137 / 252
第7章
第178話
しおりを挟む
俺と兄貴、そして姉であるパメラ姉さんと共に、親父を探して、王城内を駆けまわっていた。食堂のオバちゃんによると、先程までは、食堂で昼食をとっていた、との事だ。ならば、親父の事だから、演習場に向かって身体を動かすか、母さんたちの所に遊びにいったか。
そう思い、三人で演習場、母さんたちの所に向かうも、親父の姿どころか、匂いすらも残っていない。母さんたちも、親父の行方は知らないと言っているし、本当にどこに行ったのやら。
俺たちは、親父の匂いを辿り、最後にいたであろう場所にたどり着いた。匂いの濃さや、不自然に匂いが途切れている事から、この場所に間違いはないだろう。
「匂いも、ここで途切れている。本当に、父上は何処に行かれたのだろうか?」(アトル)
「まさかとは思うが、母さんたちに隠れて、女遊びにでも行ってるのかもな」(ザリス)
「いや、父上ならば、コソコソ隠れるよりも、むしろ堂々と母上たちに報告しないか?」(アトル)
「むしろ、母さんたちの方から、父さんの折檻を兼ねて、色々と情報を集めてから問い詰める姿が、目に浮かぶわね」(パメラ)
「「確かに」」(アトル・ザリス)
親父が床に座らされ、周囲を母さんたちが囲み、家族会議が開催されている様子が、容易に想像できる。それでも、家族の絆が壊れた事は、一度もない。そこら辺は、母さんたちが、上手い事やってきたのだろう。
軽い調子で、三人で話してみるものの、匂いの途切れ方や、目撃情報が全くない事から、異常事態としか考えられない。
現在、王族派の軍を動員して、親父の行方を、王都内・王都外問わずに捜索している。ここまで証拠も情報も残さない手口を考えると、反王族派と手を組んでいる、第三勢力・同盟者の者たちの仕業が濃厚だ。
匂いも途切れ、情報も全くない。今後の動きの方針も、これでは決める事が出来ない。三人で知恵を出し合って、今後の事を悩んでいると、数人の騎士に連れられて、一人の軍人が歩いてきた。
スーザン・ウィンフリー。シュターデル獣王国・魔術師団総長補佐。獣王国内において、極めて有能な女性魔術師。魔術師としての技術・知識は一級品であり、弱冠二十一歳にして、魔術師団総長に認められた、鬼才である。
「スーザンか。何か進展があったのか?」(アトル)
「申し上げます。我々、魔術師団の総力をあげて、魔術的な情報収集を行った結果、極めて希少な、時空間属性の魔力の痕跡を発見いたしました」(スーザン)
「「「時空間属性」」」(アトル・ザリス・パメラ)
「敵勢力に、極めて有能な魔術師の存在が確認されている事、途切れる様に消える匂い、目撃情報の圧倒的少なさ、これらの事を繋げると、敵勢力の魔術師は、異空間を生み出す事が、可能なレベルの腕を持つ存在だと思われます」(スーザン)
「なる程。確かに、異空間を生み出す事が出来るのなら、忽然と消えた事も、匂いが途切れた事も、説明がつくわね」(パメラ)
「さらに、もう一つ問題があります」(スーザン)
「教えてくれ」(ザリス)
「今現在、独断で、王都外での獣王様捜索に動く騎士団が一つ、軍の中隊が一つ、存在します」(スーザン)
スーザンの報告に、驚きを禁じ得ない。獣王不在時の、獣王国の代理統治者であり、命令権を持つ、兄貴の命令を無視しての行動だ。平時の命令ではなく、獣王がいない、という緊急時における命令だ。それを破るという事は、騎士・軍人個人や騎士団・軍全体に、厳罰どころか、騎士・軍人の身内や一族にまで、累が及ぶ行動だ。
「一体、どこの馬鹿どもだ?」(ザリス)
「第五騎士団、イーバル山岳方面軍・第二中隊の二つです」(スーザン)
「「「何だと⁉」」」(アトル・ザリス・パメラ)
どちらも、対魔物・魔獣戦闘、対人戦闘の経験が豊富な者たちが所属する、騎士団・部隊になる。特に第五騎士団は、少数精鋭の、選ばれた歴戦の騎士たちのみが、所属している騎士団。しかも、親父を支える、王族派の者たちであったはずだ。だとするならば、統治代理者であろうとも、兄貴の命令には従うはずだ。
だがそうではなく、その命令を破り、何かを目的にして動いた。
「………裏切りか?」(アトル)
「まだ分からん。だが、それも想定に入れておいた方がいいな」(ザリス)
「そうね。私たちも、早急に動かなければ、さらに後手に回されるわよ」(パメラ)
「そうだな。……父上が狙われた事から、俺たちも狙われる可能性が極めて高い。三人で纏まって行動するとしようか」(アトル)
「「了解」」(ザリス・パメラ)
その後の動きは迅速に行う。既に、敵は動いてしまっている。この段階でも、パメラ姉さんの言う様に、後手に回されている段階なのだ。こちらの対応が、遅れれば遅れる程、敵の動きがより速く、より大きくなっていく。
親父の状況は分からない。だが、あの親父の事だ。そう簡単にはくたばる事はないだろう。この事に関しては、報告した母さんたちも、同じ気持ちの様だ。親父が早々に負ける事があるのならば、それは、この獣王国に住む全ての戦士が、その相手とは勝負にならないという事だ。
母さんたちと協力して、王族派の者たちに、現状の様々な情報を伝え、共有していく。王家に忠誠を誓う、影の者たちを総動員し、王都の情報を収集していく。特に、反王族派の者たちを中心に、些細な情報すら見逃さずに、徹底的な監視を行わせている。
状況は刻一刻と変わっていく。王城の会議室に、次々と影の者が集まっていく。集まった者たちは、反王族派の者たちを、監視している者たちから、遣わされた様だ。その者たちの語る内容は、奇しくも、ほぼ同じ内容だった。
反王族派の貴族たちが、屋敷の警備を厳重にしている、と。
「どう思う?」(ザリス)
「王都で何かを起こす気なのだろう。それこそ、自分たちの命も、危なくなる様な。パメラ、案はあるか?」(アトル)
「王都の城門に、第一・二・四騎士団を向かわせるわ。それ以外の王族派の騎士団で、王城の巡回・警護。軍にも協力を要請して、王都内の巡回をしてももらう。そんな感じかしら?」(パメラ)
「私は異存はない。ザリスは?」(アトル)
「母さんたちはどうするんだ?」(ザリス)
俺の質問に、正室であり、兄貴の母親である、エスティ母さんが答える。親父と同じ獅子人族であり、親父と共に戦場を駆ける、歴戦の女傑だ。
「私たち王妃は、まだ幼い子供たちの守護に回ります。貴方たちならば、どのような事でも乗り越えられるでしょ?あの人と私たちの血と因子、そして、魂を受け継いだ子供たちなのだから」(エスティ)
エスティ母さんの言葉に、俺たちも真剣な表情で頷き返す。それを見て、エスティ母さんや他の母さんたちも微笑み、会議室から侍女たちを率いて去っていく。母さんたちが守護してくれるなら、妹たちの心配は無用と思ってもいいな。
そこからは、パメラ姉さんの案を元に、急速に獣王国が動き出していく。王都内が騒がしくなっていく事に、住民も何事かと、不安や警戒感が現れているとの報告も来ている。
そこに、新たな急報を告げる、影の者が現れた。
「至急、申し上げます。王都の城門に向けて、大量の魔物・魔獣が進行中。理性を失っている様で、魔除けの香にも、魔道具にも、一切に反応する事なく、真っ直ぐに城門に向けて、こちらに接近してきます」(影の者)
この報告から、長い間平和を保ってきた、獣王国の歴史が動き出した。後の歴史書の中で、未曾有の大事件として扱われる、内乱の始まりだった。
そう思い、三人で演習場、母さんたちの所に向かうも、親父の姿どころか、匂いすらも残っていない。母さんたちも、親父の行方は知らないと言っているし、本当にどこに行ったのやら。
俺たちは、親父の匂いを辿り、最後にいたであろう場所にたどり着いた。匂いの濃さや、不自然に匂いが途切れている事から、この場所に間違いはないだろう。
「匂いも、ここで途切れている。本当に、父上は何処に行かれたのだろうか?」(アトル)
「まさかとは思うが、母さんたちに隠れて、女遊びにでも行ってるのかもな」(ザリス)
「いや、父上ならば、コソコソ隠れるよりも、むしろ堂々と母上たちに報告しないか?」(アトル)
「むしろ、母さんたちの方から、父さんの折檻を兼ねて、色々と情報を集めてから問い詰める姿が、目に浮かぶわね」(パメラ)
「「確かに」」(アトル・ザリス)
親父が床に座らされ、周囲を母さんたちが囲み、家族会議が開催されている様子が、容易に想像できる。それでも、家族の絆が壊れた事は、一度もない。そこら辺は、母さんたちが、上手い事やってきたのだろう。
軽い調子で、三人で話してみるものの、匂いの途切れ方や、目撃情報が全くない事から、異常事態としか考えられない。
現在、王族派の軍を動員して、親父の行方を、王都内・王都外問わずに捜索している。ここまで証拠も情報も残さない手口を考えると、反王族派と手を組んでいる、第三勢力・同盟者の者たちの仕業が濃厚だ。
匂いも途切れ、情報も全くない。今後の動きの方針も、これでは決める事が出来ない。三人で知恵を出し合って、今後の事を悩んでいると、数人の騎士に連れられて、一人の軍人が歩いてきた。
スーザン・ウィンフリー。シュターデル獣王国・魔術師団総長補佐。獣王国内において、極めて有能な女性魔術師。魔術師としての技術・知識は一級品であり、弱冠二十一歳にして、魔術師団総長に認められた、鬼才である。
「スーザンか。何か進展があったのか?」(アトル)
「申し上げます。我々、魔術師団の総力をあげて、魔術的な情報収集を行った結果、極めて希少な、時空間属性の魔力の痕跡を発見いたしました」(スーザン)
「「「時空間属性」」」(アトル・ザリス・パメラ)
「敵勢力に、極めて有能な魔術師の存在が確認されている事、途切れる様に消える匂い、目撃情報の圧倒的少なさ、これらの事を繋げると、敵勢力の魔術師は、異空間を生み出す事が、可能なレベルの腕を持つ存在だと思われます」(スーザン)
「なる程。確かに、異空間を生み出す事が出来るのなら、忽然と消えた事も、匂いが途切れた事も、説明がつくわね」(パメラ)
「さらに、もう一つ問題があります」(スーザン)
「教えてくれ」(ザリス)
「今現在、独断で、王都外での獣王様捜索に動く騎士団が一つ、軍の中隊が一つ、存在します」(スーザン)
スーザンの報告に、驚きを禁じ得ない。獣王不在時の、獣王国の代理統治者であり、命令権を持つ、兄貴の命令を無視しての行動だ。平時の命令ではなく、獣王がいない、という緊急時における命令だ。それを破るという事は、騎士・軍人個人や騎士団・軍全体に、厳罰どころか、騎士・軍人の身内や一族にまで、累が及ぶ行動だ。
「一体、どこの馬鹿どもだ?」(ザリス)
「第五騎士団、イーバル山岳方面軍・第二中隊の二つです」(スーザン)
「「「何だと⁉」」」(アトル・ザリス・パメラ)
どちらも、対魔物・魔獣戦闘、対人戦闘の経験が豊富な者たちが所属する、騎士団・部隊になる。特に第五騎士団は、少数精鋭の、選ばれた歴戦の騎士たちのみが、所属している騎士団。しかも、親父を支える、王族派の者たちであったはずだ。だとするならば、統治代理者であろうとも、兄貴の命令には従うはずだ。
だがそうではなく、その命令を破り、何かを目的にして動いた。
「………裏切りか?」(アトル)
「まだ分からん。だが、それも想定に入れておいた方がいいな」(ザリス)
「そうね。私たちも、早急に動かなければ、さらに後手に回されるわよ」(パメラ)
「そうだな。……父上が狙われた事から、俺たちも狙われる可能性が極めて高い。三人で纏まって行動するとしようか」(アトル)
「「了解」」(ザリス・パメラ)
その後の動きは迅速に行う。既に、敵は動いてしまっている。この段階でも、パメラ姉さんの言う様に、後手に回されている段階なのだ。こちらの対応が、遅れれば遅れる程、敵の動きがより速く、より大きくなっていく。
親父の状況は分からない。だが、あの親父の事だ。そう簡単にはくたばる事はないだろう。この事に関しては、報告した母さんたちも、同じ気持ちの様だ。親父が早々に負ける事があるのならば、それは、この獣王国に住む全ての戦士が、その相手とは勝負にならないという事だ。
母さんたちと協力して、王族派の者たちに、現状の様々な情報を伝え、共有していく。王家に忠誠を誓う、影の者たちを総動員し、王都の情報を収集していく。特に、反王族派の者たちを中心に、些細な情報すら見逃さずに、徹底的な監視を行わせている。
状況は刻一刻と変わっていく。王城の会議室に、次々と影の者が集まっていく。集まった者たちは、反王族派の者たちを、監視している者たちから、遣わされた様だ。その者たちの語る内容は、奇しくも、ほぼ同じ内容だった。
反王族派の貴族たちが、屋敷の警備を厳重にしている、と。
「どう思う?」(ザリス)
「王都で何かを起こす気なのだろう。それこそ、自分たちの命も、危なくなる様な。パメラ、案はあるか?」(アトル)
「王都の城門に、第一・二・四騎士団を向かわせるわ。それ以外の王族派の騎士団で、王城の巡回・警護。軍にも協力を要請して、王都内の巡回をしてももらう。そんな感じかしら?」(パメラ)
「私は異存はない。ザリスは?」(アトル)
「母さんたちはどうするんだ?」(ザリス)
俺の質問に、正室であり、兄貴の母親である、エスティ母さんが答える。親父と同じ獅子人族であり、親父と共に戦場を駆ける、歴戦の女傑だ。
「私たち王妃は、まだ幼い子供たちの守護に回ります。貴方たちならば、どのような事でも乗り越えられるでしょ?あの人と私たちの血と因子、そして、魂を受け継いだ子供たちなのだから」(エスティ)
エスティ母さんの言葉に、俺たちも真剣な表情で頷き返す。それを見て、エスティ母さんや他の母さんたちも微笑み、会議室から侍女たちを率いて去っていく。母さんたちが守護してくれるなら、妹たちの心配は無用と思ってもいいな。
そこからは、パメラ姉さんの案を元に、急速に獣王国が動き出していく。王都内が騒がしくなっていく事に、住民も何事かと、不安や警戒感が現れているとの報告も来ている。
そこに、新たな急報を告げる、影の者が現れた。
「至急、申し上げます。王都の城門に向けて、大量の魔物・魔獣が進行中。理性を失っている様で、魔除けの香にも、魔道具にも、一切に反応する事なく、真っ直ぐに城門に向けて、こちらに接近してきます」(影の者)
この報告から、長い間平和を保ってきた、獣王国の歴史が動き出した。後の歴史書の中で、未曾有の大事件として扱われる、内乱の始まりだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
放逐された転生貴族は、自由にやらせてもらいます
長尾 隆生
ファンタジー
旧題:放逐された転生貴族は冒険者として生きることにしました
★第2回次世代ファンタジーカップ『痛快大逆転賞』受賞★
★現在4巻まで絶賛発売中!★
「穀潰しをこのまま養う気は無い。お前には家名も名乗らせるつもりはない。とっとと出て行け!」
苦労の末、突然死の果てに異世界の貴族家に転生した山崎翔亜は、そこでも危険な辺境へ幼くして送られてしまう。それから十年。久しぶりに会った兄に貴族家を放逐されたトーアだったが、十年間の命をかけた修行によって誰にも負けない最強の力を手に入れていた。
トーアは貴族家に自分から三行半を突きつけると憧れの冒険者になるためギルドへ向かう。しかしそこで待ち受けていたのはギルドに潜む暗殺者たちだった。かるく暗殺者を一蹴したトーアは、その裏事情を知り更に貴族社会への失望を覚えることになる。そんな彼の前に冒険者ギルド会員試験の前に出会った少女ニッカが現れ、成り行きで彼女の親友を助けに新しく発見されたというダンジョンに向かうことになったのだが――
俺に暗殺者なんて送っても意味ないよ?
※22/02/21 ファンタジーランキング1位 HOTランキング1位 ありがとうございます!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
お前は家から追放する?構いませんが、この家の全権力を持っているのは私ですよ?
水垣するめ
恋愛
「アリス、お前をこのアトキンソン伯爵家から追放する」
「はぁ?」
静かな食堂の間。
主人公アリス・アトキンソンの父アランはアリスに向かって突然追放すると告げた。
同じく席に座っている母や兄、そして妹も父に同意したように頷いている。
いきなり食堂に集められたかと思えば、思いも寄らない追放宣言にアリスは戸惑いよりも心底呆れた。
「はぁ、何を言っているんですか、この領地を経営しているのは私ですよ?」
「ああ、その経営も最近軌道に乗ってきたのでな、お前はもう用済みになったから追放する」
父のあまりに無茶苦茶な言い分にアリスは辟易する。
「いいでしょう。そんなに出ていって欲しいなら出ていってあげます」
アリスは家から一度出る決心をする。
それを聞いて両親や兄弟は大喜びした。
アリスはそれを哀れみの目で見ながら家を出る。
彼らがこれから地獄を見ることを知っていたからだ。
「大方、私が今まで稼いだお金や開発した資源を全て自分のものにしたかったんでしょうね。……でもそんなことがまかり通るわけないじゃないですか」
アリスはため息をつく。
「──だって、この家の全権力を持っているのは私なのに」
後悔したところでもう遅い。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。