君なくて〜母の本の中はリアルな異世界で、三人の王子の覚醒聖女候補として先に転移していた従姉の身代わりにはなりたくない。

猫山みゅう

文字の大きさ
20 / 68
第三章 予想外な使命

7

しおりを挟む
7



「私も花嫁候補なの? ブリアナを浄化するためだけじゃないの?」

 私は、ホアンの言葉をはっきりと自覚してしまい、狼狽えてしまう。

「もえもブリアナと同じように、花嫁候補としての試練を受けて貰います」

「試練?」

「ええ。それでもまずは、ブリアナの浄化ですがね。彼女の精魂を確実に呼び寄せるためには、二人の王子と過ごすのが一番だと思います。頑張ってください」

「は? ホアンは何を言っているの? ブリアナを私自身が探すのでしょう? ならばそんな暇なんてないはずよ」

 次々と投げかけられるホアンの予想外な言葉に、私はうまく収集できずに混乱している。

 特に今の言葉は、私にとって対応できる範囲ではなかった。

 思わずシフィルとのファーストキスを思い出してしまう。

 ふっくらとした朱色の唇が疼き、頬をほんのりと染めてしまった。

「もえは、三人の王子の花嫁候補として、何か不満でもあるのですか? 自分の世界に好きな方がいらっしゃるとか?」

 ホアンは、激しく狼狽える私にきいてきた。

「いないけど。私は男の人と縁がない生活をしているの。ブリアナと違ってね」

 私は、ぶんぶんと首を振って、自分の中の不安を投げかけた。

「そうゆうことですか。確かにブリアナと比べると、幼げですよねえ」

「そうよ。だから、私には花嫁候補は無理な話よ」

 私は、自分をしげしげと観察してくるホアンに、目を吊り上げている。

「それは、まだもえが成長段階だからですよ。絶世の美女のブリアナとは違って華奢すぎますが、のびしろは十分にありますって」

 けなしているのか、褒めているのか。

 何だか複雑な心境を感じながら、小さく息を吐く。

「無理よ。ブリアナの浄化は手伝うけど、それはなしにして」

「駄目です。二人の王子はブリアナがいなくなり、少し寂しげな毎日を送っているのです。もえが慰めてあげてください」

「だから無理って」

「ブリアナは、二人の王子に傾倒していました。もえにそれを利用し、おびき寄せて欲しいのです」

 言い含めてくるホアンだが、私はぶんぶんと大きく首を振る。

「無理! 王子を誘惑するなんて経験ないし、私は絶対に無理!」

「大丈夫です。まずはブリアナとして会って貰います。記憶を真っ白になったということにしますから」

「は? 一体全体どういう意味なわけ?」

 ホアンの言葉が理解できず、苛立ち眉間に皺を寄せる。

「花嫁候補もそうですが、王子たちにも試練を受けて貰います。この時期は、滅多にない浄化に適していて、一刻でも大事ですからね」

「大事な時期に、わざわざ異世界から呼び寄せるの? 何か間違ってない?」

 顔を顰める私は、疑問に感じたので問うてみた。

「いえ。間違っていません。ラシラス王国の三つ子の王子が誕生することは、厳格な花嫁候補の選定時期。それを意味することは、とても複雑怪奇で様々な可能性を探らなければいけないのです」

「ふ、複雑怪奇?」

 真剣真顔のホアンに何だか気圧されながら、私は再度問い返した。

「三人の王子に一人の花嫁、なのですよ。その上、地上界という未発達な異世界から召喚しなければいけない。浄化をよりよく進めるためには、あらゆる歪みを見極めていかなければならないのですから」

「三人の王子に一人の花嫁?」

 私は、意味がわからず目をぱちくりさせ、ホアンの言葉を繰り返す。

「ええ、そうです。それでも地上界から呼び寄せた娘が、三人の王妃に必ずなるとも限りませんが。それゆえに、様々な試練が必要なのは確かなのです」

「そうなの。ならば私は王妃向きじゃないわね。ブリアナのように絶世の美女じゃないから」

「もえは、自分に自信がないのですか?」

 鋭いホアンの指摘に、私は視線を逸らした。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」

透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。 そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。 最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。 仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕! ---

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

処理中です...