しみを装うその声は、限りなく優しい。
しかし、その優しさは救いではなく、支配のための手段だった。
「もう、我慢しなくていい。私が全部、受け止めてやる」
指先が、頬のすぐ上で止まる。
触れない。だが、触れるかもしれない距離。
それを繰り返すたび、リオンの身体はびくりと反応した。
拒絶の反射なのか、誘発された反応なのか。
その区別をつけることすら、リオンには難しくなっている。
クラウスはその様子に、静かに目を細めた。
(やはり……可愛い。これほどまでに私を求めるように震えて……)
彼の中では、現実がゆっくりと歪んでいた。
それは欲望ではなく、愛の証明。
奪うことではなく、取り戻す正義。
「あの獣が……お前を、私から」
吐き出された言葉は、嫉妬の匂いを濃く帯びていた。
「でも大丈夫だ。お前は、戻ってきた。……そうだろう? これは、“正当な回収”なんだ」
囁きはまるで聖句のようで。
己の狂気を、祈りの形で正当化していく。
クラウスの手が再び伸び、指先がリオンの首筋に触れかけた。
その瞬間、リオンの唇が、かすかに動いた。
「……ちがう……」
微かに震える声。
それは、かろうじて残された“自我”の灯火だった。
クラウスの動きが止まる。
彼の瞳に、わずかな剣呑さが走る。
「……違う?」
リオンは目を開けた。
焦点の合わないその瞳が、それでも真っすぐにクラウスを見た。
「こんなもの……愛じゃない。……殿下は、僕を閉じ込めたりしなかった」
喉からこぼれる声はかすれていたが、確かだった。
クラウスの笑みが、わずかにひきつる。
「殿下……? ああ、あの獣のことか」
その言葉に、リオンの身体がぴくりと反応する。
まるで、それだけで“生き返る”ように。
「……違う。あの人は、あなたとは、違う」
クラウスの表情が崩れた。
嫉妬と怒り、そして理解できない何かが交じり合う。
だが、リオンの意識はそこで途切れかける。
「可愛いリオン……どうあっても、私の物だ……」
意識が途切れる前、クラウスの声が呪いの言葉のように闇に落ちた。
そう証明するように、男は笑った。
クラウス・ヴァルセリウス。
その目に映るのは、ひとりの弟ではなく――
手に入れ損ねた“理想”だった。
ベッドの上、浅い呼吸を繰り返すリオンの額には、汗が滲んでいた。
熱に浮かされた瞳は焦点を失い、唇は微かに震えている。
身体の奥から生まれる疼きを、必死に堪えているのが見て取れた。
クラウスは、まるで壊れ物を扱うように、その髪を撫でた。
「苦しいだろう、リオン。……可哀想に」
慈しみを装うその声は、限りなく優しい。
しかし、その優しさは救いではなく、支配のための手段だった。
「もう、我慢しなくていい。私が全部、受け止めてやる」
指先が、頬のすぐ上で止まる。
触れない。だが、触れるかもしれない距離。
それを繰り返すたび、リオンの身体はびくりと反応した。
拒絶の反射なのか、誘発された反応なのか。
その区別をつけることすら、リオンには難しくなっている。
クラウスはその様子に、静かに目を細めた。
(やはり……可愛い。これほどまでに私を求めるように震えて……)
彼の中では、現実がゆっくりと歪んでいた。
それは欲望ではなく、愛の証明。
奪うことではなく、取り戻す正義。
「あの獣が……お前を、私から」
吐き出された言葉は、嫉妬の匂いを濃く帯びていた。
「でも大丈夫だ。お前は、戻ってきた。……そうだろう? これは、“正当な回収”なんだ」
囁きはまるで聖句のようで。
己の狂気を、祈りの形で正当化していく。
クラウスの手が再び伸び、指先がリオンの首筋に触れかけた。
その瞬間、リオンの唇が、かすかに動いた。
「……ちがう……」
微かに震える声。
それは、かろうじて残された“自我”の灯火だった。
クラウスの動きが止まる。
彼の瞳に、わずかな剣呑さが走る。
「……違う?」
リオンは目を開けた。
焦点の合わないその瞳が、それでも真っすぐにクラウスを見た。
「こんなもの……愛じゃない。……殿下は、僕を閉じ込めたりしなかった」
喉からこぼれる声はかすれていたが、確かだった。
クラウスの笑みが、わずかにひきつる。
「殿下……? ああ、あの獣のことか」
その言葉に、リオンの身体がぴくりと反応する。
まるで、それだけで“生き返る”ように。
「……違う。あの人は、あなたとは、違う」
クラウスの表情が崩れた。
嫉妬と怒り、そして理解できない何かが交じり合う。
だが、リオンの意識はそこで途切れかける。
「可愛いリオン……どうあっても、私の物だ……」
意識が途切れる前、クラウスの声が呪いの言葉のように闇に落ちた。
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