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大公令嬢は様子を見ている
見られてしまった
しおりを挟む「お嬢様ー、起きてくださーい」
「すぴー.......すぴぴー.......」
「もう、お嬢様ったら.......」
今日は休日である。
ラヴェール学園に入ってから1ヶ月が経ち、その間私たちは勉強に励んでいた。
竜帝史と呼ばれる歴史から始まり、魔法学、語学、マナー学、護身術の基本教科と、貴族科特有の馬術、帝王学、環境学等の特別強化まで学ぶことは多く、課題も多い。
学生時代(前世)では不真面目で課題もサボり気味だったけど、前世が戻る前の完璧主義と皇太子の婚約者がそれじゃまずいだろうという世間体のため、いつもは寝る間も惜しんで頑張っているわけで。
最近、休める時には休むことにしている。
「お嬢ー、昨日殿下と約束してただろー。遅刻するぞー」
そういえば久しぶりに作戦会議する約束をした気がしなくもない。私は欠伸をひとつしてゆっくり起き上がった。
「.......ねむい」
「はい、よく起きましたねお嬢様。シュー、お嬢様の着替えをするから外に出てくれるかしら」
「へーい」
ガチャ。
「アンジェ、支度できたの.......か.......」
ノックなしにドアが開く。
シューがいつもこちらを振り向かずに出ていくからとボタンに手をかけていた手が止まる。やつの目は半開きになった寝間着の胸元部分を凝視していた。
私は枕に手をかける。
「お前.......前に比べて(胸が)けっこう控えめな感じに」
「出てけデリカシー無しのドスケベ皇子!!」
❁✿✾ ✾✿❁︎
湖の前に置かれているテラス席で、ぶすくれている私の前にはチーズタルトとピーチティーが置かれていた。
「.......これで許されるわけないと思わないんですか」
「いやアレは不可抗力で」
「ノックしてたら防げる事態を不可抗力って言わないですわよ?」
「……悪かった、悪かったしザッハトルテとモンブランも頼んでいいから許してくれ」
ふん、と鼻を鳴らし一口頬張る。あら、美味しい。少し機嫌がおさまり黙々と食べているとふと、視線を感じた。
「なーに?」
「いや、なんかデートしてるみたいでいいよなって」
嬉しそうな顔でそう言うユージーンの言葉には、応えない。
「……それで? 作戦会議で呼び出したんでしょう。何か近々イベントが起きるのかしら?」
「近々じゃない。今からだ」
「はい?」
その、直後だった。
「ご歓談中失礼致しますわ」
私たちの前に現れたのは、豊かな金髪を緩くまいたオッドアイ。
カンツォプランツのユノー・スカルナイト公爵令嬢だった。
瞬間、前世の砕けた喋り方を潜め、皇太子・大公令嬢モードに切替える。
「やぁ、スカルナイト嬢。どうかしたのかな?」
「御二方に大変申し訳ないのですが、アンジェリナ様とどうしてもお話したい御用がありますの。イリス王女も一緒で、今しか時間を取れないものですから」
ライバル令嬢らしいユノーとイリスが一緒に話? これがユージーンの言う、今から始まるイベントなのだろうか。
「ああ構わない。私とアンジェの時間はたっぷりあるからな。アンジェも構わないか?」
「え、ええ……」
ゆっくり立ち上がろうとして、ユージーンにこっそりと耳打ちされた。
「レインのことが話題に上がるだろうから、どっちかのヒロイン好感度上げてこい」
「なっ」
いきなりそんなのと言われても……!!というか、
(私のザッハトルテとモンブランは!?)
ギッと睨むもスルーされ、手を振るユージーンに、
(ふぁっきゅー!!!)
と、ユノーに見えないように中指を立て、彼女の後を追いかけた。
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