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[Revenant/Fantome]
[01]第三話 白き騎士の娘
しおりを挟む白い化け物の遭遇から三日後。
ボードウィン城に傷ついた騎士たちが担ぎ込まれた。
動ける者は少なく、必ず誰かしら傷を負っている。
異常だと思われるのは、凍傷を負っている者が多いという事だ。
騎士たちが向かった先は雪の降らない地域だというのに、なぜこのようなことになっているのだろうと城の医師が首を傾げた。
だが、怪我人があまりにも多く、それを考えている暇はなかった。
処置に次ぐ処置で、城にいる侍女たちも手を貸していた。
イベリスも騎士たちの怪我の処置を手伝っている。
侍女に止められたが、手伝わずにはいられなかった。
怪我の処置を始めたイベリスをもはや侍女は止めることはせず、侍女自身も他の騎士の治療に専念した。
それほど人手が足りていなかった。
「他に怪我をしている方はいらっしゃいませんか?」
一人の騎士の処置を終え、イベリスは周囲を見回した。
見回して、目的の人物がいないことに顔を曇らせる。
これだけの騎士が撤退をしている中、ヘリンの姿が見つからない。
泣きそうになる。
「お父様……」
小さく、聞こえるか聞こえないかの声でイベリスは呟く。
だが、そう言っている暇もない。
目の前に、怪我を負った騎士が運ばれる。
傷口が未だに凍り付いていた。
「あの、お湯を」
イベリスは侍女にお湯を持ってくるように指示をする。
騎士の傷を見ると紫色に変色し、場所によっては水疱が点在している。
普通の人間ならその気持ち悪い傷を見て引くのだろうが、イベリスはまっすぐにその傷口を見つめた。
そして、そっとその白い手で凍っている傷口に触れた。
「い、イベリス様。な、何を」
「お湯がくるまで温めておくのです。放っておいたら酷くなってしまいます」
凍り付いた部分に触れている手がみるみる赤くなっていく。
「お、お止め下さい。イベリス様ほどの方がこのようなことをしなくても、私は大丈夫です。だから、手をお放し下さい」
騎士が申し訳なさそうに懇願する。
「大丈夫じゃありません。こんなにも酷い傷を負って。この国の為に戦ってくれているのです。私だってこのくらい、何でもありません」
イベリスの言葉に騎士は涙を流し感謝した。
気丈にふるまうイベリスであったが、心の底は不安で満ち溢れていた。
こんなに酷い傷を負わせる『モーヴェ』と戦って戻る騎士たちの中にまだヘリンは姿を見せないのだ。
最悪な事態ばかりが頭をよぎる。
無事でいて欲しい。
凍り付いた騎士の傷に触れている手が冷たいのか熱いのか分からなくなる。
願い、祈り、ありとあらゆる想いを巡らせる。
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