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大公令嬢は様子を見ている
釘を刺す(皇太子視点)
しおりを挟むsideユージーン
アンジェリナがユノーに連れられたのを確認したあと、近くの茂みに声をかけた。
「……いるんだろう。出てこい」
ガサリという音と共に現れたのは予想通りの人物。
「……」
「そこに座れ、レイン・ハイジョーカー。暫くはアンジェリナも帰ってこない……まあ、それは知ってるんだよなぁ?」
「いつから……気づいてたのよ」
いつものか弱い女の子という表情でなく、剣呑な顔で睨みつけるその姿に思わず鼻で笑った。
この女、やっぱり演技してやがったか。
俺はある飲み物をテーブルに置く。
「コレ作って、バレない訳が無いだろう」
「!」
今、帝国の市井で人気があるという飲み物。俺たち前世持ちには馴染みのある黒い粒、タピオカミルクティーだ。
とある芋を原料にしているが、この時代にあの芋から黒い粒を作ろうだなんて発想と技術を持っているのは前世持ちでなきゃありえないだろうし、俺はそもそもタピオカに興味はない。
だとして考えられるのは自身がタピオカが飲みたいかつ、自領を豊かにする手段を欲していたもの……すなわち、ヒロインである。
「コレが姿勢に出回ってからハイジョーカー家の収入が上がっているのは把握済みだ。ロールプレ大陸からあの芋と東洋茶葉を大量輸入しているのも」
「……そうです、私が開発しました。だって飲みたかったんだもの。……それで、何をお望みなんですか?」
空色の瞳が、じっと見つめる。
「お前が前世持ちだろうとなかろうとどうでもいいが、俺はアンジェリナ以外を皇后にする気は無い。側室も妾も要らない。意味は……分かるよな?」
俺たちを引き裂くような真似はしてくれるな。
にらみつけ
「ええ勿論貴方のルートは選びません……デビュタントで牽制されているのには気づいてましたし、元々あなたに興味はないので。でも」
「あ?」
「あの方が出ないルートを選べと言うなら、お約束はできかねます」
思わずぴくりと頬がひきつる。そんな俺を満足そうに見てヒロインは去っていった。
「……クソっ」
思わず舌打ちが出る。
釘を刺すつもりでいたがあの女はしぶとそうだ。
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