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1巻

1-2

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 ――四十二歳ともなると、二十代前半の小娘なんて恋愛対象外なのかな? もっと大人な女性がいい?
 年齢はどうすることもできないものの、せめて見た目だけでも――とスマホを取り出して、雑誌アプリを開きファッションの勉強に励む。
 本当はもっと根本的なところでNGをくらっているのかもしれないと気がついているけど、諦めるわけにはいかない。
 ここで諦めたら、生まれ変わってきた意味がなくなる。
 他にも、恋愛のテクニック本を読んでいると、いろいろなアドバイスを見かけた。

「お酒の力を借りて、カラダの関係を先に持つ……」

 そんなテクニックがあるのか――と、私は感心する。
 高橋美嘉時代は結婚していたくらいだから、修二と体の関係があった。お互いに初めて同士で緊張しながら結ばれたことを思い出す。
 新婚生活は、それはもう十代の性欲真っ盛りでラブラブだった。思い出すだけで恥ずかしくて照れてしまうほどだ。
 もう一度あんなふうになれたらいいなと思う。ところが、私は転生したので、当然のごとく処女にリセットされている。
 加えて、スタイルこそ以前よりもバージョンアップしたとはいえ、全く相手にされていない。今、彼を襲ったりなんかしたら痴女扱いされて嫌われそう。
 ――っていうか、二十三年もエッチしていないんだよ。やり方を忘れちゃったよ!
 それにまた初体験になるってことでしょ? 確か最初は痛かったはず……
 齋藤未華子としての学生時代、私は友達と恋愛やエッチな話になると興味がないと言って、それをスルーしていた。
 そんなふうに知識を更新していないせいで、もはやエッチがどんなものだったか思い出せないという危機的状況におちいっている。
 経験値ゼロで大丈夫なのだろうかと不安なものの、修二以外の人と経験を積むなんてできないし、するつもりも毛頭ないのだ。
 こうなったら、なんとしてでも彼に責任を取ってもらうしかない。

「豪速ストレートで行くしかない」

 体の関係から始めるとか、誘惑して相手をその気にさせるとか、そんな回りくどいことをしていたら、修二はどんどん年を重ねていってしまう。
 今よりもっと相手にされない可能性が高まるだけだ。早く気持ちを伝えてしまうほうがいい。

「よし!」

 気合を入れた私は、勢いよくサンドイッチを頬張った。


 その晩、烏山さんとの会食に同行した私は、食事が終わったあと、修二を送ろうと一緒にタクシーに乗り込んだ。

「齋藤さん、先に帰っていいと言っておいたのに……」
「いいえ。私は不破専務をご自宅にお送りしてから帰ります。ちゃんとご帰宅を見届けないと心配ですので」

 後部座席に並んで座る二人の間は、かなり空いている。もう少し密着してくれてもいいのに……なんて思うけど、そんなことしてくれないよね。

「おいおい。年寄り扱いしてないか? そこまで心配してもらわなくても、ちゃんと帰れるよ」
「年寄りだなんて。不破専務はミドルエイジの素敵な男性です」

 中年じゃなくて、ミドルエイジ。紳士的な色気がある、大人の男性――そんな意味を込めて答える。
 ――数々の女性があなたを狙っているから、誰かに奪われないか心配なの。
 だからちゃんと送り届ける。

「はは。ミドルエイジ……ね」

 修二は少し苦い顔で笑う。

「すみません、気を悪くされましたか?」
「ううん、そんなことはないよ。でもさ、もうそんな年になったんだなと、僕も年を取ったんだなーと思ってね」

 私と結婚生活をしていた時は十九歳だったけど、今彼は四十二歳。
 日本人男性の平均寿命が八十一歳と言われている現代、もう折り返し地点を過ぎているということだ。肉体的なところでは、若いとはがたい。

「齋藤さんは、確か二十三歳だったね。総務課だったのに、秘書課に異動願いを出してきたんだっけ。そのあふれんばかりのバイタリティを見習わないと」

 優しく穏やかなほほみを向けられ、胸がきゅんと反応する。
 彼の言う通り、私は黎創商事に入社した当初は総務課に配属されていた。
 でも、どうしても修二のそばにいたくて、会社帰りに英会話を習い、秘書検定を受けた。そして入社間もないくせに上司にお願いして昇格試験を受けさせてもらい、面接をクリアしてこの場所にたどり着いたのだ。
 ――血のにじむような努力をしてきたのは、全部あなたに会うためなんだよ。それが私の全て。

「ちょっと酔ったかな。変なことを言ってごめんね」
「いいえ」

 今の私があるのも、ここに存在しているのも、全部修二のため。
 だから――
 いろいろと考えている間に、彼は背もたれから体を起こして運転手に話しかけた。

「あ、ここの角を曲がったところにあるマンションです。齋藤さん、今日は遅くまでご苦労さま。気をつけて帰るんだよ」

 彼は自分の住むマンションの前でタクシーを停車させる。私はすぐさま会社支給のタクシーチケットを運転手に渡して、一緒に降りた。

「あれ……? どうしたの。君の家はこの辺じゃ……」

 彼はタクシーを見送る私に驚いている。そんな修二のほうに姿勢を正して向き直った。

「あの……不破専務、お話があります」
「どうしたの?」
「私と結婚していただけませんか?」
「……はっ!?」

 これが私の豪速ストレート。
 恋人なんてまどろっこしいことを今から始めていたら、時間がいくらあっても足りない。早く夫婦になって、前の結婚生活の続きがしたいのだ。
 そんな暴走した想いを何十年も抱えてきた。そして、相手の気持ちを考えずこんなことを言ってしまうほど、私はせっまってる。

「あのね、齋藤さん。おじさんをからかうものじゃないよ」

 ははは、と笑ってごまかそうとする彼をじっと見つめて返事を待った。そんな真顔の気迫に負けたようで、彼の笑みがすっと消える。

「冗談じゃありません。私、不破専務が好きです。結婚してください」
「どうしてそんなこと……。僕と君とじゃ何歳離れていると思っているんだ? ええと……十八か十九くらい開いているだろう? 釣り合わないよ」
「恋愛に年齢って関係あるんですか? 私が子どもだからダメなんですか?」

 ぐいぐい押し迫ると、修二は困惑した表情を浮かべて後ずさりする。

「そういうわけじゃないんだけど……恋人でもないのに、いきなり結婚って……。どうしたの、並々ならぬ理由でもあるの?」

 最近の若者の中では、二十代前半で結婚を決める人は少数派だと思う。
 女性でもキャリアを積んで仕事にやりがいを見つける幸せがあるし、一生結婚しない人だっている。
 それなのに、この若さで結婚をあせっている私には何か理由があるのではないか。そういう結論に、彼は行き着いたらしい。
 ――まぁ、あると言えば、あるんだけど。

「好きな人のお嫁さんになりたいと願うのは、おかしいことですか?」
「いや、そんなことはないけど……。わざわざこんな年上の僕を選ぶことはないって話だよ。大体、僕のことをどれだけ知っているの? 何も知らないでしょう?」

 その彼の一言に、私はムッとくる。
 ――知ってるよ、全部。
 パジャマは着ない主義だし、朝食は牛乳だけで済ませる。洗濯は好きだけど、取り込んで畳むのは苦手とか。それから、それから……
 挙げていけばキリがないくらい、修二のことを知っている。

「僕は若い時に学生結婚をして、妻を亡くしてる。その人のことをまだ愛しているし、この先、死ぬまで、他の女性とどうこうなろうというつもりはないんだ」

 ――修ちゃん……
 フラれているのに、熱烈な愛の言葉をもらって胸が熱くなる。
 ――そんなにも私のことを今でも愛してくれているの? もうっ、どれだけ愛されてるの、私!

「あの……齋藤さん? 聞いてる?」

 思わず顔がにやけてしまい、不審に思われたようだ。気がつけば、彼が眉間みけんしわを寄せて怪訝けげんな顔で見つめていた。

「失礼いたしました、聞いております」
「だからね、今回のことは聞かなかったことにするよ。僕らは仕事上の大切なパートナー同士だ。その関係を悪いものにしたくない」

 仕事に支障が出ないように、スマートに断る彼の態度は素敵だ。ますます修二が好きになる。
 ――他の女性に見向きもしないくらい、美嘉わたしのことをまだ想ってくれているんだよね?
 私たち……今でも両想い。
 だったら私も、もう手加減しない。

「聞かなかったことになんてしないでください。不破専務は私が何のために転生してきたと思ってるんですか?」
「え……?」

 何を言い出したのかとひるむ彼に詰め寄って、話を続ける。

「私は高橋美嘉よ。あなたの嫁だった美嘉。あの事故で死んでから、すぐに生まれ変わったの。やっと相手にしてもらえる年齢になったから、こうして会いに来たんだよ」
「何を……言って……?」

 完全に酔いのめている彼は、顔色を悪くし目を白黒させている。
 目の前の女性が知るはずのない妻の名前を言う、それどころか生まれ変わりだと主張までするから、混乱しているのだろう。

「生まれ変わりって……。映画や小説じゃあるまいし、そんなことあり得ないだろう」
「私だってそう思うけど、現実にこうして転生できた。美嘉の記憶が残ったまま、私は生き直してるの」
「悪い冗談を言うのは止めなさい」
「冗談じゃないもん。本当だし!」

 すんなりと信じてもらえるはずがないと分かっていたけれど、なかなか受け止めてもらえないことにあせる。
 ――どうすれば私が高橋美嘉だということを分かってもらえるの?
 押し問答が続くが、話は平行線。
 頭を悩ませていると、修二が質問を始めた。

「じゃあそこまで言うなら、美嘉の誕生日は言えるか?」
「五月二十五日の双子座のO型、その日は私たちの結婚記念日だよね」
「う……」

 すらすらと答えた私にたじろぎ、彼は言葉を失くす。
 もっと具体的に美嘉であったことを知らせるため、私は二人の思い出話を始めてみた。

「私たちは鳳凰ほうおう学院大学のウィンドサーフィンサークルで出会った。って言っても、名前だけのサークルで全然ウィンドサーフィンしてなかったけど」

 サークルの活動としては、集まったメンバーと飲み会をするのがほとんどで、ウィンドサーフィンはほとんどしていなかった。それはそれで何だか面白くて好きだったけれど……。そんな中、年に一度だけ、合宿と称して海の家に泊まりに行くイベントがあった。
 大学一年生の夏、修二やサークル仲間と一緒にそのイベントで海へ行ったのだ。その時に告白されて、それから付き合い始めた。

「ね? 美嘉でしょ。普通なら、こんなこと知らないはずだよ」
「確かに……そう、だけど」

 その後も、二人の新婚エピソードを話していると、修二の顔つきが変わってきた。きりっと締まっていた顔がゆるんで、今にも泣き出しそうになっている。

「……ど、どうしたの?」
「ごめん……。本当に……本当に、美嘉なのか……?」
「そうだよ、修ちゃん」

 彼が泣いているのを見て、私は彼の腕に手を添えた。

「美嘉……会いたかった……」
「私もだよ、修ちゃん」

 ずっとずっと言いたかった。私が美嘉だってことを知ってもらいたくて仕方なかった。
 そばにいられるようになるまで、どれだけの時間がかかったことか。気が遠くなりそうなほどの期間を経て、やっとこうして伝えることができた。
 ――涙を流してくれているってことは……信用してもらえたってことだよね? じゃあ、私を受け入れてくれる?

「修ちゃん、私――」
「いや、でも……。仮にそうだとしても、君は今、齋藤未華子さんだ。もう高橋美嘉じゃない。君は君の人生を歩まなきゃ、こんなおじさんになった俺と一緒にいるべきではない」
「…………え゛?」

 急展開に驚き、思わず濁点つきの「え」を放ってしまった。
 ――いやいや。元嫁があなたに会おうと転生してきたって言っているのに、ここで突き放す? そんな殺生せっしょうな!

「俺に会いに来てくれて本当に嬉しかったよ。美嘉ともう一度こうして会えただけで俺は――」
「無理! 結婚してくれないなんて、絶対無理!!」

 閑静かんせいな住宅街に似つかわしくない感情しの声を上げて、私は彼の話をぶった切る。

「そんなの絶対無理だから。私と結婚してくれないなんて、信じない」
「ええ……」
「修ちゃんに会うために何年かかったと思っているの? この日を夢見て過ごしてきたっていうのに、結婚してもらえないなんて……ああ、もう目が回りそう」

 頭に血がのぼってクラクラしてきた。
 齋藤未華子として、人生を歩むべきですって……?
 ――どうしてそうなるかな。ここは「もう一度一緒になろう」っていう感動的なシーンになるはずだったのに!

「……もし結婚してくれないのなら、私の初めてはどうでもいい他の男性にささげることにするし、そのあと、一生独りで生きて死ぬわ」
「お、おいおい……。そんな大げさな……」
「あなたに会いに転生してきたっていうのに、全く意味のない人生を送るなんて最低だよ。こんなの、私が浮かばれない。きっと成仏じょうぶつできずに、またたましいとしてこの辺りを一人でただようことになる……」

 私は頬に手を当てて悲しげな表情を浮かべ、悲壮感を全面的に押し出す。
 こんなところで引き下がれない。
 何のために今日まで頑張ってきたの。押すんだ、私!

「修ちゃんがこういう女の子が好きかと思って、この体にしてもらったのに……。この体で他の人と変なことしてもいいって言うの?」
「変なことって……何をする気だ」
「変なことって……その、いろいろよ、いろいろ!」

 具体的なことを口にするのは恥ずかしくてにごしたものの、大体伝わったみたい。
 齋藤未華子であるけれど、中身は高橋美嘉。
 元嫁が他の男とあれこれしているところを想像できたのか、修二のテンションは下がっていった。

「そういうことに……なるな」
「そんなの嫌だよ。私、修ちゃんと結婚して、もう一度結婚生活を送り直したいの。ただそれだけのために……私……」

 会社で一緒にいられるよう秘書になり仕事を共にしても、女性として意識してもらえない。
 直球で告白するも玉砕ぎょくさい
 美嘉だと打ち明けたあと、脅したり、泣き落としを始めたりと、完全に面倒くさい女だと思う……でも、なりふり構わずでもいいからあなたと一緒になりたい。
 ――こんなにも好きなの。
 齋藤未華子として二十三年間生きてきて、男性に好意を持ってもらうこともあった。それでも私の心が動くことはなかった。
 いつでも修二を想っていたし、修二に会うことだけを目標に頑張ってきた。
 離れていても会えなくても、ずっとあなたに恋をしている。
 ――不破修二じゃなきゃ、絶対に嫌なの。修ちゃんしか好きになれない。別の体になってしまったけれど、美嘉わたしのことをまだ想ってくれているのなら受け止めてほしい。
 肩を揺らして泣いている私のそばに寄り、修二はそっと肩に手を置いた。

「……分かった」
「え……?」
「ちょっと冷静になろう。今日は遅いし、もう帰りなさい。若い女性がこんな時間に外にいるのはよくない。ご両親も心配されるだろう」

 どうしてそうなる……?
 さすが鉄壁の男、不破修二。全然ぶれない。
 項垂うなだれそうになるのを我慢して、彼の顔を見つめる。

「じゃあ、修ちゃんちに泊めて」
「ダメだ。恋人でもない女性を泊めるわけにはいかない」
「私は美嘉よ。修ちゃんの嫁です」

 ああ言えばこう言うみたいなやり取りが繰り返されて、あきれた修二は私から離れて背を向けた。

「聞き分けの悪い子だな。君はそんなに呑み込みの悪い人だったのか」

 ――もしかして、怒ってる? 子どもみたいな真似をして、修二に迫ったりしたから、嫌われた?
 彼の表情が見えなくて、不安になってくる。

「……ワガママばかり言って、ごめんなさい。でも修ちゃんのそばにいたいの。だって、修ちゃんのことが好きだから」

 ――だから嫌わないで。私のこと、拒絶しないでほしい。
 修二の前に回り込んで顔を覗き込むと、いつもの彼からは想像できないくらい柔らかな表情を浮かべていた。

「修ちゃん……?」
「とにかく、即決できることじゃないだろう。少し時間をくれないか」
「お泊まりのこと?」
「違う。泊まりはダメだ、帰りなさい。そうじゃなくて、結婚のことだ」

 ――結婚について、考えてくれる?
 今の柔らかい表情を見ている限り、前向きに検討してくれるように受け取れる。

「分かった、待つ。いい返事待ってるね」

 私は背伸びして二十センチほど背の高い彼に抱きつき、そのくちびるにキスをした。

「……っ!」
「修ちゃん、大好き!」

 満面の笑みを浮かべ、気持ちを伝えた。
 四十二歳のダンディな男性が、キス一つで思いっきり照れているのを見て、私は新たな魅力を発見する。そしてますます修二を好きになるのだった。



   2


 あの頃、修二は大学の近くに下宿していて、美嘉であった私は、実家に住んでいた。
 授業が終わったあとはそれぞれバイトに行って、それが済んでから私が彼の家に遊びに行く。
 うちの門限は二十二時。
 私たちが一緒にいられる時間は少なくて、どれだけ一緒に過ごしても物足りなさを感じていた。週末はべったりと長い時間を共にしていたものの、まだまだ足りない。

「も……帰る時間、だから。ダメ……修ちゃん」
「分かってる」

 分かってると言いながら、修二は私の背後に回ってTシャツの中に手を忍ばせる。その手は奥へと進んでいった。

「ほんとに、ダメだってば。さっき、したばっかりでしょ……」
「美嘉のお尻見てたら、またしたくなった。もう一回」

 さっきまでベッドの上で愛し合っていたのに、もう一度したいと迫られる。うなじにキスをされて、柔らかなくちびるが何度も肌に吸いつき、甘い音を立てた。
 修二は一人暮らしだから時間を気にしなくていいけれど、私は実家暮らしだ。門限を守らないと心配性の父が鬼のように電話をかけてくる。
 ベッドの下に転がっているPHSのディスプレイの時刻を見て、修二の手を掴む。
 現在時刻は二十一時を過ぎたところ。このマンションから私の家まで三十分はかかる。早くここを出ないと間に合わなくなってしまう。

「お父さんに怒られるってば」
「大丈夫、すぐ終わらせる」
「そんなこと言って……すぐ終わらないくせに」

 ダメだと言いながらも、こうして修二に求められるのが嬉しい私は、彼の手を振り解かない。
 Tシャツをまくげられて胸をみしだかれ、ショーツだけだった下半身にも彼の手が伸びてきている。

「美嘉だって、もう一度したかっただろ? ほら、こんなにれてるし」
「ちが……っ、あぁ……、もう。さっきのが、まだ……」

 一回目の余韻でれているだけだと言いたいけれど、彼が触れるたびに奥からとめどなく蜜があふれ出して、水音が激しくなっていく。

「すぐれたい。美嘉の中、すごく気持ちいいからみつきになる」
「あ、っ……ん、んう……はぁ……っ」

 ぐちゅぐちゅと耳をふさぎたくなるような淫猥いんわいな音が部屋中に鳴り響く。
 このマンションの壁は厚くないから、隣の部屋に聞こえてしまうんじゃないかと心配になった。それでも激しくなるばかりの行為を止められない。

れていい?」

 吐息交じりの甘い声におねだりされて、私はこくんとしおらしくうなずく。
 このまま繋がったら、完全に門限に間に合わなくなる。分かっているはずなのに、修二につらぬかれる快感を知っている体は、欲求にあらがえない。

「美嘉、好きだよ」

 ベッドにうつ伏せになって、お尻を突き上げて彼を待つ。早急に準備を整えた彼は、とろとろになっている場所に屹立きつりつを宛てがった。

「……っ、は……。やば、二回目なのに、すごく興奮してる」

 修二が言う通り、一度出すと二回目は勃ちが悪くなるはずなのに、さっきと変わらず膨張したものは私の中をぐりぐりと強くこすげる。おなかの奥に圧迫感を覚え、体をビクビクと震わせて感じてしまった。

「後ろかられたから、奥まで当たる? ほら……ここ。一番奥だよな」
「あぅ……っ、そ、んなの……苦し……っ」

 最奥にぐりぐりとこすりつけられて苦しいはずなのに、きゅううっと中が締まる。

「締めつけすぎ。力抜いて」
「あん……っ」


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