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「赤関…ちょっと飲み過ぎじゃないか?」
「うぅ~っ、だってぇ、今回せんぱいにめちゃくちゃ迷惑かけたからぁぁ…!」
「だははは!赤関くんそれ飲む理由になってないから!」
「石弐くんと赤関君、土日も出勤してあの資料作り直してたんだっけ?そりゃ相当疲れたでしょ~もっと飲みなよほら、石弐くんも!」
「わっ、ちょ、俺は大丈夫なんで…!」
ずい、と最部モブ先輩からジョッキを押し付けられて、冷や汗をかきながらそれを押し返す。
うちの部署の人たちは基本的にいい人なんだけど、飲み会の時は本当にダル絡みが酷くなる。
俺はそんなに飲める方じゃないから毎回なるべく早く切り上げるようにしてるのに、今日はプレゼン発表お疲れ様会なんてふざけた名目のせいで中々抜け出すことができない。
なおもジョッキを目の前に押し付けてくる先輩と格闘していると、さっきまで席の中心にいた赤関が先輩と俺の間に入るようにぐでーっと寄りかかってきた。
「ううぅ~~っ…せんぱぁい…」
「ちょ、赤関お前酔いすぎだろ…!」
「だはは、完全に出来上がってんじゃん!こんなベロンベロンになってても好かれるなんて、石弐はいい後輩を持ったねぇ…」
「赤関君っ、じゃあ君が飲みなさい!先輩からの酒を断れる部下は存在しないんだよ?!」
「ウ゛ぇ~飲みますぅ飲みますから…んごっごっご」
「~っ、あの、もう赤関連れて今日は帰ります!これ以上飲ませたらヤバそうなんで!!」
「お~、ちゃんと帰りは送ってやれよ~お前先輩なんだからな。」
「そうだよ、今時男でも一人は危ないからね!私達今日は朝まで飲んでるから!おつかれ!!」
「あー…はい。それじゃ、お疲れ様でした…」
会社の人たちの声に適当に相づちを打ちつつ、ぐらぐら前後に揺れている赤関の肩に腕を回して、酒の席から抜け出した。
今日は金曜日だからかこの時間でもまだ人通りは多くて、同じように酒にやられている社会人に囲まれながら俺たちはぼんやり駅に向かって歩いていた。
しかし、あともう少しで駅に着くというところで完全に赤関の体から力が抜けてしまって、全体重が俺に寄りかかってきた。重い、重すぎる…!流石に限界で、立ち止まって声をかける。
「…赤関、頼むからもう少し自分の力で歩いてくれ…」
「うぅ…お、俺、もう歩けない…」
「ああもうっ、じゃあタクシー代出してやるから、これで一人で…」
「せんぱい…」
「何…わっ!」
一旦赤関から腕を離して道路でタクシーを捕まえようとしたら、ばっと背後から抱きつかれた。
通行人からチラチラ視線を向けられて、恥ずかしさで顔が赤くなる。
「ちょ、やめてよ!赤関酔いすぎだって!」
「ううぅせんぱいと離れたくないよぉ…」
「わーっ、わかった、わかったから!一回離れて!」
例え酔っぱらい同士の奇行だと思われていても、他人に抱きつかれている様子を見られるなんてめちゃくちゃ恥ずかしい!
どうにか引き剥がそうとしても、赤関の方が体格が良いせいか、丸太みたいに太い腕は全然びくともしない。
回された腕は外れるどころか、シャツ越しにすりすりと胸のあたりを撫でてきて、びく、と体が震えた。
「うっ、ぁ…!ちょ、マジで離せよ!!」
「せんぱい、俺…まだせんぱいと一緒がいいぃ…」
「いや、今日はもういいだろっ…!また来週から嫌でも職場で顔見ることになるんだから、もう帰れって!」
「いやですっ!せんぱいが一緒にタクシー乗ってくれるまで帰りませんんん!」
「耳元で大きい声出すな…はぁ、お前こんなに酒癖悪かったのか…」
ちょうどタクシーが目の前に止まった。
もうどうあがいても俺から離れてくれそうになかったので、諦めて一緒にタクシーに乗って、赤関の家の前まで向かった。
運転手に自分の住所を伝えた後すぐに爆睡しはじめた赤関をタクシーから引きずり出すと、やけにピカピカした高層マンションが目の前にあった。
とてもじゃないが、社会人一年目が住めるような所では無い感じがする。
「…なぁ、お前、住所間違えてないか?本当にここに住んでんのか?」
「はい!ここ俺ん家です!」
「あ、そう…何でそんな急に元気になったの?」
「なんか、寝たらスッキリしました!」
「…良かったね。じゃ、無事に送り届けたってことで。俺帰るから。」
「…え?なんでですか?」
「何でって…帰る以外することないだろ。お前の家に泊まるって訳にもいかないし。」
「ええっ?!普通ここまで来たら俺ん家泊まる流れになるでしょ?!なんでそんなこと言うんですか?!」
「…な、なに言ってんだお前…」
急に元気になった赤関に強く両肩を掴まれる。
普通、会社の先輩が家に泊まるとかめちゃくちゃ嫌なことじゃないのか?赤関の言っている意味がわからなかった。
「お願いだから俺ん家泊まってってくださいよ!せんぱいをここまで来させた責任を俺に取らせてください!」
「いや、結局タクシー代はお前の財布から出たし、責任とか、ほんと良いから…」
「じゃあトイレ!トイレだけでも!俺ん家のトイレめっちゃ最新型なんです!見ていくだけでもしてってくださいよ!」
「…まだ酔ってるとはいえ、ちょっとキモいぞお前…。」
赤関の謎の圧に若干引いたが、実際のところさっきからトイレには行きたかった。
タクシーに乗ってる間ずっとムズムズしてたし、赤関と別れた後はすぐ公衆トイレを探そうと思っていたし。
正直これ以上酔ってる赤関に関わりたくはなかったが、汚い公衆トイレよりかは綺麗な方を使いたくて、借りるだけならいいかとうなずいてしまった。
やけにテンションの高い赤関に案内されるままに玄関前まで連れてこられ、家の中に通される。
中は広くて色味の統一された小綺麗なインテリアが並び、まるでモデルルームを見ているような、良い意味で生活感を感じない空間が広がっていた。
「は~…本当に良い家住んでるな。俺ん部屋とは大違いだよ。」
「じゃあ一緒に暮らしませんか?男二人位なら余裕で過ごせる広さはあると思います。」
「ははは…で、トイレの場所はどこだ?さっさと済ませて俺はもう帰る。」
「も~、焦んなくても良いのに…。そっち曲がったとこです。」
指示に従いガチャ、と扉を開けると、確かに最新型と思しき綺麗なトイレが鎮座していた。
ちら、と赤関の方を見ると、鼻歌を歌いながらスーツを脱ぎ捨て、私服に着替え始めている。
仮にも会社の先輩が家にいるって言うのに、あいつ、まだ相当酔ってるな…急にこの状況の異常さに冷や汗が出てきた。早くトイレ済ませて帰ろう。
扉を閉め、カチャカチャとベルトを外して息子を取り出したところで、かち、と頭の中で音がした。
「うぅ~っ、だってぇ、今回せんぱいにめちゃくちゃ迷惑かけたからぁぁ…!」
「だははは!赤関くんそれ飲む理由になってないから!」
「石弐くんと赤関君、土日も出勤してあの資料作り直してたんだっけ?そりゃ相当疲れたでしょ~もっと飲みなよほら、石弐くんも!」
「わっ、ちょ、俺は大丈夫なんで…!」
ずい、と最部モブ先輩からジョッキを押し付けられて、冷や汗をかきながらそれを押し返す。
うちの部署の人たちは基本的にいい人なんだけど、飲み会の時は本当にダル絡みが酷くなる。
俺はそんなに飲める方じゃないから毎回なるべく早く切り上げるようにしてるのに、今日はプレゼン発表お疲れ様会なんてふざけた名目のせいで中々抜け出すことができない。
なおもジョッキを目の前に押し付けてくる先輩と格闘していると、さっきまで席の中心にいた赤関が先輩と俺の間に入るようにぐでーっと寄りかかってきた。
「ううぅ~~っ…せんぱぁい…」
「ちょ、赤関お前酔いすぎだろ…!」
「だはは、完全に出来上がってんじゃん!こんなベロンベロンになってても好かれるなんて、石弐はいい後輩を持ったねぇ…」
「赤関君っ、じゃあ君が飲みなさい!先輩からの酒を断れる部下は存在しないんだよ?!」
「ウ゛ぇ~飲みますぅ飲みますから…んごっごっご」
「~っ、あの、もう赤関連れて今日は帰ります!これ以上飲ませたらヤバそうなんで!!」
「お~、ちゃんと帰りは送ってやれよ~お前先輩なんだからな。」
「そうだよ、今時男でも一人は危ないからね!私達今日は朝まで飲んでるから!おつかれ!!」
「あー…はい。それじゃ、お疲れ様でした…」
会社の人たちの声に適当に相づちを打ちつつ、ぐらぐら前後に揺れている赤関の肩に腕を回して、酒の席から抜け出した。
今日は金曜日だからかこの時間でもまだ人通りは多くて、同じように酒にやられている社会人に囲まれながら俺たちはぼんやり駅に向かって歩いていた。
しかし、あともう少しで駅に着くというところで完全に赤関の体から力が抜けてしまって、全体重が俺に寄りかかってきた。重い、重すぎる…!流石に限界で、立ち止まって声をかける。
「…赤関、頼むからもう少し自分の力で歩いてくれ…」
「うぅ…お、俺、もう歩けない…」
「ああもうっ、じゃあタクシー代出してやるから、これで一人で…」
「せんぱい…」
「何…わっ!」
一旦赤関から腕を離して道路でタクシーを捕まえようとしたら、ばっと背後から抱きつかれた。
通行人からチラチラ視線を向けられて、恥ずかしさで顔が赤くなる。
「ちょ、やめてよ!赤関酔いすぎだって!」
「ううぅせんぱいと離れたくないよぉ…」
「わーっ、わかった、わかったから!一回離れて!」
例え酔っぱらい同士の奇行だと思われていても、他人に抱きつかれている様子を見られるなんてめちゃくちゃ恥ずかしい!
どうにか引き剥がそうとしても、赤関の方が体格が良いせいか、丸太みたいに太い腕は全然びくともしない。
回された腕は外れるどころか、シャツ越しにすりすりと胸のあたりを撫でてきて、びく、と体が震えた。
「うっ、ぁ…!ちょ、マジで離せよ!!」
「せんぱい、俺…まだせんぱいと一緒がいいぃ…」
「いや、今日はもういいだろっ…!また来週から嫌でも職場で顔見ることになるんだから、もう帰れって!」
「いやですっ!せんぱいが一緒にタクシー乗ってくれるまで帰りませんんん!」
「耳元で大きい声出すな…はぁ、お前こんなに酒癖悪かったのか…」
ちょうどタクシーが目の前に止まった。
もうどうあがいても俺から離れてくれそうになかったので、諦めて一緒にタクシーに乗って、赤関の家の前まで向かった。
運転手に自分の住所を伝えた後すぐに爆睡しはじめた赤関をタクシーから引きずり出すと、やけにピカピカした高層マンションが目の前にあった。
とてもじゃないが、社会人一年目が住めるような所では無い感じがする。
「…なぁ、お前、住所間違えてないか?本当にここに住んでんのか?」
「はい!ここ俺ん家です!」
「あ、そう…何でそんな急に元気になったの?」
「なんか、寝たらスッキリしました!」
「…良かったね。じゃ、無事に送り届けたってことで。俺帰るから。」
「…え?なんでですか?」
「何でって…帰る以外することないだろ。お前の家に泊まるって訳にもいかないし。」
「ええっ?!普通ここまで来たら俺ん家泊まる流れになるでしょ?!なんでそんなこと言うんですか?!」
「…な、なに言ってんだお前…」
急に元気になった赤関に強く両肩を掴まれる。
普通、会社の先輩が家に泊まるとかめちゃくちゃ嫌なことじゃないのか?赤関の言っている意味がわからなかった。
「お願いだから俺ん家泊まってってくださいよ!せんぱいをここまで来させた責任を俺に取らせてください!」
「いや、結局タクシー代はお前の財布から出たし、責任とか、ほんと良いから…」
「じゃあトイレ!トイレだけでも!俺ん家のトイレめっちゃ最新型なんです!見ていくだけでもしてってくださいよ!」
「…まだ酔ってるとはいえ、ちょっとキモいぞお前…。」
赤関の謎の圧に若干引いたが、実際のところさっきからトイレには行きたかった。
タクシーに乗ってる間ずっとムズムズしてたし、赤関と別れた後はすぐ公衆トイレを探そうと思っていたし。
正直これ以上酔ってる赤関に関わりたくはなかったが、汚い公衆トイレよりかは綺麗な方を使いたくて、借りるだけならいいかとうなずいてしまった。
やけにテンションの高い赤関に案内されるままに玄関前まで連れてこられ、家の中に通される。
中は広くて色味の統一された小綺麗なインテリアが並び、まるでモデルルームを見ているような、良い意味で生活感を感じない空間が広がっていた。
「は~…本当に良い家住んでるな。俺ん部屋とは大違いだよ。」
「じゃあ一緒に暮らしませんか?男二人位なら余裕で過ごせる広さはあると思います。」
「ははは…で、トイレの場所はどこだ?さっさと済ませて俺はもう帰る。」
「も~、焦んなくても良いのに…。そっち曲がったとこです。」
指示に従いガチャ、と扉を開けると、確かに最新型と思しき綺麗なトイレが鎮座していた。
ちら、と赤関の方を見ると、鼻歌を歌いながらスーツを脱ぎ捨て、私服に着替え始めている。
仮にも会社の先輩が家にいるって言うのに、あいつ、まだ相当酔ってるな…急にこの状況の異常さに冷や汗が出てきた。早くトイレ済ませて帰ろう。
扉を閉め、カチャカチャとベルトを外して息子を取り出したところで、かち、と頭の中で音がした。
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