異世界対応型婚活システムーあえ~るー もふもふ!狼騎士と異界のサクラ編

七戸 光

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アッシュ・テイラー、ご褒美になる

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 サクラを抱きしめ続けた俺は、頬の痛みを伴ってサクラの家にたどり着く。
 恥ずかしすぎて臨界点に達したサクラにひっぱたかれたのだ。
 羞恥に頬を染めながらも怒る彼女は可愛すぎて、もう痛みの1つや2つ全く問題ないと開き直ってしまえるレベルだ。
 こんなことを言ったら怒られそうなので言わないが……。
 それにしても、自分に好意を持った相手に抱きしめられておきながら、そいつを家に連れてきてしまうあたり、サクラの危機意識のなさに俺が危機感を覚える。
 本当に俺だからよかったものの……変な男だったらどうするのか。
 やはり俺が守らなければ!
 自分も大概なことを棚に上げて、そんなことを考えてしまった。



 綺麗に整頓された部屋に通される。以前と同じ『エンガワ』のある部屋だ。
 サクラが大急ぎで窓を開けつつ、何かの機械を操作した。たちまち上から冷風が吹いてくる。外は熱かったので気持ちいい。
 以前に来たときは、狼姿のままだった。
 あの雨の日に、彼女が風呂でアレコレしてくれたことを思い出す。そわそわと落ち着かない。
 今回は、風呂には入らないだろうが、どれだけサクラに撫でてもらえるかが大切だ。
 期待と緊張で変な汗が出る。
 
「今家には誰もいないので、適当なところに座って待っててください。お茶入れてきますね」

 サクラはそう言い残して、廊下に出ていった。

「ああ……」

 俺はなんとか返事をし、ソファへ腰かけるが、頭の中はサクラの発言でいっぱいだ。
「今家に誰もいないので」
 その言葉が頭の中でぐるぐる渦巻く。
 そして言葉の意味を理解したところで、俺の心の目がカッと大きく見開かれた。
 家に誰もいないのに俺を家へ招いたのかっ!!
 しかも、自分のことを好きだと言っている男を!!
 さっきも抱きしめられたばかりだろう!!!
 先ほども同じようなことを考えたが、改めて2人きりの自宅に狼を招く彼女の無防備さに頭痛がする。
 考えてみれば、サクラの目的は狼化した俺を撫でることだから、人目はない方がいいのだろう。
 母上が犬アレルギーと言っていたし、仕方ないのかもしれない。
 だが、言わせてほしい!!
 無防備がすぎる!!!

 とりあえず、今から何が起きてもサクラを守れるように、理性を総動員する準備をする。
 心の中で呪文のように唱え続ける。
 サクラを襲わない。俺は可愛い犬。狼違う。俺は我慢できる子だ。
 サクラの嫌がることは絶対しない。

「食べない。食べない。俺は絶対」
「何を食べないんですか?」

「うわっ!?」

 突然背後から声がした。
 驚いて後ろを振り返る。お盆にグラスと茶菓子を乗せたサクラが、小首をかしげている。

「い、いや、何でもない」

「そうですか? それならいいですけど。好き嫌いがあったら言ってくださいね」

 そう言ってサクラはテーブルにグラスと茶菓子を置いた。
 優しく気遣ってくれるサクラにきゅんとする。

「ああ、ありがとう」



 お茶を飲んで暫く。
 待ちきれなくなったのだろうサクラが、上目遣いで隣に座る俺を見る。もじもじと恥じらいながら、それでいて期待をはらんだ瞳で見つめられる。

「あの、そろそろいいですか?」

 蒸気した頬とうるんだ瞳が俺を誘惑する。
 ただ、獣化した姿でサクラに撫でられるだけなのに、変な期待をしてしまう。
 先ほど払ったばかりの邪念が、頭をもたげそうになるのを感じて、慌てて獣化した。

「これでいいか?」

 サクラを見ると、彼女はキラキラと目を輝かせて、何度も何度も首を縦に振っている。

「サクラの好きにしてくれ」

 そう言って俺はサクラの膝に飛び乗る。

「~っ!!」

 この日のために磨いてきた、もふもふの毛触り。
 そっと一撫でしたサクラが、感極まった様子で破顔した。
 耳の下や背中に手を這わせ、感触を確かめる様に撫でられる。
 あぁ、気持ちいい。
 思わず、うっとりと目を閉じた。



 そこからは全てが至福の時間。
 全てを晒して、身も心もサクラに服従しまくった。

「アッシュさん、ここが気持ちいいの? 可愛い!」

「くぅ~ん」

 お腹を出したまま、サクラの声と妙技に身をゆだねる。
 サクラの誤解を招きそうな発言を聞きながら、尻尾がぶんぶん振れているのを感じる。

「肉球も触っていいですか?」

 サクラの期待した目を見ると、嫌とは言えない。
 むしろ、自慢の肉球なのでぜひどうぞ、といった気分だ。
 この日のために、しっかり保湿してふにふにの感触を維持したのだから。

「かまわない。好きに触ってくれ」

 触ってほしいなど、とてもじゃないが言えない。
 期待が悟られない様に、表情が緩まない様に返事する。

「それでは、お言葉に甘えて! うわ~! 可愛いピンク色!」

 サクラが俺を抱き上げ、前足の肉球に触れる。
 指でふにゅりとつぶされた肉球は、弾力がありつつ、くせになる触り心地になっているはずだ。
 サクラも一度触れてから夢中でふにふにしている。

「くぅ~! 可愛い!!! あ、あの匂ってもいいですか!?」

「ん!? に、匂うのか?」

「……ダメですか?」

 眉を下げ悲し気な表情のサクラに、うっと息が吸えなくなった。
 サクラが喜ぶなら……どうせ肉球クリーム塗っているから、そんなに臭くはないだろう。
 そう自分を言い聞かせた俺は、覚悟を決めた。

「えいっ」

「ふわっ」

 サクラの鼻に両方の前足の肉球を押し付ける。
 驚いた声を上げた彼女だったが、状況を理解すると、俺をギュッと抱きしめて、肉球を嗅いだ。

「ふぁ~お日様の匂いがする……」

 肉球をとろんとした恍惚の表情で見つめるサクラに、思わず俺の顔が赤くなる。
 お日様の匂いって何だろう?
 とにかくサクラが喜んでくれるならそれでいい。
 俺は嬉しそうなサクラに肉球を差し出し続けた。
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